再会 1
「……ただいま」
玄関の扉を開け、俺は誰もいないはずの家の中に向かって、そう呼びかけた。
無論、返事はない。
「あう?」
紫藤さんが後ろから覗きこんでくる。
「……大丈夫……だと思う」
鍵は開いていた。おそらく、宮本さんと一緒に外に飛び出す時煮かけ忘れたんだろう。
基本的にゾンビは扉を開けることはできない。
しかし、もしかすると、ということもあり得る。
ゾンビが家の中にいる可能性を考慮して、俺は玄関のバットを手にとった。
「……とりあえず、リビング、行こうか」
俺はゆっくりと靴を脱ぎ、そのまま家の中に入った。
久しぶりに帰宅だというのに全く安心できないのは今の状況のせいなのだろう。俺はそのまま警戒心を緩めずに家の中にを探索する。
そして、リビングを覗きこむ。
「あ」
と、思わず声を漏らしてしまった。
リビングに人影があったのだ。
「あう?」
「紫藤さん、ちょっと待って」
俺は小声でそう言った。紫藤さんは小さく頷く。
見ると、リビングの奥、台所で何かしらがうごめいている。
俺は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
ゾンビ……とは断定できない。この状況だ。もしかすると、家の中に泥棒が入ったのも知れない。
「……よし」
俺は覚悟を決めて、そのまま台所へ進んだ。武器は持っている。相手がゾンビでも、人間でもこちらが一応は有利である。
俺はうごめいている人影にゆっくりと近づいていった。バットを握りしめ、そのまま声をかける。
「……おい」
「はい?」
と、人影は振り返った。
「……へ?」
思わず拍子抜けしてしまった。
相手も驚いた顔で俺を見ている。
「……赤井君」
「古谷さん……え? 古谷さん!?」
そこに立っていたのは、古谷クレアその人だったのである。




