裏切りの代償 4
「……えっと、古谷さん。俺としては……心配なことが1つだけあるんだけど」
「なんですか? まさかゾンビになりたくないって云うんじゃないでしょうね?」
古谷さんは鋭く俺を睨んでそう言う。
「あ、いや。そういうわけじゃないんだけど……」
「え……ゾンビになっても、いいんですか?」
と、なぜか古谷さんは驚いた様子で俺のことを見た。
むしろその反応に困ってしまうのは俺の方である。
「え……ゾンビになれって言ったのは、古谷さんじゃないか」
「そ、それはそうですけど……いいんですか? 人間じゃなくなっちゃうんですよ?」
「うーん……いや、俺が問題に思っているのはさ、古谷さんや小室さん、紫藤さんみたいになれるのかってことなんだよね」
俺がそう言うと三人とも俺のことを不思議そうに見た。
「それ、どういう、いみ?」
「えっと……なんというか、三人のことを認識できなくなっちゃうような状態になるのはちょっと困るなぁ、って」
俺がそう言うと三人共黙ってしまった。そして、暫くの間沈黙がその場を支配していた。
「……じゃあ、なんですか。私達と同じような感じになっても、いいってわけですか」
古谷さんが暗い調子でそう言った。
俺は古谷さんのことを見てから、しばらくして思わず微笑んでしまった。
「なんていうか……俺の中でも古谷さんや小室さんの気持ちを完全にわかってあげていられなかった部分もあるし……もし、それで二人の気持ちを理解できるようになるなら、俺はむしろ、なりたい……かな?」
そう言うと古谷さんは目を丸くして俺を充た後、大きくため息をついた。
「……わかりました。私がやります」
「え……何を?」
すると、古谷さんはいきなり俺の肩を掴んできた。
そして、そのまま大きく口を開け、俺の首筋に噛み付いてきたのだった。




