裏切りの代償 1
とりあえず俺は小室さんと古谷さんのいるであろうリビングに戻ることにした。
階段をゆっくり下りながら、リビングに電気が付いていることを確認する。
「……よし。行くぞ」
「あう」
と、後ろから紫藤さんの声が聞こえて来た。
「あ……紫藤さん。えっと……ついてきてくれるの?」
「あう。うあー……あう」
なんとなくだが、「当たり前だ」と言っている気がした。
「あ、あはは……ありがとう。じゃあ、行こう」
俺と紫藤さんはそのまま階段を降りて、リビングへと入った。
リビングでは、テーブルに向けた椅子の上に、小室さんと古谷さんが並んで座っていた。
俺達の気配を感じると、二人共同時にこちらを見た。
「……なんですか。赤井君。何か用ですか」
まったく愛想のかけらも感じさせない調子で、古谷さんがそう言った。小室さんは死んだ魚の眼で俺を見ているだけである。
「あ……えっと……その、もう一度だけ、話をさせてくれないかな?」
俺がそういうと古谷さんは目を細めて俺を睨む。
「話? 何の話ですか? まさか、この期に及んで私達にまだ何か言い訳でも?」
「い、言い訳ってわけじゃ……ダメかな?」
俺がそういうと古谷さんはわざとらしく大きくため息をついた。
「いいでしょう。さぁ、座ってください。えっと、そっちのアナタも」
「あう」
古谷さんにそう言われて、俺と紫藤さんも並んで座る。
四人がテーブルを挟んで向い合って座る形となったのである。
しばらくの間、誰も喋らなかった。気まずい沈黙だけが、リビングを支配する。
……さすがにこのままではまずい。俺がどうにかしないといけない。
「あ、あのさ!」
俺は唐突にそう言った。小室さんも古谷さんも、隣にいた紫藤さんも、俺の方に顔を向ける。
「……なんですか? 赤井君」
古谷さんの冷たい声。俺は物怖じせず、そのまま先を続ける。
「……ホント、ごめん!」
そのまま立ち上がって、俺は頭を下げた。




