表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター21
114/204

古谷さんは怒り気味 3

 とりあえず、古谷さんが一応落ち着いた後、俺は寝室の電気をつけた。


 古谷さんはベッドに座って下を向いている。俺はなんだか手持ち無沙汰で、しきりに部屋の中を見回していた。


「あー……えっと。じゃあ、古谷さんもデパートに戻るっていうの、賛成ってことでいいのかな?」


 俺がそう言うと古谷さんはキョトンとして俺を見る。そして、小さくため息をついた。


「ええ。賛成です。行かないわけ、ないじゃないですか。赤井君、小室さん、で、後あの……よくわからない人。三人だけで行かせるなんて不安すぎます」


「あ、あはは……良かったよ。古谷さんが行かないなんて言い出したら俺、どうしようかと……」


 俺がそう言うと古谷さんはチラリと俺のことを見る。目が遭った俺は思わずどうすることもできず、ジッと古谷さんのことを見た。


「え……何?」


「……赤井君。私のことは……もういいです」


「え? ど、どういうこと?」


「私は……大分落ち着きました。赤井君のことをもう一度信用してみようって気持ちになったし、一緒にデパートに行こうって思えるようになりました」


 そして、古谷さんは俺に対してニッコリと微笑んだ。


 その笑顔は、今まで俺がみた古谷さんの笑顔の中でもとびきり優しさに満ちていて、思わず俺は驚いてしまった。


「だから……小室さんと話してあげてください」


「え……小室さん?」


 俺が訊ね返すと、古谷さんは小さく頷いた。


「はい。小室さんは、ずっと赤井君のことを信じていました。そして、私以上に、赤井君と再会することを心待ちにしていたんです。でも、私のせいで、小室さんは思いっきり喜べなかった……だから、小室さんとちゃんとお話してあげてほしいんです」


 古谷さんの目は真剣だった。俺は言われてからようやく、この家に帰ってから小室さんとキチンと話していないことに気付いた。


「……わかった。ありがとう」


「……ホント、変わってないですね。赤井君」


 嬉しそうにそういう古谷さん。その言葉で俺は少し戸惑ってしまった。


「変わってないって……え?」


「ふふっ。いいんですよ。変わらない赤井君が、私は一番好きですから」


 古谷さんはそう言ってから立ち上がると、そのまま俺の方に近づいてきた。


「ほら、さっさと出て行ってください」


「あ……うん。じゃあ、またね」


 古谷さんに促されるままに、俺は寝室を出て行った。ドアを開け、部屋に出てから俺は先ほどの古谷さんの言葉を思い出す。


「あれ……古谷さん、俺のこと、好きって……え? えぇ!?」


 言われてから俺は、とんでもないことを告白されたことを思い出した。


「……いやいや。そういう意味じゃないだろ。うん。きっとそうだ……よし。とにかく、小室さんと話そう」


 俺はそう自分に言い聞かせながら、リビングへと戻っていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ