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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター21
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君と出会えたことに

「……あれ? 小室さんは?」


 リビングに戻ると、ソファに座っていたのは紫藤さんだけだった。


「アリスなら、お前に会いに行くって、上の階に行ったぞ」


「え? 上の階って……俺の部屋?」


 紫藤さんは大きく伸びをしながらコクリと頷いた。


「……で、どうだったんだよ。アイツとは仲直り出来たのか?」


「あ、うん。古谷さんもデパート、行ってくれるって」


「そうか。ったく……なんだよ。お前、モテモテじゃねーか」


「なっ……紫藤さん、何言って……」


 ニシシと歯をむきだして、嬉しそうに紫藤さんは笑っている。


「……もっとも、人間じゃなくてゾンビに、だけどな」


「……違うよ。紫藤さん。俺は、三人のこと、ゾンビだなんて思ってないよ」


 俺がそう言うとキョトンとした顔で紫藤さんは俺を見た。そして、小さくため息をついた。


「そう言って貰えるのは、ありがたいけどな……お前、ホントに無理してないか?」


「え? 無理って?」


「その……俺が勝手にこの家にやってきちゃって……面倒なことになったんじゃないかな、って……」


 少し気まずそうな顔で紫藤さんはそう言う。


「紫藤さん、そんなことないよ」


 俺の口からは自然とそんな言葉が出てきた。紫藤さんは目を丸くして俺を見ている。


「紫藤さんと出会ったことを、嬉しいと思ったことは会っても、後悔なんてしたことない。それに……また一人、一緒にいられる人数が増えて、俺は嬉しいよ」


 そう言うと紫藤さんはまた呆れたようにため息をついた。俺は、また何か変なことを言っているだろうか?


「……まぁ、いいぜ。さっさとアリスの所に行ってやりなよ。アイツ、何かお前に話したいことがあったみたいだぜ?」


「あ、うん」


 俺はそのままリビングから出ていこうとした。


「あ……おい、赤井」


 と紫藤さんが俺のことを呼ぶ声が聞こえて来た。思わず振り返る。


「え……紫藤さん?」


「あ……いや、その……ありがとう」


 紫藤さんは俺から視線を反らし、小さな声でそういった。俺は、どうしたらいいかわらかずただ呆然と紫藤さんのことを見ていた。


「あ……うん。どういたしまして……」


 ただ、反射的に俺はそう返事した。


「……ほら。さっさと行けよ」


 紫藤さんにそう言われ、今度こそ俺はリビングを後にした。

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