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第70話 資金が欲しい!

「えええ! 私がアイドルっぽいことするの!?」


「琴音ちゃん。結構承認欲求強めでしょ?」


「ぐっ……そうかも」


「できれば、音響設備とか通販で買って、ダンジョンでコンサートができるようにしたいわね」


「結構大がかりだ!?」


「簡易でもステージ作って歌うと、アドレナリンがドバドバ出るわよ?」


「うううっ」


「もし上手く行ったら、私のソロライブにゲストで呼んじゃおうかなぁ。戻ってからになるけど」


 あの裸眼なのに立体映像で見えるライブだよな。一体どうやってるのか謎技術だ。

 

「まじでかぁああ!!」


「上手くいったらね」


「秀ちゃん! やろうよ!」


「俺が決めることじゃないけど、やっていいと思うぞ。琴音のアイドル衣装も見てみたいしな」


「や、やる!」


「あっ! 今の環境ってさ! スタジオ使わなくても常に3D配信じゃない? ってことはアバターのまま歌って踊れるじゃない!?」


「マイクあればいける?」


「それだけじゃだめよ。音響設備も用意しないと」


「常夏の島になかったっけ? カラオケのでっかいの」


「確認しなくちゃ!」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 結果、大きなパーティー会場があった。しかもステージ付きでライブ配信できる仕様だ。飾り気のないステージだけど、ポリゴンデータを重ねることで、画面上では派手なステージになるみたいだ。

 

「やったわ! こんなのが実装されているなんて早く知らせてよ! こうしちゃいられないわ! まどかと凛を呼んで歌配信よ! って今は敵だったわ! 琴音ちゃん! 狐鈴さん! 今夜歌える? ダンジョン行く前に歌配信よ!」


「えええっ! すぐには無理だよ。配信で歌えるレベルじゃないし……」


「我の歌は聞く者を虜にする程じゃぞ」


「今夜じゃなくてもいいわ! 歌は私が教えてあげるわ! 早川。動画の編集とかしばらく一人でやりなさい」


「了解。琴音頑張れ!」


「ええっ!」


「大丈夫よ。呪術を唱えるのに発声練習とかしてないの?」


「呪術と歌は違うよ! それに今まで必要なかったから言ってなかったけど、狐鈴の歌って呪力が乗っているから人を魅了するだけで、歌自体はひどいよ」


「なっ!」


 狐鈴の瞳孔が小さくなり、口がポカーンと開いたまましばらく固まっていた。

 その後恐る恐る俺を見てきた。

 その目は『冗談じゃろ?』と語り掛けている。

 俺が首を横に振ると、今度はショックで口をパクパクと震わせた。

 恥ずかしくなったのだろうか? その場にしゃがみこんで両手で顔を隠してしまった。


「それに今の歌手って、年々歌唱力上がってるから、歌自体難しいし、自信ないなぁ……」


「そこはボイトレで何とでもなるわ! 狐鈴さんも琴音ちゃんもまとめて面倒見てあげるわよ!」


 狐鈴の垂れた耳がピクンと震えた。

 しかし……俺は残酷な現実を突きつけることにした。


「盛り上がってるところ悪いけどさ。ステージの使用料金見たか?」


「え? 高っ! 貸切だとさらに高いじゃない! アイドル衣装のデータも高い! リゾート価格過ぎるわよ! でも最初の資金さえなんとかすれば……狩りよ! ダンジョン以外でも稼ぐわよ! 案内妖精! レアモンスターの情報をよこしなさい!」


「アリサさんなら、ウルチャで稼げそうだけど」


「ウルチャで稼ぐためにも、狩配信が必要でしょ。それに両方で稼げば一石二鳥じゃない!」


「は~い。レアモンスターの情報が欲しいの?」


 アリサさんに呼ばれて、案内妖精が出てきた。


「そうよ! お金が必要なの!」


「それなら丁度いいのがあるわ~」


「それで!」


「まだ何も言ってないでしょう~」


「どんなモンスターなの?」


「モンスターには違いないけど~ ちょっと大変よ?」


「そんなの早川達がなんとかするでしょう?」


「おい!」


「少し前に、沖田さんから募集があったクエストよ~」


「え? あれって一度ポシャらなかった?」


 ここリオネール王国は、魔王が支配する魔族の国と隣接していた。

 国境付近で小競り合い程度の戦いはそこそこあったが、領土が大きく変わるような侵略はなかった。

 しかしつい先月、魔王軍が大きく動き、この衛星都市フェルミアまで手が及んだ。

 ここだけじゃない。俺達の拠点になっていた、二つの都市にも魔王軍が侵攻した。

 

 リオネール王国は三つの都市を防衛し、国境付近まで魔王軍を押し戻したが、国境の都市アザトスは未だ魔王軍に占拠されたままだった。

 

 師匠と結城さんが、一度みんなを集めて、アザトス奪還に協力してくれるメンバーを募集したけど、参加してくれる人はほとんどいなかった。

 もちろん俺達は強制参加だったけど、人が集まらなくて保留になってたんだ。この間はフェルミアが攻められたから、仕方なく防衛戦に参加したけど、本当の戦争になんか参加したくないよな。


「その依頼なんだけど、また動くみたいなのよ」


「リオネール王国が諦めるわけないよな」


「そうなの。お師匠さんのところの案内妖精から情報だと、そろそろ呼び出しがくると思うわ」


「どうせ引き受けることになるわよね……。そして報酬も高いはず……。あっ! 祝勝会をここでやれば、ステージで歌えるじゃない! 琴音ちゃん! 狐鈴さん! お昼から歌の練習よ!」


 その前に色々と準備がいると思うぞ……


 そして案内妖精の予測どおり、師匠から呼び出しがあった。

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