↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/210

第17話 陰陽師が挑む、危険すぎる異世界クエスト

 俺達はアストラルゲートから西に向かって移動を始めた。


 風に揺れる草原は、まるで海のようにどこまでも広がっていて、遠くに街を囲む城壁らしきものが小さく見えた。


 魔法で空を飛べば街まであっという間だと思うけど、俺達はゆっくりと進んだ。日本じゃ味わえないような大草原を、散歩してみたかったのもあるけど、アリサさんが覚悟を決める時間を作りたかった。

 

 街のすぐ側には小高い丘があり、その頂にひときわ目立つ教会が建っていた。白い外壁に群青色の屋根、天を指す尖塔、そして鐘楼が光を受けてまばゆく輝いている。

 教会はまるでこの街を見守るように佇んでいた。

 

 ファーミルの森側には入口がないらしく、城壁に沿って回り込む形になった。


 街の入り口で身分証でもあるギルドカードを提示して中に入ると、白い壁の建物が並び、屋根は教会と同じ群青色で統一されていた。何か風習とか宗教的な意味があるのだろうか?


 狐鈴の案内妖精は、詳しいことは街に行けばわかると言っていた。絶対あの教会に何かあるな。


「琴音……」


「うん。普通じゃないね」


 一見平和そうな街に見えるが、人々の顔は明るくない。それにこれは……


「どういう事?」


 アリサさんが首を傾げた。


「ふむ。これは妖気か? それとも悪魔とやらの気配か?」


「えっ!?」


「ねぇ、秀ちゃん。あれなんだろう?」


 少し大きな建物に武装した男女が慌ただしく出入りしていた。


「行ってみるか」


 建物の軒先には、剣と杖が交差した看板が吊り下がっていた。冒険者ギルドの看板だな。

 中を覗くと冒険者らしき人達がたくさんいた。ガラの悪い人も結構な割合でいる。

 

「ここに入るの?」


 アリサさんが、すごく嫌そうな顔をした。現代日本人の感覚だったら絶対近寄りたくない。


「いかにも何か起こってそうだし、入るしかないと思うな」


「例のクエストって絶対ここだよね」


「琴音ちゃんは怖くないの?」


「私強いし!」


「……そりゃそうね。琴音ちゃんだったら、大人が数人がかかりで襲ってきても、返り討ちにしちゃいそうね」


「多勢できたら、式神出しちゃうし!」


「琴音、油断するなよ。ここは剣と魔法の世界だぞ」


「もちろん。油断するわけないよ。お? 心配してる?」


「当たり前だろ。まぁ信頼してるけどさ、こっちの人間がどれくらい強いかまだわからないからな」


「んふふ。嬉しいな。何かあったら護ってね!」


「もちろんだ!」


「なんでいつでもどこでもイチャイチャできるの? バカップルなの?」


「カカカっ! 羨ましいのかえ?」


「そ、そんなんじゃないわよ! ちょっとイラッとするの!」


「あの二人は年がら年中、たわむれておるわ」


 冒険者ギルドの中は、俺達のギルドと比べると、汚くてぼろぼろだった。本来はこっちの方が当たり前なのかもしれない。俺達のギルドは近代的だし、個室なんて世界観が違う。


「えっと……冒険者の方ですか?」


 カウンターに行くと、受付のお姉さんが訝しげな目を向けてきた。俺達が若すぎたから?


「はい。これ冒険者カード」


「えっ! レベル二十五!?」


 受付のお姉さんが、冒険者カードと俺の顔を交互に見比べた。


「ぶはははっ! その歳で二十五だと!? ありえねぇな!? レベル詐欺じゃねぇのか!?」


 大男が威嚇のためか、肩をいからせて、大きな足音を立てながら近づいてきた。

 トラブルは勘弁だって思ったら、狐鈴が軽く攻撃的な妖気を放った。

 かなり手加減された妖気だったけど、それでも体力と気力を奪われるような衝撃波が、屋内で吹き荒れた。

 俺や琴音は平気だけど、至近距離でくらったアリサさんは、足をガクガクと震わせていた。


「すまぬな」


「……勘弁してよ」


「じきに慣れる」


 俺達以外はまともに立っていられないようだ。特に妖気をまともに受けた大男は、尻もちをついて恐怖で顔が歪んでいた。


「ま、魔族なのか……」


「失礼な小僧じゃな。我は魔法少女じゃぞ」


「ま、魔法使いか?」


「して小僧よ。我の妖気を浴びて平気なあの者達を見てどう思う?」


「わ、悪かった! ただ者じゃないんだな……ですね」


「わかれば良い。さて、受付の人よ……」


 受付のお姉さんは気絶していた。



 狐鈴が回復の術をかけると、受付の人が目を覚ました。


「……ひっ!」


「人の顔を見るなりなんじゃ。取って食うぞ」


「怖がらせんな」


「お茶目なジョークじゃて」


 狐鈴じゃまた怖がらせるので、俺が話を進めよう。


「ここに着いたばかりでよくわかってないんだけど、何でこんなに賑わってるんだ?」


「え? デーモン討伐に来たのではないのですか?」


「街が見えたから寄ってみたんだ」


 本当は神に仕える妖精からこの街を教えられたとは言えない。


「えっと、どちらから?」


「フェルミアだよ。ファーミルの森を抜けて来た」


「えっ! あの森を!?」


「そうだけど?」


 受付嬢が若干引いてる。まぁ確かに森の中央部には、高レベルなモンスターが多かった気がするけど……


「そ、そうですか……運が良かったですね」


「そうなんですか?」


「ええ。それよりも本題に入りましょう。村の近くに大地母神の神殿があるのですが、最近になってデーモンが住み着いたのです。しかも中級デーモンです!」


 やばい。全然わからない。デーモンって悪魔のことだよな? こっちの世界で中級デーモンってどれくらいの強さなんだ?


「神殿って丘の上にあるでっかい建物だよな? 大丈夫なのか?」


「今のところは。ただ月に一度、街の人間を一人、生贄に差し出せと要求してきました。応じなければ、月に二人さらっていくと……」


「ここに集まってるのは、デーモンを討伐しに来た人達か」


「はい。国の騎士団や魔導士団は動きが遅いですから……。早期解決できればと思って、冒険者に討伐依頼を出したのです」


 冒険者達は生贄の代わりってことか? そもそも代わりになるのかも不明だ。デーモンの目的が生贄ではなく、この街を恐怖で弄ぶことかもしれない。


「先ほどの魔力、凄腕の冒険者と見受けました。どうぞお力をお貸しください」


 どちらにしても俺達は引き受けるしかない。こっちの世界でも俺達陰陽師の仕事は、人を助けることだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。