第8話 案内妖精、配信編集まで有能すぎる!?
ギルドの自室で、案内妖精が撮影した動画ファイルを確認していると、コンコンとノックの音がした。
「秀ちゃん入れて~」
部屋主じゃないとドアを開けられないのは面倒だな。
この部屋のセキュリティは、過剰なくらい徹底されていた。
案内妖精の説明によると、殺傷できないセーフゾーンになっているらしい。
安心して配信作業ができるってことだな。
ドアを開けると、普段着に着替えた琴音がいた。
「来ちゃった」
琴音はトテトテと歩いてきて、ベッドにダイブした。
「どーん!」
「琴音。案内妖精がマジで優秀すぎるぞ」
「なんかあったの?」
「ライブ配信の切り抜き動画が作られてたよ」
パソコンの中にライブ配信で撮影された動画の他に、おすすめシーンという動画ファイルが自動生成されていた。
「えっ? どゆこと?」
「このファイルを見てくれ」
「どれどれ?」
琴音が俺の肩に顎を乗せて、パソコンを覗き込んだ。
「うわっ! どのシーンもアングルとかすっごくいいね。つなぎ合わせると映画みたい」
「これって切り抜き動画を自分で実況しやすいな」
「確かに秀ちゃんの言う通り、優秀すぎるね。これって『面白い』を集めるためのお膳立てっぽい?」
「そうかもな」
「それにこの時間からいいシーンを探して編集してたら、夜中……下手したら明日になっちゃうよね」
「疲れて寝ちゃう人もいるよな」
冒険するのはどうしても午前中から夕方までになるだろう。つまりライブ配信は昼間になる。そうなると平日は学校や仕事に行ってる人は見られないし、長時間見る人だって少ないと思う。もちろんライブ配信は保存された動画としてそのまま残るけど、全部見るのは大変だし、面白いシーンを探すのも面倒だ。だからハイライトシーンを作って、同時視聴しながら、リスナーのコメントを拾って会話したり、感想を言ったりするライブ配信も行う方が良いって、アリサさんに教わった。
「私達も気を付けないとね。さぼり癖ついたらやばいよ」
「配信ランキングの上位を狙うなら、毎日動画上げた方がいいよな」
「月間ランキングによってスキルとかアイテムもらえるしね。頑張っちゃおうか」
このゲームのような異世界――ミセリオンに転移した者達のチャンネルだけで、ランキングが作られていた。月間ランキングの上位チャンネルには、レアアイテム、レアスキル、レア魔法が配布されるらしい。
ランキングには再生数と登録者数があって、アリサさんはどちらも三位以内に入っている。ちなみに俺達は下から数えた方が早い。
「あぁ。頑張ろうな! もう一つある」
「今日の蜘蛛のこと? 私も思った」
ここから先は口にしない。案内妖精が聞いているかもしれないからな。
最後の巨大蜘蛛は、初心者向けの森に出すのは不自然だ。
本当は中型の蜘蛛もあんなに多く出現させる必要なかったんじゃないか?
俺達が想定以上に戦えるとわかり、見せ場を作るために急遽用意したんじゃないのか?
その判断をしたのはきっと案内妖精だ。怪しすぎる。
それと他の配信者の動画を覗いてみたんだが、ほとんどの人がろくに戦えていなかった。
そりゃそうだよな。いくらスキルや魔法が脳にインプットされたからって、いきなり上手く使えないだろう。
勇気をくれるスキル――ブレイブハートがあったとしてもだ。
下手すれば返り討ちに遭って、そのまま命を落とすこともある。あのスキルは諸刃の剣だ。
「秀ちゃん大変!」
「どうした!?」
「ライブ配信の再生回数二千回行ってる!」
「まじかよ! 今まで百回も行かなかったよな!」
「うん。そうだよ! コメントもいっぱい付いてる! アリサさんのチャンネルから来たって人が多いね」
「アリサさんとパーティー組めてラッキーだったな」
「……でもアンチもいるね」
やばい。琴音の目がスゥっと細くなってる。
「琴音だけで十分か……」
「……アイドルチャンネルだしね。秀ちゃん。秀ちゃんには私がいるよ。私は秀ちゃんのいいところいっぱい知ってるからね」
「ありがとうな。まぁアンチは仕方ないさ。気を強く持っていくぜ! 琴音の癒しは必須だけどな!」
「んふふ。チューしとく? それともハグしちゃう?」
「それは後でだな……ウルチャのお礼しないと」
なんとかギリギリで踏みとどまる。イチャつくのは、やるべきことをやってからだ。
「そうだった! ウルチャ読み配信なんて初めてやるよ!」
「ウルチャ読む前にハイライトシーンだな」
「そうだね! 今日のハイライト! って始まって、シーン見ながら感想とか入れて、最後にウルチャ読みかな?」
「いいね! んじゃ頑張るか!」
「頑張ろう!」
ライブ配信中に、いきなりイベント告知が行われた。
開催日は明日の正午からだった。




