第2話 銃弾
あのウサギ耳の女は、まっすぐに一室へと向かった。ウサギ耳の女は左手でその部屋の引き戸を開けた。室内には大勢の男女がいる。彼女は戸口の右側の枠へ歩み寄り、振り向きざまに右手の拳銃で中央にいた男の頭を撃ち抜いて殺した。さらに左手のもう一丁の拳銃で、入り口左枠にいた男を撃ち殺す。続いて体を巡らせ、右枠にいた男をも射殺。右手の拳銃で食卓の周りにいた者たちを次々と撃ち、男たちを殺していく。弾が切れると、スカートの下の太ももホルスターに隠し持っていた同型の拳銃を抜き、部屋の左側、奥、そして右側にいる者たちを撃つ。その弾も尽きると、スカートの内側に作られた隠しポケットから女性用の小型拳銃を取り出し、部屋へ向かって走り込んできた五人の男女を撃ち倒した。それからウサギ耳の女は立ち去った。
二十分後、アーサー率いる警察が現場に到着した。アーサーは部屋を一周し、食卓の下を覗き込み、床、隅、部屋の縁、ドアの縁、ドア枠、ドアの角を調べ、時には床を這いずり回る。銃弾を見つけると、プラスチックの袋に拾い集めていった。アーサーは相棒のワトソンに言った。「弾は.38ACP弾、拳銃から発射されたものだ。それから犯人はレミントン・モデル95も持っている」
「なぜわかる?」ワトソンが訊く。
「.41リムファイア弾も落ちているからだ。もっとも、別のデリンジャーの可能性もあるがな」とアーサーは答えた。アーサーは続けて言った。「弾丸を鑑識に回せ。こいつらの身元は割れるか?」
「今、調べているところです」と警官の一人が答えた。
それからアーサーは部屋を出て、通路を歩き出した。ワトソンも後を追う。
「どこへ行くんだ?」ワトソンが尋ねた。
「防犯カメラがあるかどうか確認する」とアーサー。
「なぜここの従業員に聞かないんだ?」とワトソンが聞き返す。
「この方が、他の証拠や手がかりが見つかるかもしれないし、犯人を目撃した者がいるかもしれないからだ」とアーサーは答え、続けて「誰か事件を目撃したか?」と尋ねた。
「誰もいない」とワトソン。
「誰か物音を聞いたか?」
「このレストランはパーティーをやっていて、騒がしかったから、誰も何も聞いていない」
「誰か不審者を見たか?」
「ここはファンタジーイベントで、みんなファンタジーキャラクターの仮装をしていたから、不審者を見た者はいない」
「犯人は賢いな。普通の日にそんな格好をしていたら、とっくに捕まっている」とアーサーは言った。
アーサーとワトソンが通路を歩いていると、従業員の一人が通りかかった。ワトソンはその従業員を呼び止めて尋ねた。「すみません、ここに防犯カメラはありますか?」
「いいえ、ありません」と従業員は答えた。
「レストランに防犯カメラなし、ファンタジーパーティーで全員仮装か。よく考えてるな」とアーサーが言った。
警官の一人が後ろからアーサーとワトソンに歩み寄ってきた。
「全被害者の身元が判明しました」とその警官は言った。
「全員、東京のヤクザの構成員です」




