情報網
「…………協力、というよりは利用されていただけらしいな、あの小物は」
「あいつが小物なのは同意するけど、結局黒幕は誰だよ?」
「…………現状では、わからない」
おいおい……と思わないでもないが、俺なら間違いなく“現状”どころか“永久”にわからないままだろうから口には出さない。
スズを連れたカノが合流し、真面目な顔つきと口調でそう語る。
「…………そもそも、セキュリティを突破するなんて、あいつの技術じゃ不可能のはずなんだ。あいつにそんな技術はないし、伝手もないはずだ」
「リアル方面の知り合いじゃないのか?」
「…………そっちも調べたが、いなかった」
「待てどんな情報網だ」
「つっこまないほうがいいわよ、シズ」
カノの隣で苦笑いを浮かべつつ、スズは紅茶を飲んでいた。
そういやこいつ、いつの間にか俺たちのリアルでの名前とか住所知ってたな。教えた記憶もないのに。
「こいつ、私のスリーサイズから体重っていう乙女のトップシークレットまでいつの間にか把握してやがるのよ?」
「…………ちなみに今は83/58/84だな」
「言わなくていいのよバカ!!」
スズのカップがカノの額に直撃する。すこーんといういい音がした。
珍しいことにスズの顔が赤くなってる辺り、事実らしい。
「まあそんなことはどうでもいいとして。ツキノはまだ?」
「……乙女のトップシークレットをどうでもいいとか……シレン、アンタねぇ……」
「今の数値に不満があるならカノにでも揉んでもらえ」
「揉んでもらうか! どうせならツキノちゃんに揉んでほしいわツキノちゃんのを揉みたいわ! つかセクハラ!」
「というかいい加減やめろ、周りの目が痛い」
シズが冷静にそう言い放つ。
そういやさっきから妙な視線を感じないこともない。
「……シレン、後デ殺ス」
「はいはい」
スズの殺気を受け流しながら、メッセージウインドウを開く。
一応、一度ツキノとワタルに連絡入れておこう。
そう思って俺がメッセージを入力する前に、メッセージを受信した。
ツキノからだ。
「『もう少しで着きます』だってさ、ツキノから」
「え、本当!?」
スズがテーブルに身を乗り出して俺に詰め寄る。
誤魔化す理由もないので首肯する。
「ツキノはわかったが、ワタルはどうした?」
「ちょい待て、今メッセージ来た。……『あと10分くらい待っててくれ』だとよ」
「ワタルはどうでもいいわ」
「…………ぶれないな、お前は」
呆れたようにカノが言った。
テーブルに身を乗り出しているスズの襟首をつかみ、椅子に座らせる。
「うえ、ちょっとカノ!」
「…………いいから黙れ、少し」
座らされたスズは、カノに向かってぎゃんぎゃんと吠えている。
それをさっきの俺よりも上手く見事なまでにスルーするカノ。
ぶっちゃけ俺たちの中ではよく見られる光景だ。
くく、と笑いながら俺はカップを傾けた。
「シレンさん」
横から、声がした。
最近聞き慣れてきた、聞きたかった声だ。
俺は、声のした方を見る。
「ツキノ」
そこにはあの子がいた。
護ると約束したあの子が。
護りますと約束してくれたあの子が。
「おかえり」
「ただいま」
ツキノは、花の咲いたような笑顔をしていた。




