プロローグ 召喚
「我が右手に眠る黒き力が目覚める時ー世界は終焉を迎える!」
夕焼けの帰り道。中学二年生のりょうは、いつものように右手を空へ掲げて叫んでいた。
「はいはい、早く帰ろ。おばさん待ってるよ」
隣を歩く幼馴染の沙耶は呆れながら笑う。
「沙耶よ・・・我を凡人と同じに考えるな。」
「明日の数学テストで赤点だったら笑うけど?」
「・・・それは困る。」
「やっぱり普通じゃん。」
二人が笑い合ったその瞬間。空から巨大な魔方陣が降ってきた。
眩い光が二人を包み込み、景色が歪む。
「えっ!?」
「ついに異世界召喚か!!」
「そんなわけーー」
言葉は最後まで続かなかった。
目を開くとそこは巨大な神殿だった。
玉座には金髪の王。周囲には鎧を着た騎士とローブ姿の魔法使い。
「成功だ・・・勇者召喚は成功した!」
王が立ち上がる。
「異世界より来たし勇者よ。我らの世界を救ってほしい。」
りょうは立ち上がる。
「・・・やっぱり来た。」
「え?」
「俺は知っていた。この時が来ることを。」
「知らないでしょ。」
沙耶がすぐ突っ込む。
神官は二人へ水晶を向けた。
「適性を測定します。」
光が二人を包む。
沙耶:固有能力 時間停止
王国中がざわつく。
「伝説級だ。」
続いてりょう:固有能力 火花
指先から火花が散る。・・・以上。
沈黙。
「・・・終わり?」
神官が答える。
「終わりです。」
「火花だけ?」
「焚き火には便利ですね。」
「・・・。」
りょうは固まる。
「いやいや、嘘だよね?」
パチッ。また火花。
「・・・・・・。」
紗耶が肩を震わせる。
「ぷっ……。」
「笑うな!」
「ご、ごめん……でも……。」
しかし、りょう本人はーー
「フッ・・・。」
不敵に笑った。
「わかっていない。」
「?」
「真の力とは封印されるもの。」
「また始まった。」
「これは力が漏れているだけだ。」
誰も信じなかった。だが、神殿の奥で一人の老人だけが驚いた顔をしていた。
こうして二人はこの異世界で勇者として生きることになった。




