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第55話 人造式神を調伏しよう!

 今日はやけに琴音が甘えてくる。 べったり引っ付いて離れない。

 なんだろう。いつもと甘え方が違う。どこか不安で、怖がってる? 怖い夢でも見たのだろうか?


「……ねぇ。今日は冒険やめよ」


 そう言われたら断れない。俺はみんなに頼んで、冒険を休みにしてもらった。

 そんなわけで、今日は琴音と二人で、ランキングを上げる作戦会議になった。


 ヒュドラとフェンリルを調伏した配信は評判良かったけど、ジャネットとカミラの紹介配信は炎上してしまった。

 特にジャネットは、狐鈴と師匠にビビりまくっていたから、虐待っぽくなってしまった。

 カミラはジャネットの失敗を生かして、初めての召喚は配信せず、二度目の召喚で自己紹介してもらったけど、やっぱりハーレム野郎って言われて炎上してしまった。


「何で女の子になるかなぁ。ハーレム野郎って……俺は琴音だけでいいんだけど」


「うーん。私、アシリア達にデジャブ感じてるんだよね」


「ジャネットとカミラも?」


「うん」


「琴音が調伏した方が良かったのかな?」


「それはないよ。私じゃ無理。秀ちゃんだから調伏できたと思うよ」


「わっかんねぇな。今のところ女の子になるのってデメリットしかないぞ。俺、琴音に嫌われたくないんだけど……」


「今のところギリ大丈夫だよ?」


「ギリって……」


「調伏するのはいいんだけどね……」


「調伏より戦闘配信かなぁ……。あっ! 戦闘で思い出したんだけどさ。アリサさんの同僚のまどかさん。やばそうだな」


「どゆこと?」


「切り抜き動画を見ただけなんだけどさ。まどかさんが目立ちすぎてる」


「アイドルだからねぇ」


「まどかさんは後衛で、シールドと魔力特化型だった。後衛の大砲型タイプだな。他の配信者が盾役になってチクチクダメージを稼いで、まどかさんの強力な魔法で止めを刺すってパターンが多かった」


「それって盾役の人が目立たないよね」


「そうなんだよ。切り抜き動画ってさ、元のアーカイブのハイライトシーンを切り貼りするけどさ、殆どまどかさんしか映ってない。凛さんの場合も同じだった」


「……そりゅあ、他の人は面白くないね。でもまどかさんって凄い人気なんでしょ? コラボ配信でチャンネル登録者数を稼ぐメリットはあるよね。私達みたいに」


「それはあるけどさ。俺達とアリサさんのような関係じゃなくて、時々不満そうな感じだったんだよね。いつはよいしょしてるけど、ふとした瞬間、嫌な表情浮かべてさ。リスナーから不仲なんじゃないかって言われてるよ」


「そうかぁ。でも私達じゃどうすることもできないよ」


「そっちはそうなんだけど、アリサさん……最近、役に立ててないって思ってるっぽいんだよ」


「……やっぱり。そっちは早くなんとかしないと!」


「まどかさんのチームみたいになりたくない」


「そうだよね。またパワーレベリング?」


「それもありだな。後は、陰陽庁が俺達用に人造式神のネットショップ開設してくれたよな」


「めっちゃ高いやつ! もっと安くしてよ!」


「値下げできない仕様らしいな。享楽之神の仕業かな?」


「コネで強力な武器を安く買えちゃうのは不公平ってことかな?」


「たぶんな。アリサさんはモンスターを調伏して使うのは、怖いって言ってたから。金策して人造式神を買うのもありだよな」


「そっちは賛成! 私も人造式神を増やしたい。秀ちゃんもそっちの方が良いんじゃない? また女の子になったら炎上しちゃうし」


「そうだな。新しい人造式神のお披露目配信とか面白そうだな」


「クエストいっぱい受けて、お金稼ぎしよう! お金いっぱりあれば、リゾート島でバカンスできるしね!」


「アリサさんも人造式神を購入できるように、師匠に相談しようか」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「あ? アリサちゃんに人造式神を買わせたいだって?」


「はい。師匠」


「国家資格がないからダメだ」


「……あっ!」


「とはいえ、今の状態だと資格なんて取れねぇ。それじゃあつまんえねぇよな。数日待ってな。俺様が上に掛け合ってみる」


「ありがとうございます。もう一つ、アリサさんの件で相談が……」


「……なんか言いにくそうだな。まぁ言ってみ」


「実は……」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 三日後。師匠から呼び出しがあった。アリサさんも含めて。


「やっぱり国家資格の現地取得は無理だった。それにアリサちゃんは、陰陽師になりたいわけじゃないだろ?」


「はい」


「そうか。だが代理購入での貸し出しの許可は出させた。アリサちゃんをその気にさせて、帰還後に陰陽師に引き込むためって建前でさ」


「あはは……」


「実際、狐様の弟子ってことで、でかなり注目されてんだぞ」


「そうなんですか?」


「あぁ。お前は間違いなく強くなる。それも並みの陰陽師では到達できない高見へな」


「……えっと」


「それくらい狐様が凄いってことだ。今は秀一達におんぶにだっこかもしれないが、肩を並べて戦う日はそう遠くない。俺様が保証してやる」


「秀一。お前、今の内にアリサに恩売っとけ」


「それはもう!」


「……私、必要にされてる?」


「もちろんだ!」


◇◆◇◆◇◆◇◆


 その日の内に俺達は人造式神を調伏することになった。


「まずはアリサちゃんからだ。貸出だが、地球に戻るまではお前が主だ」


「はい」


「んじゃ。俺が召喚する人造式神を倒してみせろ。壊して良いから、全力で戦え」


「わかりました」


「オン・ナーガ・ラージャ・スヴァー! 北方の守護よ、地を鎮め、禍を退けん! 神獣招来! 来たれ! 玄武! 急急如律令!」


 師匠が巨大な亀を召喚した。よく見ると亀の尻尾から蛇が生えている。


「玄武よ。そこそこ頑張れ」


「オン・コン・パー・バラ・ウン! 狐火よ、焔となりて翔けろ! 焔火ほむらび! 急急如律令!」」


 アリサさんが速攻仕掛けた。

 狐火が玄武に向って放たれたが、玄武は避けようともしない。

 小さく鳴くと結界を張り、アリサさんの狐火を完全に防いだ。

 そしてお返しとばかりに、蛇が息を吸い込むと、青いレーザーを吐いた。

 俺は知っている。アレは危険なウォーターカッターみたいなものだ


「ちょっ!」


 かすっただけで、アリサさんのシールドが三分の一減った。

 アリサさんは悲鳴を上げるけど、玄武は待ってくれない。

 玄武は身をかがめて力を貯めた後、アリサさん目掛けて跳躍した。


「くっ」


 玄武はアリサさんの直ぐ側に着地する。しかし避けれたのも束の間、至近距離から尾っぽの蛇が青いレーザーを吐いた。


「ひゃあっ!」


 なんとか避けるアリサさん。

 アリサさんも札を何枚か放ちつつ、結界を張った。

 それほど強い結界じゃないけど、一撃防げればいいって感じか。


 青いレーザーは連打できるわけじゃないのか、たまにしか撃ってこない。

 アリサさんは何かに気づいたのか、呪術ではなく、魔法の呪文を唱え始めた。


「水の精霊よ! 凍てつく牙よ! 大地を貫け! アイス・ピラー!」


 地中から尖った氷の柱が突き出し、玄武をひっくり返した。


「やった!」


 しかし尾っぽの蛇が地面に向かってレーザーを吐いて、元に戻る。


「げっ!」


 玄武が大きく息を吸い込んだ。


「絶対やばいやつ!」


 アリサさんが大きく距離を取った次の瞬間、玄武が腹の底から息を絞り、図太いレーザーを吐いた。

 アリサさんは距離を取ったおかげで何とかわせが、玄武の攻撃は終わらない。尾っぽの蛇が首をしならせ、レーザーで追撃してきた。

 アリサさんはレーザーを避けながら、アイテムボックスから式札を取り出した。


「オン・ガルヴァ・シャクリ・ソワカ! 白き牙の眷属よ、吼えよ! 駆けよ! 来たれシルバーウルフ! 急急如律令!」


 アリサさんが狼を召喚して、素早く騎乗した。


「回避は任せたわよ! オン・サンリャ・ヴァジュラ・ヒマラ・ソワカ!」


 アリサさんが氷の術を唱え、完成させないまま魔法を唱えた。


「水の精霊よ! 凍てつく牙よ! 大地を貫け! アイス・ピラー!」


 再びひっくり返る玄武。


「天の氷塊、空より落よ! 氷鎚落ひょうついらく! 急急如律令!」


 玄武が元に戻る前に、上から巨大な氷塊を落として動きを止めた。


「すげぇ……」


 あんな使い方できるのか。


 尾っぽの蛇が必死にレーザーを吐いたり、頭で地面を押したりするが、その間にアリサさんは二つ目の氷塊を落とし、とうとう玄武の結界が砕け散った。


「オン・ビャクコク・テン・カガチ・ソワカ! 狐火よ集え、炎の尾よ、九つの業火、吠え猛りて悪を灼け! 焔尾轟火えんびごうか! 急急如律令!」


 冷え切った玄武に炎が炸裂し、轟音と共に爆発。玄武は無数の式札になって宙を舞った。


「やるな。呪術と魔法のダブルタスクか」


 師匠が呪文を唱えると、バラバラになった式札が集まり、一枚の式札になった。


「ほら。玄武の式札だ。大事に使え」


「ありがとうございます」


 この後俺は青龍を、琴音はアリサさんと同じ玄武の式神を調伏した。

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