表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/40

第21話 配信者達

「おはよう。昨日の夜から、盛り上がっているわね」


 ギルドの食堂で琴音と朝食を取っていると、アリサさんが声をかけてきた。トレーの上にはサンドイッチと紅茶が乗っている。


「おはよう。盛り上がってるけどさ。やっぱりずるいよ。みんなユニークスキルとか魔法もらって……」


「そうね。私もそう思うわ。でも納得することにしたの。それよりなんであんた達が不満そうにしてるのよ」


「しょうがないってのはわかるけどさ、俺と琴音は子供の頃から修行した成果なんだけど」


「そうだよ! せめて武器とか防具とか欲しいよ!」


「刀を召喚できるじゃない」


「あの刀より使える武器か……」


「やっぱり武器はいらないかも」


「あの刀ってさ、こっちの世界の武器じゃないからかな? 使ってもスキルを閃かないんだよ。だからもったいないというか……。剣を使った方がお得な気がするんだ」


「あらら」


「それに俺達だけ何もなしってのが気持ち的に萎える」


「私なんて一般人なのに、何ももらえなかったんだから」


「あら、私から見たら、アリサちゃんもだいぶチートだと思うわよ」


 野太く、どこか艶めかしい男の声がした。


「ちょっといいかしらぁ?」


 近寄って来たのはガタイの良いオネェだった。革の軽装鎧がパツンパツンで、今にもはち切れそう。戦うというより、魅せるために鍛え上げた肉体だな。その筋肉の上に、ダンディで男前な顔が乗っている。しかしその口から発せられるのは、どこか悩ましいねっちょりした声だ。


「えっ? 誰?」


 アリサさんがちょっぴり怯えながら振り向いた。


「あら、私ったら。私はキャサリン。筋肉配信をしている乙女よぉ」


 筋肉配信ってなんだよ! オネェ系マッチョ乙女とか、パワーワードすぎるだろ!


「えっ! えっ! ア、アリサです。それで……何の用でしょうか?」


「ごめんなさいねぇ。アリサちゃんとも話したいんだけど、今日は早川君と近藤ちゃんに用事があるの」


「俺ですか?」


「ええ、お礼が言いたくてぇ」


「?」


「貴方達が凄すぎたおかげで、私達、スキルや魔法をもらえたでしょう」


「あぁ。昨日の」


「そう! バランス調整ってやつね! 私は肉体強化のスキル! 素敵でしょう!?」


 そう言ってキャサリンさんは、ボディービルダーみたいにマッスルポーズを取った。


「ふんぬ!」


 すると筋肉がボンっと膨れ、皮鎧がはち切れそうになる。限界ギリギリじゃないかな……


「す、凄いですね」


「そうでしょう!」


「おい。暑苦しいぞ」


 そう言ったのは、キャサリンさんと一緒に来た男装の女性だ。肩まである金髪に白いタキシード姿。胸ポケットには赤い薔薇を刺している。まさかこの格好で冒険に出てるわけじゃないよな?


「ふふ。嫉妬しちゃった?」


「あいにく僕は、筋肉に興味がないんだ」


「あら残念」


「やぁ。早川君。初めまして。僕の名前はレン。こう見えても女の子さ」


「初めまして。かっこいい系の女の子なんですね」


「違うよ! 白の貴公子さ!」


 どう違うのかさっぱりわからない。


「近藤ちゃんもアリサちゃんも初めてまして!」


「えっ! は、はい。初めまして」


「初めまして」


「そんなに緊張しなくていいよ! かわい子ちゃん達!」


「あなたこそ怯えさせてるじゃない。音量も抑えて。朝から騒がしいわね。ごめんなさいねぇ」


「い、いえ。近藤です。よ、よろしくお願いします」


「あなた達強いわねぇ。私、アーカイブを何度も見ちゃった。特に初めて陰陽術を使った回なんて、興奮してマウスを握りつぶしちゃったわぁ」


 どんだけ力んだんだよ!


「あ、ありがとうございます」


「僕も凄いって思った! でもちょっと嫉妬しちゃったな。まぁおかげで今の僕にはこれがあるんだ」


 レンさんは胸ポケットから薔薇を取り出した。


「ローズ・バインド!」


 すると薔薇の枝が伸びて、キャサリンさんに巻きついていく。

 呪文詠唱がない! これはスキルか!


「ちょっと何するのよ!」


 薔薇が見る見る内にキャサリンをがんじがらめしていく。


「ふんぬばぁあっ!」


 キャサリンさんが気合いを入れてマッスルポーズを取ると、薔薇がブチブチっとちぎれた。植物を操るスキルなのか? 野外で力を発揮するタイプだな。


「ごめんね! どうしても見せたかったんだ。許して欲しい」


「まぁいいわぁ。素直に謝るレンちゃんも素敵よぉ」


「僕を口説くなんて困った子猫ちゃんだね!」


 巨漢のオネェを子猫ちゃんとか、この人凄いな。


「口説いてないわよ! 口説いて欲しいなら、もっと筋肉をつけなさいっ!」


 オネェと貴公子の掛け合いが面白くて笑っていると、遠巻きに見ていた人達が集まってきた。


「昨日の配信見たぞ! あのデーモンと戦うのすげぇって思った! レベル五十相手に良く勝てたな!」


「まだまだ余裕ありそうだし、どんだけ強いんだよ!」


「局長って誰? 陰陽局とかってあるの?」


「えぇっと……」


 一気に話しかけられて、どうしていいかわからない。


「騒がしいのう」


 寝坊で遅れた狐鈴が現れると、一気に静かになった。


「狐鈴。妖気抑えて」


「静かになったであろう」


 狐鈴の妖気は圧倒的な力がある。そう、享楽之神の声を聞いた時のように。神様には到底及ばないけど、それに近い畏怖を感じてしまう。


「狐鈴様だ……」


「狐鈴様よ!」


「御神体だ!」


「な、なんぞ!?」


 狐鈴が妖気を抑えると、近づいて拝み始める人が数名いた。


「俺は聖女様派だ!」


「僕も!」


 そう言って琴音を囲み始める奴らも出てきた。琴音に触ったら許さんぞ!


「ちょっ、ちょっと!?」


「琴音ちゃん可愛すぎる!」


「琴音ちゃん、マジ聖女!」


「あの祈り、心洗われました。お布施したい!」


「聖女というか巫女じゃない?」


「あれ真似したけど、何も起きなかった。コツとかあるの?」


「えっ!? 真似はしない方がいいよ。日本の神様は怖いから」


「えっ……やめときます……」


 同じプレイヤー同士、こんなにしゃべったのは初めてだな。そう思ったその時、お知らせの音が鳴り響いた。


「えっ! イベントクエスト発生!?」


「都市襲撃クエスト!?」


 メニューを開いて確認すると、都市襲撃イベントの告知だった。

 別の神が絡んでるなら、イベントなんかじゃない。――本当の襲撃だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ