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第28話 終わらない吸血鬼の襲撃

「秀ちゃん。無事で良かった! 吸血鬼と戦ってるって聞いて心配したんだよ!」


 ギルドに戻ると琴音が抱き着いてきた。


「俺が吸血鬼に負けるわけないだろ」


「わかっていても心配なの! 師匠は待ってろって言うし!」


「ったりめぇだろ。秀一。逃がしてねぇよな?」


「はい。吸血鬼は復活するかもしれないので、調伏しました」


「あ? 復活か。映画とか漫画だとそうだな。こっちの世界でも同じ設定ならありえるか」


「みんなが思い描くゲームのような世界なら、ありえますよね」


「で、どっちに送った?」


「浄土世界へ送りました」


「ふむ。浄土世界にいける奴なら問題ないか。よし! お前ら聞いたな。とりあえず危険は去った。吸血鬼化した奴も無事に戻った。今日はもう帰って休みな」


 吸血鬼襲撃事件は、これで終わりではなかった。

 次の日も別の吸血鬼が現れて被害者が出た。

 今度は師匠が徹底的に浄化し尽くしたけど、次の日も、その次の日も吸血鬼が出ると、みんな引きこもった。昼はまだ外に出て準備や訓練をするけど、夕方になる前に自室に戻り、配信する生活に変わってしまった。


 例え人型のモンスターだろうと、人間とは思えない容姿をしているなら、まだ戦えたかもしれない。でも吸血鬼はどうだ? 見た目は殆ど人間と変わらない。普通の人間なら忌避感――殺すのは嫌だって感じるだろう。

 俺と琴音だって、元人間だった存在と戦うのは、忌避感がある。……そこそこ薄れてきたけどな。


 この間の吸血鬼だってそうだ。ただ襲ってきただけなら、まだ覚悟を決めて倒せるけど、ああも人間臭いところを見せられたら迷ってしまう。だから斬るより術を選んだし、最後は調伏することを選んでしまった。

 調伏を選んだのは、なんだろう……デジャブも感じたからか? それともアシリアを通して別の何かを感じたのだろうか? 良くわからない。でも妙に引っかかる。陰陽師にとってこういうことは無視できない。だからきっと調伏したのは正しかったんだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 俺と琴音は朝から師匠に呼び出された。嫌な予感しかしない。


「秀一、琴音。まずい状況だ。進捗が悪い。このままじゃ襲撃に間に合わない」


「俺達も寝不足で調子が出ないです」


「お前らは甘ったれるなよ。それでも自衛隊のキツい訓練を受けてきたのか? 結城ちゃんに訓練つけてもらう?」


「頑張ります!」


「はい! 頑張ります!」


「昨日、わざと吸血鬼を逃がして、式神に後を追わせたよな。あいつらワーズの森に逃げ帰ったぞ」


「ワーズの森って高レベルなモンスターがいる所じゃないですか」


「そうだ。そのワーズの森の中に大きな古城があってな、吸血鬼達の根城になってたんだよ。しかも高レベルの吸血鬼がゴロゴロいやがった。低レベルな吸血鬼も含めると、数えるのが面倒なくらいいる」


「まさか、俺達だけで殲滅してこいとか……言わないですよね?」


「そのまさかだ。他の奴らはビビッて引きこもってるからな。無理だろ」


「師匠も一緒に来ますよね?」


「俺様はこう見えて忙しいんだよ。お前らに王立軍と交渉できんの?」


「……攻城戦にもなりますよね? 狐鈴をあてにしてます?」


「狐様は後が怖いからな。最初から考えてない。機動式神だよ。案内妖精を通じて享楽之神と交渉した」


「ええっ!?」


「防衛省の本音を言うとな。こっちの世界なら機動式神を実戦で試せる。なるべく使用して実践データを取りたいんだよ。ところが享楽之神は使用に制限をかけてきやがった」


「命の危険が迫った場合のみってやつですよね」


「あぁ。機動式神はバランスブレイカーすぎる。何より機械の兵器はこの世界に合ってないんだとさ。許可した癖に、都合が良すぎるぜ」


「吸血鬼の根城を襲撃するのって、イベント扱いになったってことですか?」


「そういうことだ。本来そんなイベントはなかったけどな。吸血鬼の根城をどうにかしないと、魔王軍襲撃に間に合わない。日々の配信にも影響が出ちまう。そうなると享楽之神も困るだろ。そこを付けこんで急遽イベントにでっち上げたってわけだ。これは防衛省の正式命令だ。魔王軍襲撃前に、機動式神の試用運転を兼ねて、吸血鬼の根城を殲滅してこい」


「了解です」


「メンバーはお前ら二人と狐様とアリサちゃんだ」


「準備でき次第出発します」


「んじゃよろしく。あ、そうそう、森に着いたら空を飛ぶなよ。次の作戦はお前らが肝だ。出来る限りモンスターを倒してレベルを上げてこい」


「了解です。囮も務めてきます」


「わかってるならそれでよし。油断はするなよ」

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