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第5話 異世界から初ライブ配信! VTuber活動開始!

 初めてのライブ配信は準備から大変だった。

 しかも普段はアバターなんて使わないから、案内妖精に設定を教わるところから始まって、配信を開始してからも無茶苦茶緊張した。


「秀一です!」


「琴音です!」


「「二人合わせてしゅーことです!」」


「今日はなんと! 異世界から配信してます! しかもアバターでの配信です!」


「私達、ちゃんと動いているかなぁ?」


 コメント欄に両親の名前があった。顔を見せろって……

 行方不明になって配信が始まったと思ったら、素顔じゃなくてアバターでの配信だ。

 そりゃあ、心配するよな。


「ごめん。強制的にアバターの配信になっちゃうんだ」


 心配させないように、なるべく明るくしゃべる。


「でも無事だよ。ちゃんと五体満足だからね」


 琴音も無理矢理明るい声を作って俺に続いた。

 

「まさかVtuberになるとは思ってもみなかったな」


「そうだね。しかも最初から高画質な3Dモデルだよ!」


 俺と琴音のアバターは、ミセリオンのクローズドベータテストに参加する時に作ったものだ。

 琴音の提案で、ゲーム配信中に視聴者が混乱しないように、現実の俺達に似せて作ってある。

 アニメ調のアバターだから、本物っぽくないけどな……

 

「琴音はアバターでも可愛いな」


「秀ちゃんだってかっこいいよ!」


「……信じられないかもしれないけど、今俺達は異世界にいます」


「異世界転移ってやつだよね」


「まさか本当に起きるとは……」


「だよねぇ。帰る方法? えっと……グランドクエストっていうのをクリアすると帰れるの」


「冒険でモンスターと戦ったり、困ってる人を助けたりするのかな? でも安心して欲しい。俺達には目に見えないシールドがあるんだ!」


「シールドが減ってきたら逃げればいいしね」


「そうだな。今日初級のクエストを受けたから、明日からモンスター退治だ! だから応援してくれると助かります!」


 今日の配信は、見に来てくれた両親や友人、バイト先に向けた配信になってしまった。

 だからだろうか、色々な人から結構な金額のウルチャをもらってしまった。

 

 正直うまく話せなかった。今までは動画投稿だったから、いくらでもリテイクできたからな。一発勝負はすごく怖かった。

 ちゃんと両親達に無事だって伝わったかな?


 配信用のパソコンは、地球のインターネットと繋がってるので、ライブ配信後に俺達のことを調べた。

 異世界転移――拉致事件か? それとも失踪事件か? 全然事件になっていなかった。それどころか異世界で冒険できる権利を得た、ラッキーな人達になっていた。しかも、アバターを使ったバーチャル体験だと信じられていて、どの配信者も訂正していない。

 さっきの配信でコメント欄が荒れていなかったのも、『享楽之神』を名乗る何者かの力によるものなのか?


 《《まぁどうでもいいか》》。


 その言葉が俺の意思とは関係なく浮かんだ。

 疑問も、不安も、怒りも、全て溶けていった。


◇◆◇◆◇◆◇◆ 


「昨日初めてウルチャもらっちゃったね」


「親と知り合いだけだったけどな」


「それでも嬉しいけどね! お父さんもお母さんも心配してたね。ネットは繋がってるのに、通話アプリも他のSNSも使えないなんて……酷すぎ!」


「電話も繋がらないし、ネトゲもできないよな」


「ネット回線ってさ、配信と報酬のためだけにあるのかな?」


「そうかもな。ネットが見れるだけでもマシか。ってもうそろそろ十時だけど、待ち合わせ場所はギルドの正面玄関で合ってるよな?」


 メニューを表示させると、右上に現時刻が出ていた。今は九時五十五分だ。


 俺達は普段十分前行動してるから、ちょっと不安になってくる。超が付くほど有名なVtuberが、俺達と行動するなんて思いもよらなかったからな。現実感がなくて不安にもなる。


 ちなみに俺と琴音は、早朝から剣術の稽古をこなした。刀と違って慣れない剣に、最初は戸惑ったけど、使えば使うほど熟練度が上がる仕様に助けられた。これってチートだよな。武術を習ったことがある身からすると、正直上達が早すぎる。どう使えばいいか、通常ではありえないスピードで体に染み込んでくるんだ。


「おはよう」


 アリサさんはローブ姿で、武器は持っていなかった。アイテムボックスに収納したままなんだろう。俺と琴音は皮の防具で、腰に剣をぶら下げている。


「おはよう」


「おはよう」


「二人共、準備できてそうね。それじゃあ、行きましょう!」


「もしかしてもうライブ配信、開始してる?」


「そうよ」


「ってことは俺等も映ってる?」


「映ってる。みんな! 私と一緒に冒険する仲間を紹介するわね!」


「は、初めまして! 早川秀一です!」


「近藤琴音です! あっ……ええと……初めまして! 秀ちゃんとカップルチャンネルやってます!」


「緊張しすぎ~」


「仕方ないだろ……」


「今日は日曜だけど、午前中だから、八千人くらいしか見てないわよ」


「は、はっせんにん!?」


「あわわわ! 秀ちゃんどうしよう!?」


「ええと、十時半予定だったけど、もう配信始めちゃおうか?」


「そ、そうだね」


「セレナ」


「はーい。呼んだ?」


「ライブ配信を開始してくれ」


「了解! はい! 開始したよ!」


 ライブ配信が開始されると、視界の右下にチャット欄が表示された。予告より早いせいか、チャット欄に人はいない。まぁいつもいないけど。


「さぁ、挨拶!」


「秀一です!」


「琴音です!」


「「二人合わせてしゅーことです!」」


「今日はすっごいゲストがいます!」


「こんアリサ~! 昨日ぷち炎上したバーチャルアイドルのアリサよ!」


「え? 炎上してたの?」


「そりゃそうよ。昨日あんた達と一緒に冒険するって言ったからね。男もいるのかよって」


「でも、昨日はNGじゃないって……」


「NGじゃないだけで、炎上はするわよ」


「アイドルは大変だ!」


「それより、あんた達の動画見たわよ。すっごく青春してるじゃない! 羨ましくて呪詛が出そうになったわ!」


「お祓いしないと!」


「あんた本気で言ってる? マジでぶち殺すわよ?」


「えええええっ!」


「琴音のちょっと抜けてるところも可愛いけどな」


「何それ! 嬉しくない! もっとなんかないの!?」


「まぁ確かに琴音ちゃんって可愛いわよね!」


「えへへ。そうかな?」


「そうよ。ね。早川君!」


「あぁ琴音は可愛い。当たり前過ぎる。もちろんアリサさんも可愛いと思うぞ」


「ちょっと! あんた! せっかくのフォローが台無しじゃない!」


「秀ちゃんの可愛いは、軽くなったなぁ……」


 やばい。琴音のジト目が怖い。すごく不機嫌だ。


「いや、これはこれは違うんだ! 社交辞令ってやつ?」


「へぇ。社交辞令だったんだ」


「いや、そういう意味じゃなくて!」


「はぁ……簡単に可愛いとか言うからこうなるのよ」


「琴音の瞳が可愛い」


「えっ!?」


「顎のラインとか唇とか……つい目が行っちゃう。何気ない仕草も好きだ」


「ちょっ! 秀ちゃん!?」


「そうやって顔真っ赤にしてるところなんて、可愛くて仕方ない」


「私も秀ちゃんのことかっこいいって思ってるよ。気遣いしてくれるところとか、ちゃんとフォローしてくれるところとか。私のこと平気で可愛いって言ってくれるところとか……」


「ちょっとあんた達! こっちも配信してるの忘れてない!?」


「あ、すみません」


「ひゃああああ! 八千人の前でとんでもないこと言っちゃった!?」


「うわああっ! 琴音やばい!」


「どどどど、どうしたの!?」


「チャンネル登録者数が五十人くらい増えてる! 同時接続数も百人超えてる……」


「うえええぇぇ!? って! チャット欄もすごく流れてる! アリサさんの配信から来たって! どうしよう! なんか爆発しろとか書かれてるんだけど!?」


「ええとっ 初めまして! 初めまして!」


「いちいち返さない。でもウルチャだけは、ウルチャ読み配信とかして、返事しなさいよ」


「わ、わかった」


「これがアリサさんパワー……」


「当然よ! さぁもう行くわよ!」


 アストラルゲートは都市の外に設置されている。転移してくる者が必ずしも善良とは限らないからだ。

 警備も厳重で、すぐ側に詰所があり、騎士団と魔導士団が常駐していた。


 俺たちはゲートの使用料を払い、ファーミルの森へと転移した。

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