第55章:日本が行うべき必要な政策 part2 「働く世代の人口が増えれば経済成長する」
経済学的には、
人口増加そのものより、「働く世代の人口が増えること」が経済成長に大きく寄与する
と考える。
1.人口が増えると、まず「労働力」が増える
例えば、
人口1,000万人の国で、
働く人 600万人
子供・高齢者 400万人
だったとします。
人口が1,200万人になり、その増加分の多くが20~50歳の労働世代なら、
働く人 750万人
子供・高齢者 450万人
というように、生産活動をする人の数が増えます。
すると、
労働力増加 → 生産増加 → GDP増加
という効果が生まれます。
特に工業化・都市化の初期段階では、この効果がかなり大きくなります。
2.さらに重要なのが「消費者」が増えること
人口が増えるということは、単に労働者が増えるだけではありません。
例えば人口が1億人から1億2,000万人になれば、
住宅
食料
衣服
自動車
スマートフォン
電力
医療
教育
娯楽
金融サービス
などの需要も増えます。
つまり、
人口増加 → 労働者増加 → 所得増加 → 消費増加 → 企業の売上増加 → 投資増加 → 生産能力増加
という循環が起こる可能性があります。
これが、先ほど話していた**「人口が急増する国が将来巨大市場になる」**という話につながります。
3.ただし、「人口増加率」と「経済成長率」は同じではありません
ここが非常に重要です。
例えば人口が毎年3%増えても、
GDP成長率が3%
なら、
1人当たりGDPはほとんど増えません。
一方、
人口が1%しか増えなくても、
GDPが5%成長
すれば、
1人当たりGDPは大きく増加します。
非常に単純化すると、
1人当たりGDPの成長率 ≒ GDP成長率 − 人口増加率
と考えられます。
したがって、国民一人ひとりの豊かさを考える場合には、人口増加率だけを見るのは危険です。
4.実は「人口が増える」より「働く世代が増える」ことが重要
例えば、
ケースA
人口1億人
子供:3,000万人
労働世代:6,000万人
高齢者:1,000万人
ケースB
人口1億人
子供:1,500万人
労働世代:7,000万人
高齢者:1,500万人
人口は同じ1億人ですが、ケースBのほうが働く人の割合が高い。
この状態になると、
労働力が多い
社会保障負担が相対的に小さい
貯蓄が増える
投資資金が増える
企業活動が活発になる
という効果が出やすくなります。
これが「人口ボーナス」です。
IMFの研究でも、働く世代の割合が高くなることが経済成長に大きな影響を与えることが示されています。インドについては、1980年代以降の成長加速のかなりの部分が年齢構成の変化によるものだったとの分析もあります。
5.東アジアの経済成長にも人口構造が関係している
これは非常に興味深いところです。
日本、韓国、台湾、中国などが高度成長した時期には、
出生率低下
↓
子供の割合が低下
↓
労働人口の割合が上昇
↓
工場・企業に大量の労働力を供給
↓
貯蓄増加
↓
設備投資
↓
生産性向上
↓
経済成長
という流れがありました。
IMFは、東アジアの1965~2005年の経済成長について、人口動態が重要な寄与をしたと分析しています。
6.ところが人口増加が「経済成長につながらない」場合もある
例えば、
人口が急増する
↓
若者が大量に労働市場へ入る
↓
仕事がない
となったらどうでしょう。
GDPを十分に増やせません。
そのため、世界銀行は、若い人口が増える国が人口ボーナスを実現するには、
教育
医療
インフラ
雇用創出
民間投資
良好なビジネス環境
などが必要だとしています。
つまり、
「人口が増える」ことは経済成長のチャンスであって、経済成長そのものではない
ということです。
7.この視点から見ると、今後のインド・アフリカが面白い
先ほどの話につながります。
例えば、
日本
人口減少
+
高齢化
↓
労働人口減少
中国
人口減少
+
急速な高齢化
↓
労働人口減少
インド
人口巨大
+
比較的若い人口
+
労働人口増加
↓
人口ボーナス
アフリカ
人口急増
+
非常に若い人口
↓
巨大な人口ボーナスの可能性
という違いがあります。
実際、IMFは今後の世界の新規労働力について、インドとサブサハラ・アフリカから大きな割合が入ってくるとしています。
8.ただし、AI時代になると話が少し変わってきます
ここは、以前ユーザーさんが話されていた**「AIが経済・軍事・産業を大きく変える」**という話ともつながります。
従来は、
人口が多い国=労働力が多い=経済力が大きくなる
という関係がかなり強かった。
しかしAI・ロボットが急速に普及すると、
人口 × 労働生産性
の「労働生産性」のほうが、今まで以上に重要になる可能性があります。
例えば、
1億人 × 1人あたり年間GDP 10,000ドル
ならGDPは約1兆ドル。
一方、
5,000万人 × 1人あたり年間GDP 40,000ドル
ならGDPは約2兆ドルです。
つまり、
人口が少ない国でも、生産性が非常に高ければ巨大経済になれる。
逆に、人口が5億人あっても、生産性が低ければ巨大な貧困国のままという可能性もあります。
結論
私は、国家の経済成長を考えるときには、
人口増加
→ 労働人口増加
→ 消費市場拡大
→ 貯蓄・投資増加
→ 生産能力拡大
という経路があるため、人口動態は非常に重要な要因だと考えるのが妥当です。
ただし最終的には、
経済成長 ≒ 労働力の増加 × 1人あたりの生産性の向上
と考えたほうが本質に近いです。
そして今後は、**「人口の多い国」よりも「人口が増えながら、AI・教育・インフラによって1人あたり生産性を急速に高められる国」**が大きく成長する可能性があります。人口ボーナスは自動的に発生するものではなく、雇用・人的資本・制度などが条件になることは、IMFや世界銀行も強調しています。




