裏切りの代償 2
しばらく頭をあげるまで、誰の声も聞こえてこなかった。
俺はそのままゆっくりと顔を上げる。
「……謝っている、というわけですか」
最初に目があった古谷さんが俺にそう訊いてきた。
「あ……うん。ホント、ごめん……」
俺は反射的にそう云う。隣にいる小室さんのことを見る。
小室さんも、無機質な瞳で俺のことを見ている。
小室さんにも、何か言ってほしい……
それが俺の正直な気持ちだった。
「わかりました。いいでしょう」
しかし、小室さんは黙ったままで、代わりに古谷さんが口を開いた。
「ですが、赤井君には罰を受けてもらいます」
「……え? 罰?」
いきなり言われたその言葉に、俺は戸惑ってしまった。
罰……古谷さんがそんなことを言ってくるとは思ってもみなかったからである。
「ええ。罰です。赤井君は今私達に謝った。謝った人のことを許しあげないほど私と小室さんは器の小さい人間ではありません。ですが、謝ってそれで終わり、ってのは納得いきませんからね」
「だから、罰を与えるってこと?」
「ええ。そうです」
古谷さんはなぜか少し意地悪そうに口元を歪めた。俺は少し嫌な予感がした。
「えっと……その罰ってのは具体的に何をすればいいのかな?」
「簡単な事です。赤井君には……ゾンビになってもらうんです」
そして、やはり俺の嫌な予感は的中するのだった。




