第20話 琴音が聖女!?
アークデーモンの死骸は、神威の刃に焼かれ、浄化された灰となって風に飛ばされていった。
「穢れなーし!」
琴音が辺りを霊視した。強い悪鬼は倒したと思った時こそ危ない。
「隠れてる気配なーし!」
「伏兵もいないな」
「秀ちゃん! イエーイ!」
「イエーイ!」
琴音とハイタッチ。
「終わったの?」
アリサさんがまだ不安そうだ。
「終わったよ。ただ、跡形もなく倒しちゃったから、討伐の証拠がないんだよな。この街のギルドってさ、うちらのギルドと違って討伐記録が見れないと思うし、レッサーデーモンの死体だけで納得するかな……」
「それは大丈夫なんじゃない?」
アリサさんが神殿に空いた大穴を指さした。
「多分街から見ても、神殿から大きい光が出たのが見えたと思うし、結構揺れたし、何か凄い戦いがあったくらいわかると思う」
「だといいな……」
「きっと大丈夫よ。神殿壊しちゃったのは仕方ないとして……なんか言われたらどうしよう」
「素直に謝ろう」
「……そうね。お尋ね者にはなりたくないわ」
「ねぇ秀ちゃん。証拠なくなっちゃうけど、早くレッサーデーモンの死体を浄化しちゃおう。アレは良くないの」
「……そうだな。報酬より優先すべきだ」
「掛けまくも畏き八百万の神々の御前に申さく。天地清浄なる理のもと、此の地に満つる穢れを祓い給え、清め給え。罪穢れ悉く消え失せ、光満ちる道と成らんことを。神々の御力を奉りて、禍事・罪・穢れを祓い給い、鎮め給え。恐み恐みも申す」
レッサーデーモンの死体が清らかな塩と化して、静かに崩れ落ちた。
琴音の祝詞に気を取られていたら、教会の入り口に武装した男達がいた。街に集まっていた冒険者達か? その後ろには聖職者の様な壮年の男もいた。気になって様子を見に来たのか、それとも援軍だったのか?
「せ、聖女様……」
清らかな空気の中、レッサーデーモンの死体を塩に変えた琴音。そこへ丁度日の光が大穴から差し込み、琴音を上から照らしていた。
冒険者達だけじゃなくて、聖職者も両膝をついて祈っているんだけど……
「秀ちゃんどうしよう? 聖女様だって? うへへ……」
「その照れた顔を見せていいのは俺だけ」
「もう秀ちゃんったら」
もの凄い誤解が生まれたが、上手く利用させてもらおう。
「アークデーモンとレッサーデーモンは聖女様の力によって浄化された」
俺がわざとらしく言うと、膝をついていた者達がハッと顔を上げた。
「この教会もアークデーモンの瘴気に穢されていたが、聖女様の神聖魔法によって浄化された」
「……まるで聖域にいるようです」
聖職者は感極まって涙を流した。
「残念ながら先にデーモンに挑んだ冒険者達は天に召された。だが安心して欲しい。彼らの魂は聖女様によって天界へと導かれた」
「おぉ……」
「ただ……激しい戦闘が故、神殿は傷ついてしまった。すまない。許して欲しい」
冒険者達の懇願めいた視線が聖職者に集まる。
「神殿をお救い下さり感謝致します。デーモンとの戦いで壊れてしまったのは、仕方ないことです。どうぞお気になさらないでください。何よりこの聖域のような空間が素晴らしい。以前より良い神殿になるでしょう」
「そう言って頂けると助かります」
何とか切り抜けたな。
「秀ちゃん、秀ちゃん」
琴音が小声で話しかけてきた。
「どうした?」
「赤ウルチャが凄い事になってる」
「……後で確認な」
厳かな雰囲気が台無しだよ!
◇◆◇◆◇◆◇◆
「こん狐鈴! バーチャルアイドルキツネの狐鈴じゃ。初めましてじゃな! 訳あって今日からデビューする事になった。皆、よろしく頼むぞ」
今夜は狐鈴のデビュー配信だ。初配信だというのに、全然緊張していない。むしろ若干ふてぶてしい。
「秀一やアリサの配信で見たことあるかも知れぬが、こう見えて我は狐の式神じゃ。普段は八千代稲荷神社で御神体として祀られておるぞ。皆参拝に来るがよい。まぁプレイヤーになったので、しばらく戻れぬがな。神社には我のグッズが売っておるぞ。まぁ可愛くはないが……そうじゃのぉ……。今度このアバターのグッズでも作るかの」
デビューと同時にグッズ販売とか普通の新人じゃない。まぁ確かに神社には狐鈴を模した狐の絵馬やお守りとか売ってるけどさ。
狐鈴の初配信は、同時視聴者数十二万人を超える大ヒットとなった。
アリサさんが言うには、個人のデビュー配信で、同時視聴者数が十万人超えるなんてありえないんだと……。まぁ俺等のチャンネルだけじゃなくて、アリサさんのチャンネルでも宣伝したからかな? 特にアリサさんの影響力は凄い。流石はトップアイドルのチャンネルだ。
今夜は狐鈴のチャンネルだけじゃなくて、どのチャンネルも、特別にもらったスキルや魔法のお披露目で賑わっていた。




