第66話 巨大な武器での戦い
「みんな、すごい格好してるなぁ」
二十時少し前。ダンジョンの入り口には、様々な格好をしたプレイヤーが集まっていた。
俺達と同じように、まどかさん達のアーカイブ動画を見て、真似したんだろうな。
熱気と喧騒が混じり合って、ちょっとしたお祭りみたいだ。
「あらぁ。あなた達は学生服なのねぇ」
振り向いた瞬間、目が痛くなった。夜の浜辺はライトアップされているので、その光を受けてキャサリンさんのサンバ衣装が輝いていた。
想像通り、金ラメの衣装に、背中には孔雀の羽根のような大きな飾り。腰には後ろだけ長い布が揺れていた。
黄金の軽装鎧だけど、まるで踊り子のようだ。
筋肉ムキムキマッチョがそれを着ていると、いろんな意味で圧倒されてしまう。
「すごい格好ですね……」
「ちょっと派手だけど、配信映えするでしょ?」
ちょっとどころじゃないよ!
「正直勝てる気がしません」
「あらぁ。これでも彼女達のバックダンサーのつもりよ」
キャサリンさんが斜め後ろを向くと、そっちにはまどかさんと凛さんが人だかりを作っていた。
大人気のアイドルVtuberが本物の衣装で来たらそうなるよな。
「アリサ―! アリサは制服なんだ」
まどかさんと凛さんが人だかりを割って来た。
「そうよ。似合うでしょう? それにしてもやってくれたわね!」
「何事もインパクトが大事でしょ?」
「アリサも似合ってる」
「まどか、凛。今夜どっちの同時視聴者数が多いか勝負よ!」
「受けて立つわ!」
「負けないわよ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
そして二十時になり、俺達はダンジョンに突入した。
いつもと違って鎧を着てないから、身を引き締めないとな。
俺は掃除ロボットのような機動式神を召喚した。
地雷探知用の機動式神で、荒れ地でも動けるように車輪じゃなくて四足歩行だ。
こいつに先行させれば、落とし穴などの罠があったら引っかかってくれるし、いざって時は自爆もできる。
制限されている機動式神は戦略兵器だけであって、偵察や非戦闘用のは黙認されているんだ。
十字路に差し掛かったところで、機動式神を止めて今度は偵察用の式神を呼び出した。
梟の形をした式神が、右角の向こうへ飛んでいった。
俺の目の前に楕円形の映像が浮かび上がり、式神が見た光景が映し出された。
反対側の左角の向こうには、琴音が呼び出した梟の式神が飛んで行った。
「こっちには何もいないな」
「こっちは奥の方になんかいるっぽい」
「先制攻撃あるのみね!」
アリサさんが大きな杖を構えた。
このダンジョンはパーティごとに生成されるみたいなので、俺達しかいない。他人を巻き込む心配がないから、取れる作戦だ。
「いっくよ! コメント・チャージ!」
「私も! コメント・チャージ!」
「俺も! コメント・チャージ!」
「我も! コメント・チャージ!」
宣言と同時にコメントが流れ、魔力が押し上げられていく。
昨日よりもコメントがガンガン流れる! 昼間に宣伝したおかげかな?
俺達は呪文のラストスペル手前まで詠唱すると、一斉に十字路に飛び出した。
「ファイアー・ボール!」
「バーニング・フレア!」
「プラズマ・ジャベリン!」
「マジカル・バスター」
通路の奥にいたのは、オークの小隊だった。
不意をつかれたオーク達は、防御する暇もなく、炎や稲妻、そして熱の魔法を食らって半壊状態だ。
アリサさんと狐鈴の魔法を食らったオークは、上半身が吹っ飛んでいたので、残りちょうど二体だ。
俺はアイテムボックスから抜き身のファントム・ブレードを取り出した。
大きすぎて鞘から抜くのに時間がかかるからな。
そして俺はファントム・ブレードを斜め下に構えながら走り出す。
「はああっ! ファントム・フレイム!」
ファントム・ブレードから黒い炎が噴き出し、剣を覆いつくした。
ついでに間合いが詰まる前に、コメント・チャージを済ませておく。
「サークル・リーパー!」
後ろへ大きく振りかぶり、体ごと横に一回転させて、剣を薙ぎ払った。
オークの左手を斬り飛ばし、そのままオークの身体に剣が食い込む。
スキルに反応したのか、黒い炎が噴き出す勢いが増した。
「はあっ!」
そのまま漆黒の剣がオークを真っ二つに斬り裂いた。
「チャージ・スラッシャー!」
琴音も飛び込む瞬間、剣がまぶしいくらいに光り、怯んだオークに剣を唐竹に振り下ろした。
「やあっ!」
剣がオークの肩口から入り、一瞬の抵抗の後、オークは縦に切り裂かれて、ドウッと倒れた。
琴音の残心がやけに映える。
プリーツスカートで大立ち回りするのは、彼氏としてはちょっと複雑な気分だ。
見えそうで見えないところを、配信させたくない。
しかし……制服姿で巨大な剣を振りかぶった姿はかっこいい。ゲームやアニメの主人公みたいだ!
まずい。俺の中の中二病が暴れ出しそうだ。
それにしても通路が広くてよかった。狭かったら振り回すこともできないし、同士討ちが怖い。
「大きな剣ってさ、斬るって言うより、叩きつける感じだねぇ」
琴音が剣に付いた血を拭き取り、アイテムボックスにしまった。
「そうだな。刀と勝手が違い過ぎるな」
俺も同じように手入れをしてからしまう。
「そうなんだ。でもかっこよかったわよ!」
アリサさんはちょっと興奮気味だ。目がギラギラしている。
俺や琴音よりも中二病が重い気がするな。
「そうだよ! なんていうか……秀ちゃんがいつもよりかっこいい!」
「琴音だって推せるぞ!」
「うへへ。やったぁ!」
「あーはいはい。また始まったわね!」
「アリサさんの魔法だってすごいと思うぞ。最初の頃と立場が逆転しちゃったな」
「ふふ。コメント・チャージとリスナーのおかげだけどね!」
アリサさんは言葉で謙遜してるけど、ドヤ顔だった。
「狐鈴は……なんだろう。圧倒的だな」
「これでも手加減しておるぞ」
まぁそうだよなぁ。
「え!? そうなの!?」
アリサさんはまだ本当の狐鈴を知らないからな……
「そのうち真の力を見せてやろうぞ」
狐鈴が不敵な笑みを浮かべた。
「まてまて! ダンジョン内はまずいって!」
「ふふ。そうじゃろうな。外で乞うご期待じゃ!」




