表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/72

第51話 シルバーウルフ

 今日の冒険は、いつものメンバーに加えて師匠がいる。調伏の監督役だ。


「こっちの森は結構明るいな」


 俺達が来ているのは、ウィップの大森林だ。

 一本一本が巨木で、幹も太い。

 背の低い木も、茂みもないので、今までの森とは全然違う。日本にはないタイプの森だ。

 見晴らしが良いけど、大きなモンスターも多いらしい。


「オン・バラドゥラ・ミトラ・ヤクシャ! 闇を裂く審翼のふくろう! 来たれ! 夜梟やぼう! 急急如律令!」


 俺と琴音はふくろうの人造式神を呼び出して放った。こいつはモンスターを見つけて報告してくれる偵察用だ。


 師匠も鷹の人造式神を放ってくれた。あっちの方がかっこいいな……

 

「北東だな」


 早っ!


 しばらく北東に進むと、狼の群れを発見した。


「ちょっと大きくないか?」


「人が乗れちゃうね。みんなで狼に乗って移動とか楽しそう!」


「俺様は戦闘に参加しないんで、後はよろしく」


 そう言って師匠はレジャーシートを引いて、ネットで買ったノンアルコールのビールを取り出した。俺達を肴に一杯やるらしい。いやいやまだ午前中だけど! ノンアルなだけまだマシか!?  


 狼はこっちの臭いをかぎ取ったのか、発見と同時に遠吠えを上げて向かってきた。

 数は八頭。鑑定スキルをかけてみると、『シルバーウルフ・レベル30』。大きい割にレベルは低いな。しかし群れで襲ってくるのは厄介な奴だ。


「打ち合わせどおり、一番後ろの奴以外を殲滅するぞ!」


 俺達は接敵前に呪文を唱えた。


「炎の精霊よ。紅き業火を纏いて敵を討て! ファイア・ジャベリン」


「輝き燃えたる火の精霊よ。我に集いて力を示せ! ファイアー・ボール!」


「オン・コン・パー・バラ・ウン! 狐火よ、焔となりて翔けろ! 焔火ほむらび! 急急如律令!」


「スターライト・シュート!」


 しかしシルバーウルフが避ける! 唯一当たったのは、弾速が早い狐鈴の魔法だけだ。


「なんで当たらないの!」


 アリサさんの焦りの叫びが聞こえると、狐鈴がアリサさんの側に寄って、援護射撃を行ってくれた。

 上手くアリサさんの攻撃に合わせて誘導している。

 狐鈴と目が合うと頷いてくれた。あっちは大丈夫そうだ。

 

 さて俺は俺で集中しないと。

 シルバーウルフはただ闇雲に飛びかかってきたりしなかった。

 その内の一頭が俺の前で一度足を止め、様子をうかがっていると見せかけて、別のシルバーウルフが横から飛びかかってきた。目の前の奴は囮だ! 頭がいいっ!

 まぁバレバレなんだけどな!

 俺は横から飛びかかってきたシルバーウルフを紙一重で避けつつ、前足を斬り飛ばした。


 そこへ様子を伺っていたシルバーウルフが飛びかかってきた。

 

「インスタント・シールド!」


 数秒だけ障壁を張るスキルで跳ね飛ばす。足場を作るスキルを多用してたら閃いた。いい加減本来の使い方をしろって怒られた気分だ。

 シルバーウルフを弾いた俺は、足を斬り飛ばされて、必死に立ち上がろうとしているシルバーウルフに向かって、スッと手を伸ばした。

 

「輝き燃えたる火の精霊よ。我に集いて力を示せ! ファイアー・ボール!」


 結構近い距離で撃ったので、爆発の余波と熱を遮断するために、一瞬だけシールをオンにする。

 

 そこへシルバーウルフが再び間合いを詰めてきた。しかし炎にビビったのか、今度は飛びかからず様子を伺っている。

 俺は剣を突き出し牽制しつつ、呪文を唱えた。


「輝き燃えたる炎の精霊よ。我に灼熱の炎球を授けん。弾けよ。灼熱の鳳仙花! ファイア・ブロッサム」


 シルバーウルフが咄嗟に避けるが、それは織り込み済みだ。

 唱えた呪文はショットガンから発射された球のように、前方に炎の弾をばら撒くタイプだ。

 被弾したシルバーウルフが歯をむき出しながら距離を取った。しかしそれは魔法を使う相手にとって悪手だ。

 

「炎の精霊よ。紅き業火を纏いて敵を討て! ファイア・ジャベリン」

 

 ファイア・ボールより弾速が早い魔法だけど、それでもシルバーウルフに避けられてしまった。

 

「風の精霊よ。我が意に従い雷光となれ! ライトニング・ボルト!」


 威力より早さを求めるのなら、雷系の魔法だ。

 青い稲妻が走り、今度こそシルバーウルフに命中する。

 確殺はできないが、ダメージと痺れ効果を与えられた。

 

「輝き燃えたる火の精霊よ。我ここに、火の円盤用いて理を示す」

 俺の突き出した掌の向こうに、炎で出来た魔法陣が現れた。

「汝、盟約に従い、天焦がす炎となれ! バーニング・ファイア!」

 ファイア・ボールより一回り大きいオレンジの弾が発射され、シルバーウルフに直撃。その瞬間轟音と共に炎が炸裂し、天にむって火柱が上がった。


 調伏するためには相手を屈服させないといけない。だから生き残りに恐怖を与えるために、派手に過剰に攻撃した。

 最初こそ手こずったが、気づけばシルバーウルフは残り一匹になり、琴音と対峙していた。


「オン・ラグナ・リンマ・ソワカ! 雷よ、下りて爆ぜよ! 雷爆らいばく! 急急如律令!」


「ギャンっ!」


 琴音が手加減して放った雷が狼を撃ち抜いた。琴音は痺れて動けない狼へゆっくり歩きながら呪文を唱える。


「オン・カシャ・ザンマ・ソワカ! 天より降りよ、災厄を断つ刃! 召刃・天雷鳴刀あまのいかづちのたち! 急急如律令!」


 琴音の手に刀が現れ、狼の目に恐怖が宿る。


「オン・カンダ・ヴァジュラ・ソワカ!」」


 琴音の刀に青白い稲妻が宿りバチバチと弾ける。

 狼は必死に体を動かそうともがくが、痺れて動けない。


「はっ!」


 琴音が刀を振りかぶり、狼目掛けて振り下ろした。


「ギャンっ!」


 狼は恐怖のあまり泡を吹いた。

 琴音の刀は狼の顔の直ぐ側に突き刺さり、稲妻が狼を軽く焼いていた。


「死か服従か」


 琴音が言霊を込めて言うと、何を言っているのか伝わったのか、狼はガクガクと首を縦に振った。


「オン・カンマニ・パドマ・シャリラ・ソワカ! シルバーウルフ。調伏の印、いま結び奉る。縁鎖・魂縛・理鎖・封絶・従命! 急急如律令!」


 無事に調伏できたかな?

 狼は服従のポーズをとった。


「よしよし」


 琴音は狼の腹をワシワシとなでる。


「乗せてくれるかな?」


「ぐるる」


 狼はうつ伏せになって、背中を低くした。


「よっと」


 琴音が狼にまたがる。


「ずれる! 落ちそう!」


 狼は琴音を落とさないように、ゆっくりと立ち上がった。落とせば殺されると思ったのか、狼の顔が必死に見えて、吹き出しそうになった。


「ふぅ。しばらく乗ってようかな。浄土世界の門はもうちょっとしたらよろしくね」


「了解だ」


「ねぇ。秀ちゃんとアリサさんも調伏して、みんなで乗ろうよ」


「そうねぇ。私は人造式神からって思ったけど、楽しそうね」


 もう一つの群れを探して一匹残して調伏し、無事にアリサさんも狼を式神として使役することに成功した。


「初めての式神! なんか可愛く思えてきたわ!」


 アリサさんが狼の上で大はしゃぎしている。

 式神となった狼は、さっきの狼と同じく、恐怖で顔が引きつっていた。

 ちょっとやり過ぎたかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ