第68話 ダンジョンでも式神は優秀でした
式神達がサポートしてくれたおかげで、サクサクと進むようになった。
特にシルヴィアが優秀で、罠を難なく回避できた。
後退する時のことも考えて、罠をつぶしておくのも忘れない。
そしてアシリアとジャネットが先行してくれるおかげで、曲がり角の心配もなく、迷いなく進んでいく。
はずだった……
「ご主人様~連れてきたよ!」
飛んで帰ってきたアシリアの後ろには、大量のオーガの姿が! その数二十体以上はいるぞ!
「おおいっ! トレインしてるんじゃねぇ!」
「スピードアップ!」
アシリアの飛行速度が上がり、オーク達との距離が開いていく。
攻撃魔法の射線を空けてくれたのだろう。
「ご主人様。この先大量の罠があるぞ」
アシリアは空を飛んでいたので、罠に一切引っかからなかったということか。
追いかけてきたオーク達が落とし穴にかかり、横の壁から発射された矢に射抜かれ、あっという間に半数以下に減っていった。
そしてオーク達が罠にかかっている間に、俺達はコメント・チャージと呪文詠唱を終え、次々と魔法を連打していった。
後数匹というところで、俺と琴音が剣を取り出し、殲滅だって思ったその時、ジャネットがおかわりを連れてきた。
「またかよ! あいつらわざとやってるんじゃないか!」
なんとかおかわり分も殲滅させると、ニッコニコ笑顔のアシリアとジャネットが、褒めて欲しそうにしていた。
「二度とすんな!」
俺は二人の頭にゲンコツを落とした。
「いだいっ!」
「ぐおっ!」
「少しと先を偵察だけでいいんだよ」
「だが主よ。ボス部屋らしきものならあったぞ」
ジャネットがドヤ顔になった。
「マジか!」
「道中のモンスターを連れてきたからな。ボスまでのルートは安全だ」
残り時間は四十分。
「ワンチャンありそうじゃない! 行くわよ!」
「行くしかないな!」
「んじゃ飛んじゃおうよ!」
「その方が良かろう」
俺達は飛行魔法を唱え、ジャネットに案内されながら、ボス部屋まで直行した。
残り三十分。
遠くに大きな扉が見えた。
ジャネットが更に先行して、ボス部屋の扉を開ける。
俺達はコメント・チャージの後、爆発系の魔法を唱えた。
「バーニング・フレア!」
「バーニング・フレア!」
「ライトニング・イプシロン!」
「デバイン・エクスプロージョン!」
炎、稲妻、高熱の塊が扉の向こうに吸い込まれ、中で大爆発を起こした。
普通のダンジョンだったら絶対にやらない方法だ。
部屋の中は広いのだろうか? 爆風や熱風がドアから噴き出してくると思ったけどな……
俺達は扉の左右の壁に着地して、対炎と対熱の防御魔法を唱えた。
中が熱そうだからな。
扉の中に入ると、予想通り灼熱地獄と化していた。
残り二十五分。
このフロアのボスは翼のない真っ赤なドラゴンだった。
凝視してアナライズを発動させると、『アースドラゴン・レベル83』
ボス部屋自体もかなり大きく、体育館四個分くらいあるんじゃないかな。
その中央でアースドラゴンが怒り狂って、口から炎をチロチロと吐き出していた。
大きさは電車一両を縦四つ並べたくらいある。
取り巻きらしき、リザードマンっぽい死体が、幾つも転がっていた。最初の先制攻撃で殲滅できたようだ。
「ご主人様。奴の属性は土と火だ!」
シルヴィアはそんなことまでわかるのか!
偵察とかスカウト系に特化しているのかな?
「風と水で攻撃してください! つまりジャネットは役に立たない!」
「お前、犬って言ったことを、根に持ってるな!」
「ふはは! 今日は後ろで応援でもしているがいい!」
「ジャネット! 武器に氷の魔法付与するよ!」
「琴音様! さすがです!」
俺はダークフレイムソードを取り出して、ドラゴンに向かって間合いを詰める。
「オオン・シャク・ラフラ! 火の加護です! 火から守ってくれます!」
ジャネットが火の加護を、みんなにかけてくれた。
「応援サンキュー!」
「シルヴィアの言葉を真に受けないでください!」
残り二十分。
俺、琴音、ジャネットでドラゴンの注意を引く。
ドラゴンが俺達目掛けて火を吐いた。まるで巨大な火炎放射器から放たれた炎のようだ。
火の加護のおかげか、火炎の放射を避けるとき、熱さを感じない。
過信して突っ込む気は起きないけどな!
ドラゴンが腕を斜めに振り上げ、叩きつけてきた。
横に飛んで避けると、今度はその場で一回転して、尻尾で俺達を薙ぎ払った。
動きが早い!
俺は尻尾の攻撃を喰らって、吹っ飛ばされた。
シールドゲージを見ると、一撃で七割減っている。。
シールドがなかったと思うとゾッとした。
「セイクリッド・エリア・ヒール!」
アシリアがすぐさま広範囲に回復魔法をかけてくれたおかげで、シールドが全回復した。
「すげぇ!」
「……ライトニング・イプシロン!」
アリサさんが放った雷の魔法が、アースドラゴンに直撃し、大きな肩を焼いた。
雷って風属性だから、よく効いたみたいだ。
「オン・ヴァーハ・ソワカ!」
アースドラゴンの敵意がアリサさんに向いた瞬間、シルヴィアが雷の術を使い、アースドラゴンの後ろ足にダメージを与えた。
「グルオオォォォオオ!」
ドラゴンハウルってやつか。
その咆哮だけで衝撃波になり、耐えるせいで動きが止まる。
残り十五分。
まずい。そう思った時、狐鈴が前に出てた。
「オン・ボア・ソワカ」
狐鈴が指をパチンと鳴らすと、ドラゴンの咆哮がミュートしたように聞こえなくなり、衝撃波も止んだ。
あまりのことに、ドラゴンが一瞬呆然となる。
「はあっ! ラージ・ジャンプ!」
琴音が大ジャンプのスキルを使って、ドラゴンに頭上まで上昇した。
「エア・スキャフォールド!」
そして空中に足場を作って、斜め下に向かって勢いよく飛びかかった。
「スピン・ラプチャー」
そして縦回転しながら、バスタードソードをドラゴンの肩に叩きつけ、そのまま腕を一本斬り飛ばした。
「うおおっ!」
俺もドラゴン目掛けてジャンプスキルを発動する。
「ダブル・ジャンプ!」
二回連続ジャンプするスキルを発動した。
一回目のジャンプでドラゴンの斜め前に到着する。
ドラゴンが咄嗟に火を吐くけど、もう一回のジャンプで炎をかわす。
「エア・スキャフォールド!」
琴音と同じく足場を作るスキルを使い、更にジャンプ。
「ファントム・フレイム!」
剣に漆黒の炎が宿り、剣先に向かって吹き荒れた。
「ヘビー・フィニッシャー」
漆黒のダークフレイムソードをドラゴンの顔に叩きつけた。
ドラゴンが仰け反り、その反動で俺は上に飛び上がった。
残り十分
「……ライトニング・イプシロン!」
「……アイス・ストーム!」
「オン・ヴィシュヌ・ソワカ!」
「オン・シルバ・ソワカ!」
「オン・ウィブ・ソワカ!」
俺の真下で、魔法と術が乱舞し、稲妻が、氷結がドラゴンを襲う。
まるで地獄のような光景だ。
俺は頭が下に、足が上になるようにくるっと回転して、足裏に足場を作るスキルを発動させる。
「エア・スキャフォールド!」
そして足場を蹴り飛ばし、真下のドラゴンに向けて剣を振りかぶった。
閃きが来た!
「ダーク・フレイム・スマッシャー!」
剣にまとわりついた漆黒の炎が、一段階勢いが増す。
そして落下の勢いのまま、ドラゴンに狙いを定めた。
しかし剣が当たる瞬間、ドラゴンが首を曲げた。
剣は頭に当たらず、首を縦に斬り裂いた。
その裂け目から黒い炎が噴き出し、ドラゴンを蝕んでいく。
この火って火属性じゃないのか? もしかして闇属性?
地面に激突する前に、ドラゴンを蹴って離脱。後方にゴロゴロ転がって勢いを消そうと思ったら、アシリアが抱きとめてくれた。
「サンキュー!」
「役得役得♪」
ドラゴンは傷から黒い炎を噴き出して、のたうち回っていた。これでは危なくて近寄れない。
残り八分。
琴音が斜め下に構えた剣がまぶしく発光した。
あんなスキルなかったはず。閃いたな!
「シャイニング・ジャッジメント!」
琴音がその場で横薙ぎに剣を振るうと、横に三メートルくらいある、三日月状のエネルギー波が放たれた。
早い! 次の瞬間にはドラゴンの首が飛び、それが落ちる前に、俺達は走り出していた。
残り五分。
部屋の奥にある宝箱を開け、中身を確認する間もなく、みんなでパーティー用のアイテムボックスに放り込んでいく。
残りニ分。
第八十三層に繋がる扉を開け、小型アストラルゲートにたどり着く。
「案内妖精!」
みんなの案内妖精がアストラルゲートに集まった。
「登録完了よ!」
次の瞬間、俺達はダンジョンの外に放り出されていた。
「うおおおおっ!」
「ギリ間に合った!」
「やったぁあ!」
「今宵も酒が旨くなるぞい!」
今夜は式神を交えてパーティーだ!




