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僕とゾンビじゃない彼女  作者: 松戸京
チャプター1
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理性とゾンビ 4

 ここ三週間。テレビ以外で言葉を話す人間と俺は会ったことがなかった。


 双眼鏡で覗いて見えるのは「うー」とか「あー」しか言わないゾンビと、それに食べられる人々……


 しかし、まさかこんな所で、俺はついに、人語を解する女の子と出会うことができたのだ。


 ……もっとも、その女の子もまたゾンビなのだが。


「そ、そうか……あー……じゃあ、ウチ来る?」


 俺がそういうと女の子ゾンビは不思議そうな顔をする。


 俺自身も、言ってしまってから少し後悔した。


 いくら言葉が喋れるからといって、ゾンビに対してウチ来るって……俺は一体どういうつもりで言っているんだ?


 久しぶりに人間の言葉を理解する存在に会えたからって少しはしゃぎすぎだ……


「いき、たい」


「え? あ……そ、そっか。じゃあ、行こうか」


 なんだかよくわからないことになったが、とりあえず、俺はコンビニの裏口に向かうことにした。


 コンビニの事務所らしき場所を通り、そのまま行くと、確かに裏口らしき扉が存在していた。


 そして、その扉を小さく開けてみる。


「……ゾンビは、いないな」


 どうやら、コンビニの周りにゾンビはいないようだった。これなら走れば突破できるだろう。


「おい、ゾンビちゃん。ゾンビちゃん?」


 振り返ってみたが女の子ゾンビはいなかった。


 てっきりついてきているかと思ったのだが……


「ま、て」


 と、しばらくしてから女の子ゾンビが姿を現した。


 そして、俺はどうして女の子ゾンビがようやく姿を現したのかわかった。


「あー……もしかして、走れない?」


 俺がそう尋ねると、女の子ゾンビは恥ずかしそうに頷いた。


 なるほど。どうやら、女の子ゾンビは走れないタイプのゾンビのようだった。


 ゾンビ観察をしていても、確かに今までは走るゾンビには遭遇したことはないから、それは考えてみれば、普通のことである。


 人語を理解するまでのゾンビとなると高速で走れてもおかしくないと思っていた。しかし、そこらへんは普通のゾンビと一緒らしい。


「しかし、困ったな……」


 こうなってしまうと、俺の計画は見事に崩壊した。


 走れないゾンビと一緒では、仮にゾンビに遭遇した場合全力で逃げ切れない。


 そうなると女の子ゾンビは間違いなく俺の足手まといになる。


 無論、ここで女の子ゾンビを置き去りにしてしまえば問題は解決するのだが……俺としては、久しぶりに出会った話し相手を置き去りにするというのはちょっと考えられなかった。


「……よし」


 俺は一つの賭けをする決心をしてみた。

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