第44章:歴史比較 part2 「これから世界はどうなっていく可能性が高いのか」
「これから世界はどうなっていく可能性が高いのか」を、歴史の類似ではなく、現在の力関係から推測してみます。
2026年9月現在、私は今後10年ほどを考えると、世界は「第三次世界大戦へ一直線」というより、米国一極体制から、多極的な勢力圏競争へ移行する時代になる可能性が高いと見ます。
特に重要なのは、現在すでにロシア・ウクライナ、中東、米中対立、欧州の再軍備、欧州政治の右傾化が相互に結びつき始めていることです。CFRの2026年リスク評価でも、ウクライナ戦争の激化、イラン・イスラエル紛争、ロシアとNATOの衝突、台湾海峡危機などが主要リスクとして挙げられています。
私の予測を先に一言で言うと、
「戦争が一つ終わって平和になる」というより、世界各地の紛争が一時的に凍結されながら、大国が軍事・経済・技術・資源を巡って競争する時代になる
可能性が最も高いと思います。
1.今後1~3年:世界はさらに不安定になる可能性が高い
まず2026~2028年くらいです。
私は、この期間はかなり不安定になると予想します。
理由は、現在の主要な対立がどれも簡単には解決しないからです。
ロシア―ウクライナ
おそらく、
「完全な和平」より「停戦・休戦・凍結」
の可能性が高いと思います。
ウクライナがロシア軍を完全に追い出すことも、ロシアがウクライナ全土を征服することも難しい。
そのため、
戦闘
↓
停戦交渉
↓
一時停戦
↓
再び攻撃
↓
新たな停戦
という「朝鮮戦争型」の長期化も十分考えられます。
現在すでに欧州では、ウクライナ戦争が終わった後もロシアを長期的な脅威とみなす議論が強くなっています。CSISも、戦争終結後のロシアが以前より安全保障上脅威となる可能性を指摘しています。
つまり、
ウクライナ戦争が終わっても「ロシア問題」は終わらない
可能性が高い。
2.むしろヨーロッパが軍事大国化する
これは今後かなり重要になると思います。
第二次世界大戦後のヨーロッパは、
「軍事力はアメリカに任せて、欧州は経済を発展させる」
という構造でした。
ところが現在、それが崩れています。
欧州の2025年軍事支出は前年比14%増の約8640億ドルに達し、冷戦終結後でも極めて大きな再軍備が進んでいます。
さらにNATOも防衛力の強化を明確に打ち出しています。
したがって私は、
2030年代のヨーロッパ
は現在よりはるかに軍事的に自立した地域になると思います。
具体的には、
ドイツ
フランス
ポーランド
イギリス
北欧諸国
などが防衛力を増強するでしょう。
これは非常に重要です。
なぜなら、
「アメリカが守ってくれるヨーロッパ」
から
「ヨーロッパ自身が軍事力を持つヨーロッパ」
へ変化するからです。
3.そして、トランプ後も「America First」は残る可能性が高い
ここは私はかなり重要だと思っています。
トランプ個人の問題として考えると、
トランプが大統領を退けば元に戻る
と考えてしまいます。
しかし、おそらくそうはならない。
なぜなら「America First」を支持する社会的・経済的基盤が存在するからです。
アメリカでは、
中国への警戒
移民問題
貿易赤字
製造業の海外移転
格差
政府債務
国際軍事負担
などに対する不満があります。
したがって今後の米国政治は、
「民主党 vs 共和党」
だけではなく、
「国際協調派 vs アメリカ優先派」
という対立軸がさらに強くなる可能性があります。
4.その結果、NATOも変質する可能性がある
ここが非常に大きなポイントです。
私は、
NATOが突然崩壊する可能性は低い
と思います。
しかし、
「アメリカ中心のNATO」から「欧州中心+アメリカ参加型のNATO」
へ変化する可能性はかなりあります。
実際、欧州では米国への安全保障依存を減らそうという動きが進んでいます。
つまり2030年代には、
アメリカ
+
イギリス
+
フランス
+
ドイツ
+
ポーランド
などによる、より自立した欧州安全保障体制が形成される可能性があります。
5.そして欧州政治は「右派化」するが、ファシズムにはならない
ここはかなり重要です。
私は今後10年で、
欧州の右派勢力はさらに強くなる
と予想します。
実際、AfD、フランスの国民連合など、右派・ポピュリスト勢力の影響力は拡大しています。
ただし、
右派=独裁
ではありません。
むしろ今後増えるのは、
「民主主義の中のナショナリズム」
だと思います。
例えば、
移民制限
国境管理強化
EUへの権限移譲への反発
防衛費増額
自国産業保護
エネルギー自立
中国への警戒
などです。
したがって、
「極右独裁国家がヨーロッパを支配する」
というより、
「中道右派そのものが右に移動する」
可能性のほうが高いと思います。
実際、欧州では右派勢力の躍進が必ずしも一貫しているわけではなく、ハンガリーなどでは反対方向の結果も出ています。
6.しかし、本当に最大の問題は「中国」です
私はここが今後10~20年の最大の問題になると思います。
ロシアは非常に危険ですが、経済規模・人口・産業力では中国とは比較になりません。
そしてアメリカにとって最大の長期的競争相手は、
中国
です。
したがって、
2020年代
ロシア・ウクライナ
中東
↓
2030年代
米中対立
へ、世界政治の重心が移っていく可能性があります。
7.台湾が最大の「危険地点」になる
ここは非常に注意が必要です。
ただし私は、
中国が必ず台湾へ侵攻する
とは考えていません。
むしろ可能性が高いのは、
軍事演習
↓
海警・海軍による圧力
↓
経済制裁
↓
半導体規制
↓
台湾封鎖を想定した演習
↓
サイバー攻撃
↓
限定的な封鎖
というグレーゾーン競争です。
全面侵攻は中国にとっても非常にリスクが大きい。
そのため、
「戦争をするギリギリまで圧力をかける」
という戦略が合理的です。
CFRも台湾海峡危機を2026年の高影響リスクとして扱っています。
8.そして世界は「軍拡時代」に入る
これはかなり高い確率で起こると思います。
すでに世界の軍事支出は増加しています。2025年の世界軍事支出は約2.63兆ドルに達しました。
今後は、
戦車・戦闘機だけではなく、
ドローン
AI
サイバー兵器
衛星
無人潜水艦
長距離ミサイル
防空システム
電子戦
宇宙技術
が重要になります。
ウクライナ戦争は、すでに「大量の兵士が戦う戦争」から「AI+ドローン+衛星+電子戦」の戦争へ変化させています。
9.その結果、「戦争経済」が世界経済に組み込まれる
これは日本にとっても重要です。
今後、
防衛産業
半導体
AI
宇宙
サイバー
エネルギー
原子力
レアアース
電池
などが国家安全保障と一体化します。
つまり、
「一番安い国から買えばいい」
というグローバル化から、
「多少高くても、自国または同盟国で作る」
という経済へ変わっていく。
IMFも、防衛支出の急増は短期的には経済を刺激する一方、インフレ、財政赤字、政府債務を押し上げると分析しています。
10.これは日本にとってかなり大きな変化になる
日本については、私は比較的楽観しています。
なぜなら、
日本は今後「軍事大国化」する必要はないものの、「安全保障国家」にはなっていく
と思うからです。
具体的には、
防衛費増加
防衛産業強化
半導体
AI
サイバー
宇宙
無人兵器
エネルギー安全保障
原子力
日米同盟
日豪印欧との連携
が重要になります。
そして日本にとって最大の脅威は、
ロシアより中国・台湾海峡
になる可能性が高い。
11.では「第三次世界大戦」は起こるのか?
ここは私の予測をはっきり言います。
私の見立て
全面的な第三次世界大戦:低~中
地域戦争:高
代理戦争:非常に高い
サイバー戦争・経済戦争:非常に高い
限定的な大国間軍事衝突:中
です。
つまり、
アメリカ vs 中国
NATO vs ロシア
アメリカ・イスラエル vs イラン
が全部同時に全面戦争になる可能性は、私はそれほど高くないと思います。
核兵器があるからです。
むしろ、
「全面戦争を避けながら、各国が限界まで圧力をかける」
世界になる可能性が高い。
12.そして非常に危険なのが「誤算」
実は私は、意図的な第三次世界大戦より、
「誰も世界大戦を望んでいないのに、誤算で拡大する」
ほうが怖いと思っています。
例えば、
ロシアのドローン
↓
ポーランド領空に侵入
↓
NATOが撃墜
↓
ロシアが報復
↓
NATOが追加攻撃
↓
戦闘拡大
あるいは、
中国軍機
↓
台湾周辺で事故
↓
米軍機と衝突
↓
死傷者
↓
国内世論が激化
↓
報復
というパターンです。
戦争を始める意思ではなく、危機管理の失敗によって戦争になる。
これは今後非常に重要です。
13.私が最も可能性が高いと思う「2030年頃の世界」
かなり大胆に予測すると、私はこうなると思っています。
アメリカ
世界の圧倒的な警察官 → 世界最大の軍事・経済大国だが、世界の警察官ではない
中国
アメリカに対抗する世界第二の超大国
ロシア
経済的には弱いが、核兵器・軍事力・資源を持つ危険な軍事国家
ヨーロッパ
アメリカ依存を減らし、軍事・エネルギー・産業面で自立
中東
イスラエル・イランを中心に緊張が継続
ただし、サウジアラビアなどは戦争より経済発展を優先する可能性が高い。
日本
アメリカとの同盟を維持しながら、中国との全面対立は避ける
という非常に難しい外交をするでしょう。
14.そして世界は「3つのグループ」に分かれるのではない
ここが従来の冷戦と違うところです。
昔は、
アメリカ陣営 vs ソ連陣営
でした。
これからは、
アメリカ
↓
EU・日本・韓国・豪州など
と、
中国
↓
一部の東南アジア・中東・アフリカなど
があり、
さらに、
インド・サウジ・トルコ・ブラジル・インドネシアなど
が、
「どちらにも完全には属さない」
という世界になると思います。
つまり、
「二極世界」ではなく「多極世界」
です。
15.そして私は「世界の分断」が今後さらに進むと思う
これが一番大きな流れです。
これまでの世界は、
グローバル化
でした。
これからは、
ブロック化
です。
例えば、
アメリカ
↓
日本・欧州・韓国
↓
半導体・AI・軍事技術
という技術圏。
一方、
中国
↓
ロシア
↓
一部のグローバルサウス
という別の経済・技術圏。
そして、
インド
トルコ
サウジ
ブラジル
インドネシア
などが、その間を動く。
私の最終予測
今後10年間を一言で表すなら、
「第三次世界大戦の時代」ではなく、「冷戦より複雑な多極的対立の時代」
になる可能性が高いと思います。
そして、その中心となるのは、
① 米中対立
② ロシアと欧州の対立
③ 中東の勢力争い
④ 欧州の右傾化
⑤ 世界的な軍拡
⑥ AI・半導体・エネルギーを巡る競争
です。
特に重要なのは、ロシア・ウクライナ戦争と米国・イランの対立が「一つずつ解決すれば元の世界に戻る」という状況ではないことです。
むしろ現在起きていることは、
「第二次世界大戦後に作られた世界秩序そのものの再編」
と考えたほうがいい。
そして、その再編が終わるまでには、おそらく10年単位の時間がかかると思います。
ただし、私が一番注目している「意外なシナリオ」があります
それは、
「アメリカが衰退して中国が世界を支配する」
という単純な展開でも、
「欧州が右傾化して分裂する」
という展開でもありません。
むしろ、
アメリカが世界の警察官をやめる
↓
欧州が自分で軍事力を持つ
↓
日本も防衛力を強化する
↓
インド・サウジ・トルコなどが独自外交を展開
↓
中国もアメリカとの全面戦争を避ける
↓
世界が「それぞれ自分の勢力圏を守る」
という、**「新しい勢力均衡」**が成立する可能性です。
これは一見すると不安定ですが、実は全面的な世界大戦を避けるための新しい均衡になる可能性もあります。
現在、欧州の再軍備が急速に進んでいること、米国への依存を減らす議論が強まっていること、そして右派勢力が単純に一方向へ伸びているわけではないことを見ると、このシナリオはかなり現実味があります。




