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第16話 現代進行形の神話

「享楽之神よ。我も参加できぬか?」


 狐鈴がストーンサークルに向かって呼びかけた。

 転移できる謎の装置としか思ってなかったけど、神と交信できる物でもあるのだろうか? そういえば、ストーンサークル自体が、祭祀さいしを行う場所とかだっけ?


「知り合いに白焔稲荷尊びゃくえんいなりのみことがいるのじゃが」


 狐鈴がそう言った瞬間。案内妖精が消えた。


「えっ! ちょっと配信止まっちゃうじゃない! どうしちゃったの! 出てきなさいよ!」


 アリサさんが慌てて案内妖精を呼び出すけど返事がない。

 これは配信できない何かが起こるんじゃないか?


「初めまして、狐鈴様。案内妖精のノコと申します」


 狐鈴のすぐ側に、キツネの耳と尻尾を持った妖精が現れた。


「出たな。西洋被れの式よ」


「三名の脱落者が出ましたので、ご参加いただける状態となっております」


「ほう。この間の奴らか」


「詳細につきましてはお聞きになりませんよう、何卒お願い申し上げます。また、くれぐれも他の神様のご介入は、ご遠慮いただきたいと、伝言をうけたまわっております。遠くない将来、地球とは異なる場へとおもむくこととなっております故」


「ほう」


「その際、皆々様は、無事に元の世界に戻れましょう。報酬としてこの世界でお手に入れられた財宝はもちろん、スキルや魔法も元の世界でお使いいただけます。精霊は地球にもおりますので」


「良かろう。上には手を出す必要ないと伝えておく。そちらもそれで良いか?」


「ご配慮いただき、誠にありがとうございます。ギルドにお部屋をご用意いたしましたので、今後ご自由にお使いくださいませ」


「礼を言う」


「ただ、恐れながら条件があります」


「聞こうか」


「ライブスフィアにアカウントを作りましたので、配信をお願い申し上げます」


「もちろんじゃ。享楽を集めてみせようぞ」


「期待しております。狐鈴様。お手数ですが、ステータスウィンドウにて魔法のご確認を、お願い申し上げます」


「ふむ……この魔法は!」


「特殊魔法マジカルマジックでございます。享楽之神様からの贈り物です。狐鈴様は魔法少女に憧れていると知り、即興でお創りになりました」


「クックック、わかっているではないか! ものは相談なのじゃが、アリサにも使わせてもらえぬか?」


 その瞬間アリサさんがビクッと震えた。そこまでする勇気は流石にないらしい。


「……解放条件はまだ秘密でございます。他の神様のご介入を防ぐ目的で、特別に狐鈴様へお渡し致しました。皆々様もくれぐれも口外なさらぬよう、お願い申し上げます」


「ふむ。本当に口止めだけか?」


「……恐れ入ります。バランスを保つためでございます。秀一様、琴音様、そしてアリサ様は他の配信者より、強さが逸脱いつだつしております。これでは一部のチャンネルだけが流行ってしまう恐れがあります。どのチャンネルでも享楽を集めて頂けねば困ります故、御三方以外の配信者に、特別なスキルや魔法を配布することになりました。狐鈴様は十二分にお強いのですが、特別な計らいをさせて頂きました」


「そういう事か」


「ええっ! 私そんなに強くない! 強い魔法とか欲しいんだけど!」


「アリサ様は狐鈴様から直々に妖術を習っておられます。既に他の配信者が追い付けない程の力をお持ちです。それにいくら我々が強いスキルや魔法を用意した所で、師がいなければ極めるまで時間がかかるというもの。アリサ様の有利は揺るがないでしょう」


「アリサよ。他の配信者からすれば、お主はずるいと思われる側じゃ。やっかみを回避するためにも甘んじて受け入れた方がよい。炎上は嫌じゃろ?」


「それはそうだけど……」


「我が妖術の真髄を教えてやろう。そんじょそこらのスキルや魔法とは格が違うぞ。いずれ妖術ではなく、狐の神術になるじゃろうて」


「どう言う事?」


「妖狐は千年生きれば神となる」


「ええっ!」


「いずれ八百万やおよろずの神々の末席に加わるつもりじゃ。……待てよ。配信で我も信仰心を集めれば神格化も早まるか……。偶像崇拝。ふむ。アイドルにでもなるか」


「それなら妖術を教えてくれるお返しに、アイドルのことを教えるわよ。まずはユニットでも組もうかしら? 私のチャンネルから宣伝もできるし」


「良いではないか! Win-Winという奴じゃな!」


「皆々様。興が乗っているところを申し訳ないのですが」


「まだあるのか?」


「はい。失礼ながら今までの話は、これから話すことの建前でございました。他の方には建前の方で接して頂きたいと、お願い申し上げます」


「……ふむ?」


「実は現在、想定を超える事態が発生しております」


「想定を超えるじゃと?」


「はい。享楽之神様がこの世界を創造した際、愉悦之神様がお手を貸していただけたのですが、それは謀だったのです」


「どう言う事じゃ?」


「愉悦之神様は以前享楽之神様といさかいがありました。この度、愉悦之神様は謝罪の為に、お力を貸してくださったのですが、それは偽りだったのです」


「なんか……まるで神話みたいだな」


「みたいじゃなくて神話だよ! 秀ちゃんどうしよう。凄いことになってるよ!」


「享楽之神様はお優しい方です。皆々様に傷ついて欲しくない故に、シールドの付与等、配慮をしてくだされました。ですがお優しい故に、敵役となるモンスターの創造にお手をわずらわせておられました。そこで愉悦之神様がお手を貸して頂いたのですが、皆々様を召喚する際に凶悪なモンスターや魔族を創造し、この世界を侵略し始めたのです」


「ふむ。我らにそのモンスターや魔族を退治せよと」


「その通りでございます。配信者の皆々様には、バランス調整という名目で、対抗できる力を授けることになりました。しかし使いこなせるまで時間がかかりましょう。そこで恐怖を広めないためにも、力ある者のみで、ご内密に排除して頂きたいと、お言葉をたまわっております」


「えっ!? ちょっと待って! 私陰陽師とかじゃなくて、一般人なんだけど!」


「ご冗談を。見鬼であり、狐鈴様のお弟子様が一般人とは言えますまい」


「ええええ……」


「アリサさん。ようこそこっち側へ!」


 琴音がアリサさんに向けて親指を立てたけど、ガン無視された。

 俺はそんな琴音をよしよしと慰める。


「無理無理無理! 神様と戦うなんて無理よ!」


「不遜な。愉悦之神様と戦うのではありません。愉悦之神様がお創りになった凶悪なモンスターや魔族と戦うのです。倒し続けていれば、いずれ愉悦之神様も諦めましょう」


「だとしても! そんな無理だよ……」


「ごめん。アリサさん。巻き込んじゃって」


「アリサよ。どの道この世界に来た以上、逃げることなどできぬ。何も知らぬまま、モンスターに殺されるよりマシじゃろうて。今必要なのは覚悟を決める時間じゃよ」


「……そうかもしれないわね。少し時間が欲しい」


「さて。早速ですが、ここから西に行った街に、一般プレイヤーにはまだ荷が重いクエストが発生しております。お手数ですが、クエストの受理をお願い致します」

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