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vol.22

転がった涙に自分でも驚くくらい焦る。


や、やばい泣かせちまった

告白したのは失敗だったか?


焦りともつかない感情が胸の中を揺さぶるけれど

今はそれどころじゃない。

泣いてしまった彼女をどうにかしなくては。


俺をみたままポロポロ涙をこぼす彼女にそっと近寄る。



「泣かないで、真澄ちゃんに泣かれるとどうしていいのかわからない」



あー、これで最後かもしれない・・・

そう思いながらその身体をそっと抱き寄せた。

胸に顔を埋めてくる、その仕草に嫌われてないのか?とは思うものの

そうすると涙の理由がわからない。


嫌われてなくても恋愛対象外だったってことかな

仕方ないよな、年もそこそこ離れてるし・・・

自虐的に自分を慰める。そんな俺の耳に飛び込んできた彼女の言葉。



「・・・・・私も」


「え?」


「私も仁さんが、好き・・・です」



瞬間、頭が真っ白になった。


今彼女はなんて言った?

好き?誰を?彼女が俺を?


聞き間違えじゃないか、確かめたくて発した言葉は柄にもなく震えていて

小さく抗議された言葉に胸を突かれ、

俺はわき上がってくる感情のまま、強く彼女を抱きしめていた。











時間の感覚も失せたまま、彼女を抱きしめ続けている。

大人しく腕の中にいる彼女が少し身じろぎしたのをきっかけに、軽く腕を緩めた。

見下ろした彼女も涙はすっかり乾いていて

泣いたせいか少し目が赤くなっている。

そんな顔もかわいくて、つい今の自分の望みを口にしてしまう。

すると彼女は少し逡巡した後、その瞳を閉じることで無言の了承をくれた。


触れるだけの口づけに気持ちが高ぶっていく。


大事にしたい、そう思う気持ちと裏腹に壊してしまいたい衝動に駆られる。


ダメだ、ダメだ

そんなことをしたら彼女を怖がらせてしまう。


必死で自分の中の感情と折り合いをつけ、唇を離す。

ゆっくりと開かれた目を見つめ、俺は言いたかった言葉を音に変えた。











「コーヒー入れるからその間に顔洗ってくる?」



まだ抱きしめていたい気持ちを抑え、彼女を解放する。

俺は気にしないけれど、彼女は顔を洗いたいかもしれない。

そう思って、聞いてみると是との答え。


洗面所に案内して、タオルを手渡すとキッチンに戻り

コーヒーメーカーのスイッチを入れた。


ポコポコと音をたてて落ちるコーヒーを見るともなしに見ながら

起きてからの一連の行動をもう一度頭の中で反芻。


寝ぼけて押し倒したのはまずかった・・・

でも結果としてアレがあったから上手くいったのか?

いやいや、でも彼女が受け入れてくれたから良かったものの

もしそうじゃなければただの痴漢?変態か!?

それは良くないだろう!?

泣いたのだってびっくりしたからだろうなぁ・・・

駿河さんに知られたら殴られそうだ。


そんな事が頭に浮かび、思わず苦笑する。

でも久しぶりの幸せに心の中はポカポカしていた。


ふと気がつけば、コーヒーは落ちきっている。

でも彼女は戻ってこない。何かあったかな?

スツールから立ち上がると、様子を見に洗面所へ足を向けた。



「真澄ちゃん?」



洗面所のドアをノックするとひょこっと出てくる頭。



「大丈夫?」


「・・・はい」



少し落ち着いたのか顔がずいぶんさっぱりしている。



「コーヒーはいったから行こう?」



そう言って俺は彼女をリビングへと誘った。

彼女がソファーに腰掛けたのを確認してコーヒーをマグカップに移す。

彼女のはカフェオーレに。

マグカップを手渡すと、ふーふーと息をかけ、さましながら飲む。

その姿がなんかいいなぁと自分のカップを忘れ、つい見入ってしまった。





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