第67話 ダンジョンのトラップ
「二十三時か……」
まだボス部屋が見つかっていない。
「ねぇ。力押しでもいいんじゃない?」
アリサさんが焦り出した。でも慎重に進まないといけない。
罠があったんだ。
八十一階は入口付近はなかったけど、少し進むと、落とし穴だったり、床のスイッチを踏んだら、天井から石が落ちてきたりと……バリエーション豊かな罠があったんだ。
最初こそ、リスナーも『解除凄い!』とかコメントをくれたけど、慎重に進んでいたら、『早く進め』とか『飽きた』とか言われ始めた。
「後一時間しないわよ」
「ここで焦って罠に引っかかったら、振出しに戻るかもしれないぞ」
「むぅ……」
(そんな時こそ私達でしょ!)
(我ら有翼の式神の出番だな!)
(鬼ばかりずるい! 罠とか私がハマりたい!)
頭の中にアシリアとジャネットの声が響いた。
俺達の配信が見られてる?
ひとまずアシリア達を呼んでみた。
「やっと呼んでくれた!」
「少し遅いのではないか?」
「罠! 罠!」
一人頭がおかしい奴がいるな。
「なぁお前らって俺達の行動見てるの?」
「見ようと思えば見れるわよ?」
え? そうなの? 狐鈴に確認してみようと視線を送った。
「見れるわけなかろう。少なくとも幽世では見れんぞ」
「アシリアは言葉足らずだな」
そう言ってジャネットは懐からスマートフォンを取り出した。
「えっ! どうして持ってるんだ!?」
「妙高如来様からの支給品だ」
「えええっ!」
「俺が想像している浄土世界と違う……」
「主が想像しているのは、俗世から乖離し、悟りを開くために修行するような場所であろう?」
「あぁ。そうだけど」
「修行に専念できるところもちゃんとあるが、緩い場所もあるのだ」
「そういうものなのか」
「うむ。メリハリがないと続かないと悟られたとか……」
「そうそう。私達は緩い場所で生活してるんだ」
「そうでなければ、カミラのような欲まみれの犬など、浄土世界にいれない」
「ジャネット! 犬と呼んでいいのはご主人様だけだぞ!」
「ならば犬呼ばれされないように修行しろ!」
「ガルルッ!」
「夜は修行がないからね。ご主人様達のライブ配信を見てたのよね。私達も役にたちたい!」
「うむ。妙高如来様からも修行の成果を見せてこいと言われているしな」
「え? 修行って悟りを開くものじゃないのか?」
「そっちも行っているが、我々は主に式神としての力をつける修行の方が多い」
「それじゃ、任せてみるか」
みんなを見ると、頷いてくれた。
「いいんじゃない? 後一時間しかないし!」
「そうだね」
「我も問題ない」
「私には翼があるからね! 落とし穴があっても平気! 平気!」
「待って!」
アシリアは、シルヴィアの声を無視して走り出した。
早く飛ぶための助走だと思うけど、当然のごとく、何もないところで転んだ。
あいつなんで、よく転ぶんだよ!
「あっ!」
丁度そこに落とし穴があり、床が左右に開いて、アシリアはそのまま落とし穴にダイブした。
「きゅあああっ!」
「おおおいっ!」
俺は慌てて、送還して再召喚した。
「てへっ」
「てへじゃねー! 飛んでなかったじゃん!」
「無様だな。飛べるからっていつも宙に浮いて楽してるからそうなる」
「シルヴィア。アシリアを止めてたけど、罠がどこにあるのか、わかるのか?」
「匂いでわかるぞ。床の下から淀んだ空気の匂いがした」
シルヴィアが尻尾をブンブン振りながら答えてくれた。
「すげぇ!」
「私だって役にたつもん! 偵察してくる!」
そう言ってアシリアは助走なしで宙に浮いて、先に飛んで行った。
「私もそうするとしよう」
ジャネットも翼をはためかせて飛んで行った。
「あいつら勝手すぎるだろ」
「ぶはははっ! 秀一よ。まずは式神を制御する力をつけるのじゃな!」
「一番制御できない式神が言うなよ」
「それもそうかの」
狐鈴のドヤ顔がイラっとする!
「とりあえずシルヴィア。頼んだぞ」
「任せてくれ! わざと罠にはまって、お仕置きだとか思ってないからな!」
怪しい! すっごく怪しいぞ!
「それやったら、しばらく呼ばないでお仕置きもなしだ」
「だ、大丈夫だ」
カミラがギギギっと機械みたいに振り返って、不器用に笑った。
こいつ、まさかな……




