勇者復讐計画極秘進行中
魔女は倉庫から材料を物色してさっそく調合を始めました。
「………………」
以前なら『ごっりゅごりゅ~♪』などと鼻歌混じりに調合していたのですが、今は黙々と作業に没頭しています。
何故ならにゃんこが傍にいるからです。
『おんち』発言は想像以上に魔女の精神を抉っていたようです。
にゃんこの方はそんなこと忘れているのか、楽しそうに魔女の作業を眺めます。
魔法だけではなく、調合でも役に立てるようになりたいようです。
使い魔というよりも弟子志願の勢いです。
魔女の方もにゃんこが積極的に何かを学ぼうとするのなら、出来るだけ手助けをしてあげたいと考えています。
もちろん薬の調合はまだ危険なので任せられませんが、材料の買い出しを頼むことなら出来るようになるかもしれません。
しかし勉強熱心と言えどもにゃんこはまだ子供です。
魔女も子供ですが、にゃんこはそれ以上に幼いのです。
魔女が我慢出来ることも、にゃんこには我慢できませんでした。
「う~……ますたぁ、それ、くさいよ?」
魔女が調合している性転換薬は大変な悪臭を放っていました。
今は液体を小さな器で煮詰めているところですが、その湯気がたまらなく臭いのです。
「仕方ないよ。そういうものなんだから。女装……じゃなくて、女性化したいからってコレを飲む人間はある意味凄いと思うよ」
「えっと……しゅうねんってゆうんだっけ?」
「お、難しい言葉知ってるね」
魔女は感心したように相槌を打ちます。
「ゆうしゃがおしえてくれた」
「そっか」
最近は勇者もにゃんこの教育を買って出てくれています。
どうやら耳尻尾もふもふが目的のようです。
文字の読み書きや一般常識を教えているようですが、たまに余計なことも吹き込んでいるようです。
魔女としてはにゃんこの耳尻尾もふもふ権利は自分だけのものなのに図々しい! と憤慨しているのですが、にゃんこ本人が勇者に懐いているようなので仕方なく妥協しています。
……とりあえずいつかささやかな復讐をしてやると決意したりもしていますが、そこは微塵も表に出しません。心の中のみで復讐計画を練りまくっています。
「う~。もうだめ!」
悪臭が頂点に達した頃、鼻を押さえてにゃんこが逃げ出してしまいました。
「あ、逃げた」
魔女は平然としています。
実はこっそり魔法を使って嗅覚を麻痺させていたのです。
もちろんにゃんこには内緒で。
にゃんこにかけてあげてもよかったのですが、顔を歪めて涙目になって、それでも我慢して傍にいようとする様子を眺めるのが楽しくって傍観していました。
相変わらずのドSです。




