第6話 初めてのモンスター討伐とレベルアップ
「見かけない顔だな。新人冒険者か?」
転移すると、ゲートを守っている騎士が寄ってきた。
「はい。ファーミルの森でモンスターを討伐しに来ました」
「森はあっちだ。夕方には戻ってこいよ。夜行性のモンスターは強い。新人冒険者には危険すぎる」
「情報ありがとうございます」
「ヤバいと思ったら、ここに逃げてこい。モンスターを引き連れてきてもいいからな」
「はい。その時はよろしくお願いします」
「なんか面倒見良いね」
「そう? 騎士団がいるなら、自分達でも間引きすればいいのに」
「後詰がいるのは安心だと思うぜ」
「後詰め? なんか良くわかんない」
「役割分担じゃないかな。国の組織は街やゲートを守って、冒険者はモンスターを狩るとか」
「騎士団は公務員ってわけだ」
「ふーん。そんなもんかぁ」
ゲートから森までは、歩いて十分もかからなかった。騎士団は森にいるモンスターからゲートを守るために、離れられないのかもしれない。
「琴音。茂みからこっちを見てる奴がいるな」
「うん、三匹いるね」
「何でわかるの?」
俺達プレイヤーにはいくつか選択肢があった。物理アタッカー、魔法アタッカー、ヒーラー等、各系統の初期スキルや魔法が使える。どれが自分に合うのか試せるようになっているみたいだ。
俺は右手を突き出し、森の入り口に向けて呪文を唱えた。初級の攻撃魔法だ。
「火の精霊よ。紅き矢となれ!」
突き出した手のひらの先に、三つの火の玉が現れた。
炎の熱が伝わってくる。本当に魔法が発動したぞ!
「ファイア・アロー!」
三つの火の矢が茂みに向かって突き進んだ。
「ギャンッ!」
茂みの奥から、犬の悲鳴のような声がして、三匹の狼が飛び出してきた。
「ちょっと! 心の準備がまだなんですけど!?」
アリサさんの悲鳴を無視して、俺と琴音は剣を鞘から抜いた。
俺達にはチートみたいなパッシブスキルがいくつかあった。その内の一つがブレイブハートだ。このスキルは戦う勇気を与えてくれる。モンスターとのレベル差が十以内という限定的なものだけどな。
狼はもう目の前だ。
俺は息を吸いながら、剣を斜め上に構えた。
今度はスキルを試してみる。
狼が唾液を撒き散らしながら、飛びかかってきた。
「はぁぁああ! スラッシュ!」
俺はダンっと踏み込み、すれ違うように、斬撃のスキルで狼を一刀両断した。
何だこの手応えは!? もっと重い衝撃がくると思ったら、骨ごと斬れたぞ!
「スラッシュ!」
琴音に注意を向けると、一撃で狼を切り伏せていた。
「火の精霊よ。紅き矢となれ! ファイア・アロー!」
アリサさんが放った二つの矢が狼に直撃した。
思いっきりカウンターになったのか、狼の頭が吹っ飛んでいた。
「琴音。大丈夫か!?」
「うん。大丈夫だよ。なんか魔法もスキルもすごいね」
「あぁ。普通に使えるって思っちゃうな。これがスキルを習得するってことか?」
「なんにせよ、配信映えするのはいいわね。これってモンスターも何もかも、配信上はゲームっぽく変換されるんでしょ?」
アリサさんはそう言いつつもモンスターの死体を見ないようにしていた。結構えぐいことになってる。
「そうよ~。背景もモンスターも、もちろんあなた達もね~。あ~この会話はアーカイブでカットさせてもらうわ~」
アリサさんの案内妖精が答えてくれた。
「スキルのおかげで戦うのは怖くないけど、死体は気持ち悪い。私に接近戦は無理そう……」
ここはゲームのような異世界であって、ゲームの中に転移したわけじゃない。死体はちゃんと残るし、ドロップアイテムが出るわけでもない。
「死体は私が回収するね」
案内妖精のセレナが出てきて、狼の死体に触れると、死体が消えて血だまりだけが残った。アイテムボックスを見ると、フォレストウルフの死体って書かれたアイコンがあった。
琴音とアリサさんの案内妖精も死体を回収していった。
「モンスターを倒したら、討伐記録が冒険者カードに記録されるわ。普通なら死体の一部をギルドの受付に持っていくんだけど、死体の一部を切り取るなんて配信上させたくないの。だから他のギルドに冒険者カードを持って行っても意味ないからね」
やっぱり受付嬢、というかギルドにいる人達は神様の関係者か。
「モンスターの死体は、ギルドの買い取りセンターで買い取ってくれるわ。クエスト報酬よりも高くなることがあるから、期待しておいてね」
「クエストって他のギルドでも受けられるのか?」
「受けられるけど遠慮して欲しいわ。冒険者カードは共通化されてるけど、討伐記録はあなた達プレイヤー専用のシステムだからね。さっきも言ったけど、死体の一部をもっていかないといけないから、そういうシーンになったら、配信を停止させてもらうわ」
「面倒だな」
「そうでしょう。あなた達……と言うより、視聴者がストレスなく配信を見られるための補助システムなの。本来この世界はそこまでゲームっぽくないのよ」
「じゃあレベルとかは?」
「レベルは討伐したモンスターに応じて、冒険者ギルドが付けてくれるものなの。そのレベルに応じて冒険者ランクが上がっていくわ。ステータスだって本来勝手に上がるものじゃないの。冒険者カードを教会に持っていって、そこで神の祝福を受けて初めて上昇するものなの」
教会なのか……こっちの世界観に合わせているのかな?
「もちろんこの世界にステータス画面もアイテムボックスも存在しないわよ。全部享楽之神様が配信のために用意したもの。その方がストレスなく見られるでしょ」
「現実世界を作って、それを配信上でゲームっぽく演出してるってことか。じゃあ配信用にパーティーシステムみたいのってあるのか?」
「あるわよ。パーティを組めば、経験値はパーティ全員に均等に分配されるわ。アイテムも専用のアイテムボックスに入って、換金したらお金は自動分配されるの」
「もめなくていいな。どうやってパーティーを組むんだ?」
「私達案内妖精に言えばいいわよ。それじゃ秀一、琴音、アリサでパーティーを組むわね」
視界左上のシールドバー等の下に、琴音とアリサの名前、そしてレベルが表示され、その下に小さく三本のバーが表示された。
「なんか左上が死角になりそうで怖いな」
「非表示にも、下に横並びにもできるから、邪魔にならないようにしてね」
それは良い。敵はモンスターだけとは限らないからな。
それにしても、森の入り口でもう待ち伏せか。この森思ったより危険じゃないか?
違うな。そもそも初心者用の森って認識がだめなんだ。ゲームっぽい要素があるから、勘違いしちゃうけど、この世界は現実なんだ。




