表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/363

その頃のにゃんこ

 さて、その頃のにゃんこです。

「うー……みゅー……」

 魔女の宿題……魔導書の山を目の前にしてうんうん唸っています。

 初心者用の教本から開いてみたのですが、一文字読むだけでも大変な苦労を強いられています。

 この世界に漢字は存在しませんが、漢字とよく似た変換文字は存在します。

 つまり、にゃんこにはまだ読めないのです。

 にゃんこが読書をするにはまず『もじのよみかた』あたりから始めるべきでした。

 もちろん魔女がそういう本から勧めてあげれば良かったのですが、『ひらがなしゃべりのたどたどしさが激萌え』という身勝手な理由から、にゃんこに文字を教えることを良しとしませんでした。

 馬鹿な子ほど可愛いのそのまんま版です。

「あう~」

 脳みそがそろそろ茹だってきました。

 知恵熱の兆候が出てきています。

「ますたぁのいじわる~」

 敢えて読めない本を出してきた魔女を少しだけ恨んでしまいます。

 もちろん大好きなますたぁですから本気で恨んだりはしないのですが。

 このまま挫折してしまうには時間が余りすぎています。

 スカルくん達は外で仕事をしていますし、邪魔をするのも気が引けます。

 スカルくんの仕事を滞らせると、骨も凍るような魔女のお仕置きが待っていることをにゃんこは知っているからです。

 一人きりで過ごすには、勉強ぐらいしかやることがありません。

 にゃんこは仕方なく初心者用教本とにらめっこしています。

 少しずつ、本当に少しずつなら読むことが出来るのです。

 魔女との使い魔関係が役に立っています。

 集中することにより魔女の知識を共有することが出来るのです。

 もちろんにゃんこは未熟者なので文字を読むことぐらいしか出来ませんが。

 読めるようになったら書いていることの意味も分かるかもしれません。


「あう~。あたまいたくなってきたよぅ」

 いよいよ限界が近づいてきたのか、にゃんこはテーブルに突っ伏してしまいます。


 そんなタイミングで呼び鈴が鳴りました。

「だれだろう?」

 知らない人がやってきても扉を開けてはいけません、などという模範的な教育を魔女はしていません。

 魔女がにゃんこに教え込んだのは『知らない人がやってきたら迎撃魔法を最大威力で発動させること』でした。

 攻撃意識が強すぎます。

 にゃんこでも簡単に発動させることが出来るように爆弾スイッチのようなものをドアの横に設置してあります。

 このボタンをぽちっと押すだけであら不思議、いつか見た勇者の悲劇が再現できるのです。

 押さないでー。

 にゃんこはそんな事しちゃ駄目だよー!

 ピュアなままでいてー!

 などと言いたくなってしまいます。

「はーい。いまでるよー」

 にゃんこは扉を開けました。

 魔女の言いつけ通り、スイッチに指を添えたままですが。

「あ、こんにちは~」

 来客は、にゃんこのよく知っている人でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ