第20話 暗躍する影
学園祭が賑わいを見せる中——。
各クラスの出し物や模擬店が軒を連ね、通路は来場者でごった返していた。舞台ではダンスやバンド演奏が披露され、生徒たちの歓声が響いている。
そんな華やかな空気の中、ハーブはふとした違和感を覚えた。
(……何かがおかしい)
人混みの中に、異様な雰囲気をまとった存在が紛れている気がする。
背後に感じる鋭い視線。
まるで獲物を狙うような、冷たい殺気——。
「……」
ハーブは何気ない素振りをしながら、周囲を確認した。
(黒鋼会……か?)
だとすれば、彼らがこの学園祭に何らかの目的を持っている可能性が高い。
「ハーブ!」
突然、坂井の声が飛んできた。
「お前、次のシフトの時間だぞ!」
「……ああ」
考えを一旦保留し、ハーブはクラスのメイド喫茶へと足を向けた。
しかし、その背後では——。
「……標的、確認」
黒鋼会の影が、静かに動き出していた。
メイド喫茶の賑わい
「いらっしゃいませ、ご主人様♪」
店内は依然として盛況だった。
メイド服を着たクラスの女子たちが笑顔で接客し、男子たちも給仕役として忙しそうに動いている。
「ハーブさん、お疲れ様です」
雪奈が微笑みながら、ハーブの前に立った。
「……雪奈、お前は大丈夫か?」
「はい? 何がですか?」
「いや……妙な気配を感じたからな」
「き、気配……?」
雪奈が少し不安そうな表情を浮かべると、玲華が横から口を挟んだ。
「ハーブ、何かあったの?」
「まだ確定ではないが……黒鋼会の動きを感じる」
玲華はわずかに目を細めた。
「学園祭の最中に? でも、ここは人が多いし、簡単には動けないんじゃない?」
「だからこそ、逆に動きやすいとも言える」
ハーブの言葉に、玲華は黙り込んだ。
(確かに、混雑している分、不審者が紛れ込みやすい……)
「ハーブさん……その、気をつけてください」
雪奈がそっと袖を掴んだ。
「……ああ、お前もな」
ハーブは小さく頷き、店内を警戒しながら接客に戻る。
不穏な異変
学園祭も中盤に差し掛かった頃——。
突如、校内の一角で悲鳴が上がった。
「きゃあっ!!」
「何だ!? 何があった!?」
生徒たちがざわめき、騒然となる。
「おい、今の悲鳴——」
坂井が戸惑った声を上げた瞬間、メイド喫茶のドアが勢いよく開いた。
「ハーブ、大変よ!」
駆け込んできたのは、生徒会の役員だった。
「校舎裏で暴漢が出たの! 数人の生徒が襲われて……!」
「……!」
ハーブの表情が険しくなる。
玲華もすぐに状況を察した。
「……黒鋼会、ね」
「可能性は高い」
「行くわよ、ハーブ」
玲華が真剣な表情で言い、ハーブは頷いた。
「私も行きます!」
雪奈が力強く言う。
「雪奈、お前は——」
「大丈夫です! 玲華さんと一緒なら、足手まといにはなりません!」
その言葉に、玲華は少し驚いた顔をした。
(……前より、しっかりしたわね)
ハーブは少し考えた後、雪奈の決意を汲んだ。
「……わかった。ただし、無理はするな」
「はい!」
そして——。
ハーブたちは、騒ぎの中心へと向かった。
襲撃者との遭遇
校舎裏に到着すると、そこには数人の生徒が倒れていた。
「……っ!」
「意識はあるみたいだが、かなりやられているな……」
倒れているのは上級生たちだった。彼らは苦しそうに呻いているが、意識はある。
「お、お前たち……逃げろ……!」
「何があった?」
ハーブが問うと、彼らは震える声で答えた。
「……黒い服の連中が、急に……襲ってきた……」
「黒鋼会、確定ね」
玲華が静かに言う。
その瞬間——。
「ククッ……ようやく来たな」
闇の中から、数人の男たちが現れた。
「待っていたぜ、ハーブ」
「……俺を狙っていたか」
ハーブは静かに剣の柄に手をかける。
「さて、ここでお前を潰しておけば、俺たちの評価も上がるってもんだ」
リーダー格の男がニヤリと笑い、構えを取った。
「どうする、ハーブ?」
玲華が問いかける。
「戦うしかないな」
ハーブはゆっくりと剣を抜いた。
その瞳には、すでに戦いへの覚悟が宿っていた——。
次回予告
ついに黒鋼会の刺客との直接対決!
ハーブたちは彼らの襲撃を防ぐことができるのか!?
次回、第21話「刃と刃の交錯」
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