第9話 再び森へ
「はぁ……はぁ……ちょっと待って……」
「秀ちゃんストップ!」
「あっ! ごめん。いったん休憩にしよう」
そう言いつつ俺は周囲に鑑定スキルを使った。モンスターがいたら反応するはずだ。うん、近くにいないな。
「あんた達……どんだけ体力あるのよ……」
今日は昨日に引き続きファーミルの森に来ている。ただし、なるべく戦闘は避けて、奥へ奥へと進んでいる。昨夜案内妖精からイベントの告知があったからな。
「正午まで後一時間か」
「イベントかぁ。なんかオンラインゲームみたいだね」
「そうだなぁ。やっぱりゲームの中じゃないかって、勘違いしちゃうよ」
俺はメニューを開き、イベント内容を確認すると、こう書かれていた。
『初心者応援イベント開催!』
『冒険者の皆さん、異世界の生活には慣れましたか? このたび、初心者向けの特別イベント、ビギナーズ・トレジャーハントを開催します!』
『イベント期間中、指定されたフィールドで、期間限定の宝箱がランダムで出現! 中には初心者に嬉しいアイテム(武器・防具・魔導書・スキル書等)が入っているぞ!』
『運が良ければレアアイテムが手に入るかも?』
『開催期間は明日の正午から三日間』
『宝箱出現場所は各ギルドがある街と、サンリット草原、セリーン草原、ウィスパリング草原、ノルディアの森、ファーミルの森、ムルグの森。宝箱のヒントは案内妖精が教えてくれるぞ!』
『初心者でも気軽に参加できるイベントなので、是非この機会に冒険を楽しんでください!(配信ルールは厳守してください)』
俺達の拠点から近いのは、セリーン草原とファーミルの森だ。街は競争率高そうだし、プレイヤー同士のトラブルを避けるために、俺達は森の奥地へ行くことにしたんだ。
「ここまで来たら大丈夫じゃないか? そろそろモンスターを倒していくか?」
「そうだね。宝探しだけじゃ、配信も地味になっちゃうしね」
「なんだあれ?」
「……木? なんか動きそう」
大きな木。しかしその樹皮が顔のように見える。目を凝らして鑑定スキルを発動すると、ドレッドウッド・レベル12と表示された。
「結構レベル高いな」
「森の奥だしね。なんか動きそうにないし、遠距離から火炙りにしちゃおうか?」
「いいね!」
「絶対動くと思うけど?」
アリサさん、フラグ立てないでくれ!
「「「輝き燃えたる火の精霊よ。我に集いて力を示せ!」」」
俺達の声が重なり、まるで合唱のようになる。
「「「ファイアーボール!」」」
三つの火球が膨れ上がり、森の中を照らしながら、ドレッドウッドに向かって突き進み、着弾した瞬間、轟音を響かせ爆発した。
ドレッドウッドの樹皮が焼け、焦げた木の匂いが立ちこめる。
楽勝だと思ったその瞬間、ドレッドウッドが咆哮を上げた。
「グォォォ!」
鋭い木の根が地面から飛び出し、俺達に襲い掛かった。
「きゃああ!」
俺と琴音はとっさに避けれたが、アリサさんが木の根に突かれ、後ろに吹っ飛んだ。
アリサさんのシールドゲージが一気に半分まで減る。……まずい!
「うおおっ! 火の精霊よ。紅き矢となれ! ファイア・アロー!」
俺は炎の矢を放ちながら距離を縮め、琴音はアリサさんを庇うように立ちはだかり、回復魔法を唱えた。
「光の精霊よ。癒しの光となれ! ヒール!」
ぐんぐんとアリサさんのシールドゲージが回復していく。
それを目の端で確認しつつ、炎の矢で怯んだドレッドウッドに迫る。
「クレセントカット!」
ここまで来る前に覚えた新スキルだ!
弧を描くような斬撃を放つと剣が光り、ドレッドウッドがガードしようと伸ばした枝を斬り飛ばす。返す剣で再びクレセントカットを放つ。
深追いはしないでいったん飛びのくと、さっきまでいた地面から、槍のような根が突き出した。
後ろからキレ気味の詠唱が聞こえたので、すぐさま横に飛ぶ。
「ファイアーボール!」
戦意は失ってないみたいだ。
「あっぶねー!」
「あんたなら避けるでしょ!」
「一言あってもいいと思うぞ!」
「グルォオオ!」
「しぶてぇ!」
俺は再び突っ込み、ドレッドウッドに斬撃を放った。
「クレセントカット!」
ドレッドウッドは斬撃を受けながらも、焼け焦げた体を揺らし、腕を振り下ろして反撃してきた。
再びスキルを放とうとしたその瞬間、新たなスキルを閃いた!
俺は大きく振りかぶり、魔法を唱える時のように剣に魔力を注ぐ。
「ファイアブレード!」
剣が紅蓮の炎に包まれ、燃え盛る斬撃がドレッドウッドの幹を切り裂き、炎が裂け目に流れ込んだ。
「グォォォ……」
遂にドレッドウッドは動かなくなり、炎に包まれながらゆっくりと崩れ落ちた。
「しぶとかったな」
「あんたも大概だわ。琴音ちゃん、ありがとうね」
「どういたしまして。咄嗟にヒールかけたけど、シールドってヒールで回復するんだね。ポーションでも回復するみたいだし。変なの」
「確かに……普通なら怪我を回復する魔法よね」
「やっぱりてシールドって、私達だけにあるのかな? 配信の為の配慮ってやつ?」
「そうかもね。享楽之神様がシールドにも効くようにしてくれたのかな?」
「最初からそういう仕様かもしれないそ。この世界を創り、俺達を転移させたんだから」
「なるほどねぇ」
道具屋の店員も、シールドのことを知らなかった。もしかしたらこの世界って俺達が思っているほど、ゲームのような世界じゃないのかもしれない。
メニューやステータスだって怪しい。イベント告知もそうだ。あった方が視聴者が楽しめる。それって神力を集めるためのシステムなのかもしれない。
「……おっと、火を消しておくか」
三人で火がくすぶってる所を、アイスジャベリンを放っていたところ、アクアボールの魔法を閃いた。閃きシステム便利すぎ!




