第66話 巨大な武器での戦い
「みんな、凄い恰好してるなぁ」
二十時少し前。ダンジョンの入り口には、様々な格好をしたプレイヤーが集まっていた。
俺達と同じように、まどかさん達のアーカイブ動画を見て、真似したんだろうな。
熱気と喧騒が混じり合って、ちょっとしたお祭りみたいだ。
「あらぁ。あなた達は学生服なのねぇ」
振り向いた瞬間、目が痛くなった。夜の浜辺はライトアップされているので、その光を受けて、キャサリンさんのサンバ衣装が輝いていた。
想像通り、金ラメの衣装に、背中には孔雀の羽根のような大きな飾り。腰には後ろだけ長い布が揺れている。
黄金の軽装鎧だけど、まるで踊り子のようだ。
しかし筋肉ムキムキマッチョがそれを着ていると、いろんな意味で圧倒されてしまう。
「凄い格好ですね……」
「ちょっと派手だけど、配信映えするでしょ?」
ちょっとどころじゃないよ!
「正直勝てる気がしません」
「あらぁ。これでも彼女達のバックダンサーのつもりよ」
キャサリンさんが斜め後ろを向くと、そっちにはまどかさんと凛さんが人だかりを作っていた。
大人気のバーチャルアイドルが本物の衣装で来たらそうなるよな。
「アリサ―! アリサは制服なんだ」
まどかさんと凛さんが人だかりを割って来た。
「そうよ。似合うでしょう? それにしてもやってくれたわね!」
「何事もインパクトが大事でしょ?」
「アリサも似合ってる」
「まどか、凛。今夜どっちの同時視聴者数が多いか勝負よ!」
「受けて立つわ!」
「負けないわよ!」
そして二十時になり、俺達はダンジョンに突入した。
いつもと違って鎧を着てないから、身を引き締めないとな。
俺は掃除ロボットのような機動式神を召喚した。
地雷探知用の機動式神で、荒れ地でも動けるように、車輪じゃなくて四足歩行だ。
こいつに先行させれば、落とし穴などの罠があったら引っかかってくれるし、いざって時は自爆もできる。
制限されている機動式神は戦略兵器だけであって、偵察や非戦闘用のは黙認されているんだ。
十字路に差し掛かったところで、機動式神を止めて、今度は偵察用の式神を呼び出した。
梟の形を式神が、右角の向こうへ飛んでいった。
俺の目の前に楕円形の映像が浮かび上がり、式神が見た光景が映し出された。
反対側の左角の向こうには、琴音が呼び出した梟の式神が飛んで行った。
「こっちには何もいないな」
「こっちは奥の方になんかいるっぽい」
「先制攻撃あるのみね!」
アリサさんが大きな杖を構えた。
このダンジョンはパーティごとに生成されるみたいなので、俺達しかいない。他人を巻き込む心配がないから、取れる作戦だ。
「いっくよ! コメント・チャージ!」
「私も! コメント・チャージ!」
「俺も! コメント・チャージ!」
「我も! コメント・チャージ!」
宣言と同時にコメントが流れ、魔力が押し上げられていく。
昨日よりもコメントがガンガン流れる! 昼間に宣伝したおかげかな?
俺達は呪文のラストスペル手前まで詠唱すると、一斉に十字路に飛び出した。
「ファイアー・ボール!」
「バーニング・フレア!」
「プラズマ・ジャベリン!」
「マジカル・バスター」
通路の奥にいたのは、オークの小隊だった。
不意をつかれたオーク達は、防御する暇もなく、炎や稲妻、そして熱の魔法を食らって半壊状態だ。
アリサさんと狐鈴の魔法を食らったオークは、上半身が吹っ飛んでいたので、残りちょうど二体だ。
俺はアイテムボックスから抜き身のファントム・ブレードを取り出した。
大きすぎて鞘から抜くのに時間がかかるからな。
俺はファントム・ブレードを斜め下に構えながら走り出した。
「はああっ! ファントム・フレイム!」
ファントム・ブレードから黒い炎が噴き出し、剣を覆いつくした。
そして間合いが詰まる前に、コメント・チャージを済ませておく。
「サークル・リーパー!」
後ろへ大きく振りかぶり、体ごと横に一回転させて、剣を薙ぎ払った
オークの左手を斬り飛ばし、そのままオークの身体に剣が食い込む。
スキルに反応したのか、黒い炎が噴き出す勢いが増した。
「はあっ!」
そのまま漆黒の剣がオークを真っ二つに斬り裂いた。
「チャージ・スラッシャー!」
琴音も飛び込む瞬間、剣がまぶしいくらいに光り、怯んだオークを剣を唐竹に振り下ろした。
「やあっ!」
剣がオークの肩口から入り、一瞬の抵抗の後、オークは縦に切り裂かれて、ドウッと倒れた。
琴音の残心がやけに映える。
プリーツスカートで大立ち回りするのは、彼氏としてはちょっと複雑な気分だ。
見えそうで見えないところを、配信させたくない。
しかし……制服姿で巨大な剣を振りかぶった姿はかっこいい。ゲームやアニメの主人公みたいだ!
まずい。俺の中の中二病が暴れ出しそうだ。
それにしても通路が広くてよかった。狭かったら振り回すこともできないし、同士討ちが怖い。
「大きな剣ってさ、斬るって言うより、叩きつけるだねぇ」
琴音が剣に付いた血をふき取り、アイテムボックスにしまった。
「そうだな。刀と勝手が違い過ぎるな」
俺も同じように手入れをしてからしまった。
「そうなんだ。でもかっこよかったわよ」
アリサさんがちょっと目を輝かせていた。
俺や琴音よりも中二病が重い気がする。
「そう! 秀ちゃんがなんかいつもよりかっこいい!」
「琴音だって推せるぞ!」
「うへへ。やったぁ!」
「あーはいはい。また始まったわね!」
「アリサさんの魔法だって凄いと思うぞ。最初の頃と立場が逆転しちゃったな」
「ふふ。コメント・チャージとリスナーのおかげだけどね!」
アリサさんは言葉で謙遜してるけど、ドヤ顔だった。
「狐鈴は……なんだろう。圧倒的だな」
「これでも手加減しておるぞ」
まぁそうだよなぁ。
「え!? そうなの!?」
アリサさんはまだ本当の狐鈴を知らないからな……
「そのうち真の力を見せてやろうぞ」
「まてまて! ダンジョン内はまずいって!」
「ふふ。そうじゃろうな。外で乞うご期待じゃ!」




