第39話 魔王軍撃退 イベント終了と祝勝会
俺と琴音は、仲間達の大歓声の中帰還した。
機動式神を送還し、これでやっと一息つける。
「ふぅ……」
憑依が解けて意識が戻ると、体中が痛い。打撲や火傷の跡がまだある。どれも機動式神が受けたダメージだ。師匠が回復の呪符で癒し続けなかったら、耐えられなかったかもしれない。師匠に感謝だ。それより琴音が心配だ。琴音の方を見ると、狐鈴の回復が優秀なのか、ほぼ無傷に見えた。良かった。本当に良かった。
「秀一、琴音。よくやった」
「うむ。褒めてつかわす」
「師匠、狐鈴、ありがとうございます」
「気にすんな」
「師匠。他の都市が気になります」
「今更何言ってるんだよ? 自分のこどだけでいっぱいいっぱいで、他人の配信なんて見てなかったくせによ」
「それは……」
「大丈夫だ。別都市には真田と御影が召喚されている」
「えっ! 真田さんと御影さんが!?」
「向こうでも退場者が出ていたんだよ」
「退場者って……」
「かなりの人数が死んでる。こっちの都市は恵まれてる方だ」
「そんな! 死亡者が出れば、騒ぎになるはず!」
「ならねぇんだよ。都合の悪いことは強制力かなんかでなかったことにされちまう。ここで死んじまったらよ。なぁんにも残らねぇんだ。超ウケるだろ? まぁ俺様レベルになると、認識できちゃうけどさ!」
視界の左下に何か光ったなと思ったら、メニューアイコンだった。確認してみると、お知らせのページにイベントのクリア報酬の文字があった。何がイベントクリアだよ。
魔王軍襲撃イベントの活躍に応じて、各々に報酬が配られているみたいだ。俺はレアスキルと武器や防具だった。琴音に聞いてみると、ほぼ同じ内容だった。
イベントのクリア報酬を見て、魔王軍襲撃が終わったんだと実感できた。
勝利したこと、生き残れたことに、みんな嬉しくて大はしゃぎだ。
そしてなにより、グランドクエストの進捗が進んだ。
グランドクエストは全てのクエストの総称で、初級クエストから始まり、神話級クエストまである。
今回のクエストは英雄級クエストらしい。
全然冷めない戦いの高揚感。流れ続けるリスナーのコメントとウルトラチャット。喜びと興奮が最高潮に達したその時、この雰囲気をぶち壊すかのように、都市の方から馬に乗った騎士がやってきた。
みんな嫌な予感がしたのか、徐々に静かになっていく。
「私は領主の使いだ。責任者はいるか?」
騎士は一番年長っぽい師匠を見た。
「あ? そう言えば誰だっけ? 結城ちゃん?」
「結城ちゃんはやめてください。責任者というかまとめ役でしょうか?」
全員の視線が結城さんと師匠に集まった。
「まぁ俺らでいいんじゃね?」
「私達は後から参加ですが、立場上そうなるのでしょうか?」
「どうする? 俺、適当にやっちゃうよ?」
「はぁ……交渉は私に任せてください。沖田さんは私のフォローをお願いします」
師匠に任したら、暴言吐いて敵対しそうだよな。
「あいよ」
「んじゃ、俺と結城ちゃんでなんとかすっから、みんなは宴会の準備でもしててくれ。秀一と琴音は機動式神の撤収よろしく」
あれだけの戦力を見せたら、領主が放って置くはずないよな。難しい事になりそうだけど、師匠と結城さんとなら、何とかなるだろう。
俺は琴音と一緒に機動式神をアイテムボックスに収納していった。国家機密の塊みたいなもんだからな。流石にこっそり自分のアイテムボックスに入れる奴はいなかった。アーカイブで絶対バレるしな。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「師匠と結城さん、遅いな」
ギルドの大食堂には、各々ネット通販で購入した様々な料理が並べられていた。みんな稼ぎがいいのか、どれも高級品に見える。こっちの世界には電気がないから、料理できる人が厨房を借りて温めなおしたんだ。中には料理配信してる人までいた。俺も琴音もそこそこウルチャもらっているから、奮発したぞ。こっちの料理も美味いけど、やっぱり地球の料理の方が美味い。文明のレベルが違うからかな。
「よう。遅くなってすまねぇ」
やっと師匠と結城さんが帰ってきた。
「師匠。お疲れのところ申し訳ないのですが……」
俺は師匠にシャンパンが入ったグラスを渡した。みんな乾杯をずっと待っていたからな。
「おう。悪いな」
琴音も結城さんにシャンパンを渡していた。
ちなみに俺と琴音は未成年なので、炭酸ジュースだ。
「みんな。お疲れさん。よく頑張った。あのドラゴンを前にして逃げない。むしろ戦おうとしたことに、俺様びっくりしたぞ。本来なら俺様達防衛省の人間が、お前らを守らなくちゃいけねぇってのによ。視聴者もお前らの勇気に高評価しまくりだろ。それだけ神力も得られたってことだ。大成功だな!」
師匠が結城さんに目配せした。
「皆さんのおかげで、魔王軍を撃退できました。皆さん本当にお疲れ様でした。皆さんが気になる領主のことですが、何も心配ありません。向こうがこちらに何かしてくることはないので、心配しなくて大丈夫です。詳しいことは後日話しますので、まずは乾杯しましょう! 皆さんの勝利に乾杯!」
「秀ちゃん! このお肉美味しい!」
「こっちのエビフライもいけるぞ!」
「あーん」
「ほれ」
「んー! おいひい!」
「あなた達、よくそんなに食べるわねぇ」
そういうキャサリンさんが持つ皿には、料理がてんこもりだ。
「キャサリンさんには言われたくないと思います」
「私はいいのよ。ガタイがいいから」
「憑依型の機動式神を使った後って、異常に腹が減るんですよ」
「あらやだ。怖い。大丈夫なの?」
「結構やばいです。ごっそり体力を持っていかれた感じです」
「良くそんな状態で食べれるわね?」
「少しは回復したので。それよりおなか減って……」
「いっぱい食べなさい。私の筋肉セット食べる?」
「キャサリンのは偏り過ぎだろ」
隣にいたレンさんが突っ込みを入れた。
「筋肉を使った後は、タンパク質を取るのがいいのよ」
「疲れた時には糖分も必要さ。僕がスイーツを持ってきてあげよう!」
「タンパク質よ!」
「スイーツだよ!」
キャサリンさんとレンさんが言い合っていると、師匠がやってきた。
「よう。キャサリン、レン、返事を聞きに来たぜ」
「スカウトの件かしら?」
「あぁそうだ。せっかく見鬼の才能があるんだ。もったいねぇ」
「私、陰陽師は凄いって思うけど、私自信がなりたいかって言われたら違うわ。申し訳ないけど、辞退させて頂くわ」
「僕も辞退させて頂きます! 白の貴公子なので!」
「おいおい。お前ら才能あるんだぜ。秀一や琴音みたいになりたくないか? 俺様が本当の陰陽術を教えてやる」
「うーん。でもねぇ」
「秀一と琴音を見ろ。あぁ見えて戦う筋肉が付いてる。魅せる筋肉と戦うための筋肉。両方欲しくないか? 陰陽師は術だけ使っていればいいってもんじゃないんだ。肉体訓練は俺が結城ちゃんに口を聞いてやる。自衛隊式の訓練だ。もちろん配信オッケーだぜ?」
「むぅ……それは魅力的ね……」
「そしてだ。陰陽術を使うミステリアスな貴公子。モテると思わないか?」
「はっ!? ミステリアス貴公子! かっこいい! やります!」
軽いな!
「……仕方ないわね。レンちゃんが弟子入りして、私だけしないもつまらないわ」
「決まりだな。これから面白くなるぞ。こっちの拠点だと、秀一達が一強でつまらねぇことになってるからな。他の拠点には、真田と御影もいる。ド派手な戦いで撮れ高取っていこうや!」
「それって俺達のライバルを育てるってことでしょうか?」
「あ? そうだけど? 強力なライバルに仕立て上げてやるから。覚悟しておけよ」
「ライバル……」
切磋琢磨する相手は必要だ。ここでぬるま湯に浸かっていたら、戻った時どうなる? 同期達は遥か上に行っているかもしれない。その不安はこっちの世界に来てから薄々感じていた。
「師匠。最高です!」
「ギャハハハ! そう来なくっちゃな!」
「なんか燃えてきたぞ! なぁ琴音!」
「そうだね! 私ももっと強くなりたい! 師匠。私達も鍛えてくれますよね?」
「あ? あったりめぇだろ。ついでにそっちでコソコソ隠れてるアリサもな」
「げ! バレてる。近寄るんじゃなかったわ……」
「アリサよ。お主はまだ妖術の修行もあるぞ」
「最悪な状況……」
「狐様。手を貸して頂けると助かるんだけど……どう?」
「よかろう。まぁその前に休暇じゃな。特に秀一と琴音はボロボロじゃろうて」
「まぁそうだな。しばらく休んでろ。その間にこいつらを鍛えておくからよ」
「やった! 秀ちゃん! 約束忘れてないよね!」
「もちろんだ。一週間ご機嫌取りデートだな。でも明日はちゃんと休むぞ」
「流石にねぇ。よっし! 明日は秀ちゃんの部屋でゴロゴロしよっと!」
「相変わらず仲が良くて胸やけしそうね」
「私も素敵な筋肉の出会いが欲しいわ」
「筋肉の出会いってなんだよ……」
「あなたも少しは筋肉を鍛えなさい」
「いやだね!」
にぎやかになってきたな。
「琴音! 思いっきり遊びつくすぞ!」
「うん! 今から楽しみ!」




