おかえり
「おかえり、ツキノちゃん。……衣装変えたのね?」
「はい。ただいまです」
そう言われて、改めてツキノの衣装を確認する。
今までは「光聖騎士団」のシンボル、制服として白メインの衣装だったのが、今は空を映したような優しい蒼の衣装だ。
「気分一新、です。「光聖騎士団」もやめちゃいましたし」
「え、ちょ、いいのか?」
「はい。……団長や他の方々が悪いわけではありませんが、もういられません」
「…………まあ、あれだけのことがあればな」
カノの言葉に内心で同意する。
さすがにあんな事件に巻き込まれたギルドにはもういたくないだろう。
「光聖騎士団」もあの事件を受けて、いくらか規模を縮小しているようだし。
「……なーんか、シレンを意識してるみたいでむかつく……」
「っ!?」
ぼそりと呟いたスズの言葉に、ツキノが顔を一瞬で赤くした。
林檎みたいだ。
「マジかー……」
「…………恋する乙女だな」
シズとカノが何か悟ったかのようになっていた。
……まあ、意識されてるのは嬉しいし正直俺も意識はしてるけど、ああもはっきりと表わされると対応に困るな……いや、断じて嫌ではないんだけど。むしろ嬉しいんだけど。
「まあ、なんにせよ。おかえり、ツキノ」
「…………おかえり」
二人にそう言われて、ツキノは赤い顔のまま口を開く。
「はい、ただいま」
頬を赤く染めたまま、はにかむようにそう言ったツキノはすごく可愛らしかった。
思わず彼女の頭を撫でると、ツキノはさらに顔を赤くした。
「あ、あああああの! そういえばワタルさんはどうしたんですか!?」
ツキノがあたふたしながら、ここにはいない最後の一人のことを聞く。
うん、ツキノが俺以外の男の名前を呼んでるって意外と気分悪いな。
「もうそろそろ来るとは思うんだけどな……」
なんて言いながらふと視線を周囲に向けると、目の端に見知った赤茶髪が映った。
そちらに顔を向けると、向こうもこちらに気づいたらしく、へらりとした笑みを浮かべて軽く手を振ってきた。
「うーい、シレン。お、ツキノちゃんお久ー。おかえり」
「はい、ただいまです」
「あれ、なんか顔赤いけどシレンに何かされたのかあ痛!」
「人聞きの悪いこと言うな」
飲み干したコーヒーカップをワタルに投げつける。
ごつんと硬質な音がした。
「いってぇ!」
「うるさい」
「……なんかお前さ、最近俺の扱いひどくね?」
「…………前からこうだろう?」
「泣くぞカノおいこら」
その場でうずくまり、泣き真似をし始めたワタル。
俺たちは皆無視していたが、ツキノだけは放っておけなかったらしい。
「あ、あの、ワタルさん。大丈夫ですか?」
「ツキノちゃん優しい! なあツキノちゃん、シレンやめて俺となんでもないです」
「はい?」
「……………………」
ワタルが莫迦を言いだしそうになったのを睨んでやめさせた。
突然震えだしたワタルに、ツキノがきょとんとしている。
「……で、ワタル。お前どうして遅れたんだ?」
ワタルを見ていられなかったのか、シズが助け舟を出した。
流石は常識人だ、無視してもいいと思うんだけどな。
「おう? ああ、これだこれ」
立ち上がったワタルがそう言って、メニューウインドウを開いた。
そのまま操作して、俺たちのウインドウと画面を共有する。
何だ、と思いながらウインドウを覗き、俺はぴしと固まった。




