一面
この章でとりあえず一区切りです。
『「光聖騎士団」幹部ヒュアデス、クーデター!?』
『一般プレイヤーの協力により、鎮圧』
「一面飾ってるな」
「まあ、あんな事件だしな」
もはやお馴染みになっている気がするティアシティのカフェ。
俺とシズはコーヒーを飲みつつ、大手情報ギルドのニュースページを見ていた。一面記事には二週間前に俺たちが鎮圧したヒュアデスのクーデター、その顛末が書かれている。
「登録抹消。LWOからの追放は当然かもな」
「確かにな……首謀者のヒュアデスはもちろんだが、他の一派は?」
「待てよ。……ああ、一人二人は同じようにアカバンだ。他の連中も、騎士団を追放だとよ」
「ふむ……」
ずずっとシズがコーヒーを飲む。
俺と同じように、そのコーヒーには砂糖(味覚調整アイテム)も何も入っていない。
「にしても、いまいちよくわからない事件だったな……」
「何がだ?」
「ヒュアデスの目的がだ。クーデターを起こすにしても、あの程度の戦力で何ができた?」
「……ああ」
確かに言われてみればそうだ。
あの時は何人か抵抗している奴らもいたとはいえ、たかだか一般プレイヤー5人程度で鎮圧できた。つまりはその程度の戦力しかなかったということで、もし仮にウェリアスたち幹部が全員で乗り込んできてたら速やかに鎮圧されてたのは間違いない。
「シレン、実際に相対したのはお前だろう? どうだった?」
要領を得ない質問だなと思いつつ、あの時のことを思い返す。
正直なところ、痛めつけられたツキノを見た瞬間から記憶がうろ覚えだったりする。ただただ許せなくて叩きのめしていたことしか記憶にない。
それでも、あえて何か言うなら……。
「……まあ、正気は失ってたっぽい。どっかイカれてた」
「……ネットドラッグでも決めてたか? それとも本物か?」
「知らないって」
ズズッと俺もコーヒーを飲む。
どちらか、あるいは両方やっててもおかしくない雰囲気ではあったけどな。ひょっとしたら生来の物かもしれないが。……やっぱり殺しとけばよかったか。
「シレン、何か危ういこと考えてないか?」
「気のせいじゃね?」
相変わらず鋭い奴だ。
じっとこちらを睨む視線に耐えられず、話を変えることにする。
「ワタルたちは?」
「遅れてくるとは言ってたが……」
そう、今日こうして集まっているには理由がある。
あの事件の後、俺たちは運営に簡単な事情聴取を受けた。
俺たちに関しての情報規制もある程度してくれたらしく、どんな大手情報ギルドのニュースページにも俺たちの名前は出ていない。
いや、そんなことはこの際どうでもいいんだ。問題はツキノだ。
肉体的なダメージもそうだが、精神的なダメージのほうが大きかった。
当然だ、アバターとはいえ痛覚制限を解除された上で一方的に痛めつけられたんだから。
正直、俺はもしかしたらあの子がもうLWOを辞めてしまうのではないかと思った。それだけのダメージをあの子は味わった。仮想現実での繋がりでしかない俺は、ツキノのために何もできないことが歯がゆくてたまらなかった。
けど。
「……ツキノ、戻ってきてよかったな」
「ああ、本当に」
ツキノは帰って来た。この世界に。
さすがにまだ以前と同じように自由にできるというわけじゃないらしいけど、それでも数時間ログインできるようにはなったらしい。
今日俺たちが集まることになったのも、あの子を迎えるためだ。
「……だってのに、何遅れてんのあいつら?」
「ワタルは知らないが……カノはなんか気になることがあって調べてるらしい」
「ふーん?」
カノが気になること、か……ろくでもないことのような気がする。
そんなある意味失礼なことを考えながら、俺はまたコーヒーを飲んだ。




