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ち……

「はぁ……うぐぐ……!」

 一時間にもわたる激痛を耐え抜いたオカマは、ようやく自分の力で立ち上がることが出来ました。

ちなみに魔女の方は苦しみもがきのたうち回るオカマの様子をじっくりたっぷりねっとりと観察していました。

 研究目的の経過観察、と言えば聞こえはいいかもしれませんが、それにしては表情がうきうきわくわくうっとりとしていたのが微妙な問題点です。

 にゃんこはそんな魔女をちょっぴりびくびくしながら眺めていました。

「ますたぁってどえすなときほどひょうじょうがかがやいてるよね……」

 少々ドン引きしていますが、最近ではちょっと慣れてきたようです。びくつくよりも諦めの境地に達しています。

 にゃんこはちょっとずつ成長しているようです。

 本来は必要のない成長要素のような気がしますが、深くは考えないでおきましょう。


「えいっ」

「ぐぼあっ!?」

 ようやく立ち上がったところで魔女はオカマの背後に回り込み、後ろからその巨乳を両手で鷲掴みにしました。

 もみもみもみと思う存分揉みしだきます。

「うん。巨乳だね。胸板じゃなくてちゃんとおっぱいだね」

「何すんのよ!?」

「何って、そりゃあ効果確認に決まってるじゃない。……下はどうかな?」

「ぎゃあっ!」

 今度は胸から股間へとその手を伸ばしていきます。

 ち……あるべきムスコの存在が消失して、きちんと女性の身体になっていることを確認できました。

「うん。成功してるね」

 魔女はオカマの股間から手を離して満足そうに頷きました。

 さりげに近くにあったタオルで手をふきふきしています。

 気持ちは分かりますがもうちょっと気を遣ってあげてもいいと思います。

「あたし、本当に女になったの?」

 今更ながらオカマは自分の胸と股間に手を当てます。……胸はともかく股間に手を当てるのは見た目が大変よろしくないのでやめて欲しいところです。

「女になってるよ。少なくとも身体はね」

「ますたぁ。でもやっぱりおばけだよこのひと」

 にゃんこが不満そうに魔女を見上げます。

「そりゃあ仕方がない。どんな薬を使ったとしても素材だけは変えようがないんだからね」

「おとこでもおんなでもおばけってこと?」

「そうかもね」

「そっか~」

 二人して容赦のカケラもありません。

 オカマはお構いなしに鏡へと駆け寄ります。

 確かに女性化した自分の身体を丹念に確認しながら、がっくりと肩を落としてしまいます。

「あんまり、女っぽくなってないわ……」

「だから元々マッチョなんだからそのまま女性化したって女らしくなるわけないじゃない。最初に言ったと思うんだけど」

「むしろか弱い美女に変化できる薬とかないかしら?」

「なくはないけど効果は三時間ほどで切れるよ。永続的なものは私も知らない」

「それでも使い続けてればずっと美女でいられるわよね」

「理屈的にはそうだけど、変身薬は高いよ。一回分が金貨二十枚。他の所に行ってもそのくらいが相場だと思うよ」

「……そう」

 一回ならまだしも、そんなお値段では定期的に使い続けることは無理だと悟りました。

「とりあえず身体が女になったんだからそれで妥協しようよ」

「……そうね。身体が女になったんだからそれで妥協するわ。少なくともこれであの人に迫ることが出来る」

「待った。もしかして好きな男がいるから女になりたかったの?」

「そうよ。あたしの心は間違いなく女だけれど、身体はどうしようもなく男だもの。それを理由に断られ続けているわ。だから身も心も女になればきっと振り向いてくれるわ」

「……それはどうかなぁ」

 確かに男なら同性お断りでしょうが、仮に女性化したとしてもこんな筋肉女はお断りなのでは? と首を傾げる魔女ですが、それは自分には関わりのないことなので口には出しませんでした。

 人の恋路を邪魔するつもりはありません。

 馬に蹴られたくありませんから。

 たとえ成就の見込みが限りなく薄い恋路だとしても。


「ありがとう。助かったわ」

「どういたしまして。せいぜい頑張ってね」

 魔女はオカマを見送りました。

 頑張ってというのは勿論社交辞令です。

 心の中ではこれっぽっちも成功するなどとは思っていません。

 オカマの背中が見えなくなると、にゃんこがそっと呟きました。

「あのおばけにこくはくされるおとこのひと、ちょっぴりかわいそうだね」

「まあ男に告白されるよりは女に告白される方がマシなんじゃない?」

「そっか~」

「多分ね」

 オカマの恋路などどうでもいいのでそのまま家に入る二人でした。


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