第13話 陰陽師と式神、アイドルの配信に出る
「こんアリサ~」
「こん? お主、狐だったのか?」
「今夜は特別ゲストがいるわよ!」
「なんだこの式は? なぜ黙っている? 焼くぞ?」
かわいそうに案内妖精の顔色が真っ青だ。
「狐鈴さん、少しだけ静かにして欲しいです」
「ふむ。純米大吟醸酒の礼に黙っていてやろう」
「このメチャクチャ可愛い狐耳の人が狐鈴さん。オーガ達に囲まれた時に、私達を助けてくれた恩人よ」
昨日のアーカイブを見て気づいたんだけど、ちゃんと式神もアバター化されていた。狐鈴も元の特徴が良く出ている。
「人ではない狐じゃ。それに結果的に助けたが、我は秀一の命令に従ったまでの事。善意ではないぞ」
「それでもありがとう」
「ふむ。その心は受け取っておく」
「すっげ! 赤チャが連打されてる!」
「虹チャになってるよ!」
課金してコメントをすると、その金額に応じて色がついて目立つ。高額な色ほど、配信者に読んでもらいやすく、目立つ色になる。アリサさんの配信は様々な金額のコメントが虹の様になって流れていく。
この数分だけで、どれだけの金額が動いてるんだよ!
「そして、パーティーメンバーの秀一君と琴音ちゃんね」
「秀一です!」
「琴音です!」
「「二人合わせて、しゅうことです!」」
「少し前から思っていたのじゃが、お主らのその挨拶、どうにかならんのか?」
そんなにダメかな。結構気に入ってるのに。
「ねぇ、狐鈴さん。今ね。ネットで配信してるの」
「知っておるぞ。ライブスフィアであろう。我を時代遅れだと思うなよ。……カメラがないが、もう始まっているのか?」
「うん。この妖精がカメラでマイクなのよ」
「なぬ! この式か! と言うことは、もう見られておるのか?」
「うん。今は……三万二千人くらい同時視聴されてるよ」
「は、恥ずかしいのぉ」
「あわわわ! 虹チャ止まんないよ!?」
「今夜はみんなの質問を受け付けるわよ! 最初は早川君達のことね。陰陽師って本当?」
「え、えーと。陰陽師のバイトしてます。詳しいことは言えないです。厨二病患者だと思ってください」
「答えになってないってコメントがいっぱいきてるけど、あんまりしつこいと公安に監視されちゃうわよ?」
「されない。されない」
「続いて狐鈴さんって何者?」
「我か? 我はそうさのぉ。長きを生きる妖狐じゃ。昔、大暴れしておった時にな、秀一の先祖に退治されかけたのじゃが……、謝ったら許してくれての。礼に早川家を七代守護することにしたのじゃ」
「それで式神になってるの?」
「そうじゃ。普通なら式になどならん。例外中の例外じゃぞ」
「そうなんだ。じゃあ早川君達とは長い付き合いなのね」
「うむ。秀一の母君は式の使いが荒くてな。秀一のオシメを代えた事もあるぞ」
「それ今言わなくても良くないか!?」
「ベビーシッターまでしてたの!?」
「まぁな。おねしょネタは鉄板であろうが……黙っておくか」
くっ、そのにやけた顔がむかつく!
「今の姿は仮の姿なの?」
「古来より妖狐は美女に化けて人を迷わすものじゃ」
「むぅう」
琴音の目がすぅっと据わる。
「琴音よ安心せい。お主には期待しておる。この意味わかるな?」
「まっかせて!」
ニッコニコになる琴音。分かりやすい……
「狐鈴さんはずっと出ていられるの?」
「うむ。送還されなければ、出ずっぱりじゃ」
「いつもは異界? にいるの?」
「一応土地神に就職しておるぞ。普段は神社でネトゲ三昧じゃ!」
「えええっ!?」
「三日程徹夜していたらな……秀一達が大変な事になっておった……。びっくりしたわい……」
狐鈴はどこか遠くを見て誤魔化した。
「七代守護するんじゃなかったの!?」
「イベント期間でな……。それに秀一達に害を与える人間なんて、ほぼいないじゃろ? しばらく陰陽師の仕事も来ていなかったしな。油断しておったわい。この場を借りて謝ろう。すまなかった」
「はぁ……ん? ちょっと待って! 私を狐鈴さんと一緒に神社に送還できる?」
「幽世を経由するのでな。普通の人間なら亡者に囚われ、戻って来れぬぞ」
「あの世行きって事?」
「うむ」
「上手い話なんてないかぁ」
「それができたらすぐに帰ってるよ」
「秀一よ。お主の人造式神はどうだ? あれは人造故に幽世が住処ではないはずじゃ」
「霊域だからダメだよ」
「ふむ。人が造り出したまがい物の空間か」
「ねぇ。人造って?」
「俺が召喚した朱雀と琴音が召喚した白虎はレプリカ、つまり模造品なんだ」
「本物じゃないんだ」
「そう。人の手で作った式神」
「現代で本物の式神を使える陰陽師って少ないんだよ」
「へぇ。じゃあ早川君って凄いんだ」
「そう! 秀ちゃんは凄いんだよ!」
「召喚した刀も人造式神だったりする」
恥ずかしいので誤魔化す。
「刀も式神なの?」
「刀身は本物なんだけど、柄が――刀を握る部分が人造式神なんだ。だから召喚できて……」
「秀ちゃんストップ!」
琴音がコメントを指さしたけど、物凄い速さで流れている。でもわかる。局長が怒ってるんだろ……まずいまずい。機密事項だった。
「あー。この質問は終わり! ねぇ。狐鈴さんも一緒に冒険できないかな? その方が早川君達のチャンネル、絶対人気出ると思うわ!」
アリサさんが強引に話題を変えてくれた。助かったよ。
「ふむ。昼間なら構わぬぞ。夜はネトゲ仲間がいるのでな」
「ネトゲ廃人すぎる……」
「まぁグランドクエストとやらも、早々にクリアしてもらわんと困る」
「まさか……」
「秀一と琴音もネトゲ仲間じゃ! クックック。たまに秀一達のチャンネルに、我のキャラが映っておったぞ」
「私のネトゲ配信も見て欲しいな。中々の廃人っぷりよ?」
「お主もか?」
「戻ったらゲームを一緒にやりましょ! 狐鈴さんがやってるゲーム知りたいな!」
「良いぞ。では杯を交わすとするか」
「そろそろ、お酒を開けちゃいますか!」
その後は晩酌配信となった。お酒が飲めない俺達は、ちょっとついていけなかった。




