第3話 16方角の街の火
「弾は.38ACP弾、拳銃から発射されたものだ。それから犯人はレミントン・モデル95も持っている」
「なぜわかる?」ワトソンが訊く。
「.41リムファイア弾も落ちているからだ。もっとも、別のデリンジャーの可能性もあるがな」とアーサーは答えた。アーサーは続けて言った。「弾丸を鑑識に回せ。こいつらの身元は割れるか?」
警官の一人が後ろからアーサーとワトソンに歩み寄ってきた。
「全被害者の身元が判明しました」とその警官は言った。
「全員、東京のヤクザの構成員です」
三時間後、アーサーとワトソンの事務所で、警官の一人が弾丸の鑑識結果を持ってきた。
「鑑識結果が出ました。.38ACP弾はワルサーPPKから発射され、.41リムファイア弾はダブルデリンジャー・モデル95から発射されたものです」と警官は言った。
「誰の銃か突き止められるか?」アーサーが尋ねた。
「できません」
「どこで購入されたかわかるか?」
「わかりません」
「銃は登録されているか?」
「登録されていません」
「それらの銃の売人は割れるか?」
「割れません」
「薬莢から指紋は?」
「出ませんでした」
「で、被害者たちはどの組の構成員だ?」アーサーは質問を変えた。
「全員、トライアドの名の下に集まった犯罪組織の高位メンバーです」
「どれくらいの高位だ?」
「全員が幹部クラスです」
「全員幹部だと?」
「はい」
「他に何かあるか?」
「今のところはありません」
「なら、下がっていい」アーサーが言うと、警官は退室した。
「どう思う、アーサー?」ワトソンが尋ねた。
「銃は一対一の売人から直接購入したもので、闇市で買ったわけでもなければ、合法的な売買で手に入れたものでもない」
「はあ?」ワトソンは驚きの声をあげた。
「購入元も売人も割れず、銃は無登録で持ち主もいない。闇市で聞いても誰も知らず、裏社会に訊ねても誰の銃か誰が売ったかわからない。ということは、闇市ですら買っていないんだ。こういう証拠が一切残らない方法は、現金を持って売人と直接会う以外にありえない」
「わかってるだろうけど、その場合、俺たちに証拠は永遠にない。証人も出てこない。犯人の名を耳にすることも、データベースに載ることも、金の流れを追うこともない。永遠に犯人を見つけられないってことだ」
「ああ」アーサーは同意した。
「じゃあ、どうやって犯人を見つけるんだ?」ワトソンは問い詰めた。
「それが俺たちの仕事だ。どうやって犯人を見つけるかだ」アーサーは答えた。
街の中心市街地――
北、北東、東、南東、南、南西、西、北西、そして北東と東の間、東と南東の間、南東と南の間、南と南西の間、南西と西の間、西と北西の間、北西と北の間、これらの各方角で大規模な火災が発生し、さらに爆発が起きた。
それから街中に人々の悲鳴が響き渡り、武装した一団が現れて、警察官、警備員、そして地元の政治家たちをその地域一帯で一人残らず殺害した。




