第70話 資金が欲しい!
「えええ! 私がアイドルっぽいことするの!?」
「琴音ちゃん。結構承認欲求強めでしょ?」
「ぐっ……そうかも」
「できれば、音響セットとか通販で買って、野外コンサートができるくらいのセットが欲しいわね」
「結構大がかりだ!?」
「簡易でもステージ作って歌うと、アドレナリンがドバドバ出るわよ?」
「うううっ」
「もし上手く行ったら、私のソロライブにゲストで呼んじゃおうかなぁ。戻ってからになるけど」
あの裸眼なのに立体映像で見えるライブだよな。一体どうやってるのか謎技術だ。
「まじでかぁああ‼」
「上手くいったらね」
「秀ちゃん! やろうよ!」
「俺が決めることじゃないけど、やっていいと思うぞ。琴音のアイドル衣装も見てみたいしな!」
「や、やる!」
「あっ! 今の環境ってさ! スタジオ使わなくても常に3D配信じゃない? ってことはアバターのまま歌って踊れるじゃない!?」
「マイクあればいける?」
「それだけじゃだめよ。音響環境も用意しないと」
「リゾート島になかったっけ? カラオケのでっかいの」
「確認しなくちゃ!」
結果、大きなパーティー会場があった。しかもステージ付きでライブ配信できる仕様だ。ただのステージだけど、ポリゴンデータを乗せることで、画面上では派手なステージになる。
「やったわ! こんなのが実装されているなんて早く知らせてよ! こうしちゃいられないわ! まどかと凛を呼んで歌配信よ! って今は敵だったわ! 琴音ちゃん! 狐鈴さん! 今夜歌える? ダンジョン行く前に歌配信よ!」
「えええっ! すぐには無理だよ。配信で歌えるレベルじゃないし……」
「我の歌は聞く者を虜にする程じゃぞ」
「今夜じゃなくてもいいわ! 歌は私が教えてあげるわ! 早川。動画の編集とかしばらく一人でやりなさい」
「了解。琴音頑張れ!」
「ええっ!」
「大丈夫よ。呪術を唱えるのに発声練習とかしてないの?」
「呪術と歌は違うよ! それに今まで必要なかったから言ってなかったけど、狐鈴の歌って呪力が乗ってるから人を魅了するだけで、歌自体はひどいよ」
「なっ!」
狐鈴の瞳孔小さくなり、口がポカーンと開いたまましばらく固まっていた。
その後恐る恐るを俺を見てきた。
その目は冗談じゃろ? と語り掛けている。
俺が首を横に振ると、今度はショックで口をパクパクと震わせた。
恥ずかしくなったのだろうか? その場にしゃがみこんで両手で顔を隠してしまった。
「それに今の歌手の人って、年々歌唱力上がってるから、歌自体難しいし、自信ないなぁ……」
「そこはボイトレで何とでもなるわ! 狐鈴さんも琴音ちゃんもまとめて面倒見てあげるわよ!」
狐鈴の垂れた耳がピクンと震えた。
しかし……
「盛り上がってるところ悪いけどさ。ステージの使用料金見たか?」
「え? 高っ! 貸切だと更に高いじゃない! アイドル衣装のデータも高い! リゾート価格過ぎるわよ! そうなると最初の資金さえなんとかすれば……狩りよ! ダンジョン以外でも稼ぐわよ! 案内妖精! レアモンスターの情報をよこしなさい!」
「アリサさんなら、ウルチャで稼げそうだけど」
「ウルチャで稼ぐためにも、狩配信が必要でしょ。それに両方で稼げば一石二鳥じゃない!」
「は~い。レアモンスターの情報が欲しいの?」
アリサさんに呼ばれて、案内妖精が出てきた。
「そうよ! お金が必要なの!」
「それなら丁度いいのがあるわ~」
「それで!」
「まだ何も言ってないでしょう~」
「どんなモンスターなの?」
「モンスターには違いないけど~ ちょっと大変よ?」
「まぁ早川達がなんとかするでしょ?」
「おい!」
「少し前に、沖田さんから募集があったクエストよ~」
「え? あれって一度ポシャらなかった?」
ここリオネール王国は、魔王が支配する魔族の国と隣接していた。今まで国境付近は、小競り合い程度で、領土が大きく変わるような侵略はなかった。しかしつい先月、魔王軍が大きく動き、ここ衛星都市フェルミアまで手が及んだ。
ここだけじゃない。拠点になっていた二つの都市にも魔王軍が侵攻した。
リオネール王国は三つの都市を防衛し、国境付近まで魔王軍を押し戻したが、国境の都市アザトスは未だ魔王軍に占拠されたままだった。
師匠と結城さんが、一度みんなを集めて、アザトス奪還に協力してくれるメンバーを募集したけど、参加してくれる人は殆どいなかった。
この間はフェルミアが攻められたから、仕方なく防衛戦に参加したけど、本当の戦争になんか参加したくないよな。もちろん俺達は強制参加だったけど、人が集まらなくて保留になってたんだ。
「その依頼なんだけど、また動くみたいなのよ」
「リオネール王国が諦めるわけないからな」
「そうなの。お師匠さんのところの案内妖精から情報だと、そろそろ呼び出しがくると思うわ」
「どうせ引き受けることになるわよね……。そして報酬も高いはず……。あっ! 祝勝会をここでやれば、ステージで歌えるじゃない! 琴音ちゃん! 狐鈴さん! お昼から歌の練習よ!」
その前に色々と準備がいると思うぞ……
案内妖精の予測どおり、師匠から呼び出しがあった。




