再会 3
「あ……小室さん」
俺は間抜けにもう一度そう呟いて、ゆっくりと小室さんの方に近づいていった。
小室さんはジッと俺の方を見ている。
なんだか怒っているようにも見えるし……いつもと通りにも見える。
「えっと……ごめんね。なんか、二人に大変な思いさせちゃったみたいで……」
俺がそういうと小室さんはなぜか俺から少し目を反らす。
そして、なぜかゆっくりと手をあげた。
「え……どうしたの?」
「動かない、で」
言われるまま、俺はその場で立っていた。
すると、小室さんはゆっくりと其の手のひらで俺の頬を叩いた。
痛くはない。それはそうだ。小室さんのビンタとも言えないその動作はあまりにもゆっくりとしていたからだ。
でも、驚きだった。
あの小室さんに叩かれたのだ。痛い痛くないかは関係ない。
「……え? な、なんで?」
「さい、てい」
見ると、小室さんは相変らずの無表情だった。
しかし、その目には涙が溜まっていた。
そして、そのままゆっくりとした動作で、小室さんは俺に背中を向けて部屋を出て行ってしまった。
言われたのだ。確かに「最低」と。
「……赤井君。わかっていると思いますけど、とりあえず、さっさとこの部屋から出て行ってくれませんか?」
古谷さんはため息混じりに、そっけなくそう言った。
俺はどうしたらいいかわからなかったが、とりあえず、そのまま階段を上がって部屋に行くことにした。




