第22話 蠢く影と消えた転校生
学園祭の熱気も冷めやらぬまま、学園には穏やかな日常が戻ったかに見えた。しかし——。
「ねぇ、聞いた? あの転校生、突然いなくなったんだって……」
そんな噂が、校内を駆け巡っていた。
ハーブは教室で本をめくりながらも、その話が耳に入る。
(転校生……? そんな奴、いたか?)
不思議に思いながらも、特に気に留めることなく過ごしていた。
だが、昼休みになり、玲華が険しい表情で近づいてきた。
「ハーブ、ちょっといい?」
「ん?」
玲華は周囲を気にしながら、小声で囁く。
「この学園で“行方不明”になった生徒、これで三人目よ」
「……三人?」
「それも、みんな転校生。わずか数日で姿を消しているわ」
玲華の言葉に、ハーブは違和感を覚えた。
学園祭が終わったばかりのこの時期に、転校生が消える……? 偶然にしては出来すぎている。
その時——。
「失礼するよ、ハーブ」
教室の扉が開き、穏やかな笑みを浮かべた教師が姿を見せた。
彼の名は鷹森。この学園に最近赴任してきたばかりの教師だった。
「君に、少し話があるんだが……」
ハーブは目を細める。
「私に、話?」
「そうだ。ちょっと職員室まで来てくれないか?」
教師の頼みに応じる形で、ハーブは教室を後にした。
玲華と雪奈が不安そうに見送る中——。
「(……何か、嫌な予感がする)」
玲華はそう呟いた。
消えた転校生の謎
職員室ではなく、鷹森はハーブを学園の屋上へと連れて行った。
「ハーブ……君に聞きたいことがある」
「……何の話だ?」
「“異世界”という言葉に、心当たりは?」
ハーブの目が鋭くなる。
「……どういう意味だ?」
鷹森は微笑を崩さず、静かに語り始めた。
「私は“調査員”としてこの学園に来た。異世界の影響が、この学園に及んでいないかを確かめるためにね」
「……」
「そして、君の存在が気になった。黒鋼会との戦い——普通の生徒が持つはずのない力を、君は使った」
ハーブは黙って相手の言葉を聞く。
(この男……ただの教師じゃない)
鷹森はさらに続ける。
「最近、この学園で転校生が消える事件が相次いでいる。その理由、君は知っているか?」
「いや、知らん」
「そうか……」
鷹森は微かに目を細めた。
「なら、一つだけ忠告しておこう。……近いうちに、この学園で“何か”が起こる。気をつけたまえ」
ハーブはその言葉の真意を測りかねながら、屋上を後にした。
雪奈と玲華の想い
その頃、雪奈と玲華は校舎の廊下で立ち話をしていた。
「……ねぇ、玲華さん」
「何?」
雪奈は少しだけ言いにくそうにしながら、それでも意を決して言葉を紡ぐ。
「ハーブさんって……何か秘密を抱えていると思いませんか?」
玲華は少し驚いた顔をしたが、すぐに表情を引き締める。
「……思うわよ。でも、あいつが話さない限り、無理に聞き出すつもりはない」
「それは……そうですけど……」
雪奈は小さく俯く。
玲華はそんな彼女の様子を見て、思わず問いかけた。
「……雪奈は、ハーブのこと、どう思ってるの?」
「えっ……」
雪奈は顔を赤くしながら、小さく口を開く。
「わ、私は……ただ、心配で……」
玲華はふっと笑った。
「ふふ……そうね。私も、ハーブのことは気になるし、放っておけない」
「……」
「でも、あいつが何かを抱えているなら、きっと自分で解決しようとするはずよ。……だから、私たちはそばにいればいいんじゃない?」
雪奈は玲華の言葉に、少しだけ安心したような顔を見せた。
しかし——。
その裏で、“新たな影”が動き出していた。
新たなる敵、暗躍——
夜——。
学園の外れにある、誰も使われなくなった旧校舎。
その中に、黒いコートを纏った人物が立っていた。
「——やはり、この学園に“異世界の者”がいるか」
静かに呟く声。
その目は、まるで獲物を見つけたかのような冷たい光を放っていた。
「“黒鋼会”はただの愚か者どもだったが……今回の獲物は、面白そうだ」
不気味な笑みを浮かべ、彼は闇の中へと消えていった——。
ハーブたちの日常に、新たな脅威が迫る——!
次回予告
転校生が次々と消える事件。
新たな教師・鷹森の正体。
そして、新たな敵の存在——!?
次回、第23話「静かなる侵略」
ハーブの学園生活に、これまでとは異なる影が忍び寄る——。
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