魔族の少子化問題
魔王は自国のロリ美少女の自慢をしにきたようです。
……もちろん嘘です。
そんなわけがありません。……ないはずです。
「実はな、魔獣創成を依頼したいのだよ」
「……は?」
「だから魔獣創成。知識はあるのだろう?」
「……まあね。使い魔型と量産型とどっちが希望なわけ?」
魔女の知識の中には魔獣創成も含まれています。
しかし魔獣は外見的に好みではないので、魔女としてはあまり手を付けたくないというのが本音だったりします。
「もちろん量産型だ。感情や忠誠心など必要ない。消耗品にする予定だからな」
「ふーん。それなら出来るけど、なんで私に依頼するわけ? 魔獣やキメラ、使い魔創成なら魔族の方がうまくできるでしょ?」
元々魔獣創成は魔族発祥の技術です。
それを人間の魔導師が永い時間をかけて研究を重ね、独自の形を創り上げてきました。
ですから魔族の行う魔獣創成と人間の行う魔獣創成では若干手法が違っています。
品質は魔族の方が上ですが。
「実を言うと魔族の魔獣創成師は今現在人材不足なのだ」
「………………」
「人間にはあまり知られていないことだが、魔族の魔獣創成は技術よりも血筋に頼っている部分が大きいのだ。その一族はいま少子化問題を抱えていてな」
「……異世界で少子化問題なんて言葉を聞くとは思わなかったよ」
魔族にも色々と複雑な事情があるようです。
「今までは創成族に頼って魔獣を送り出していたが、最近の彼らは魔獣創成よりも不妊治療の研究に力を入れておる。余としても種族維持の為に尽力している彼らに魔獣創成を優先しろとはさすがに言えぬのだよ」
「……政治事情も色々大変だねぇ」
「うむ。国を一つ治めるのは中々苦労が多い」
魔王はお茶を飲みながらやれやれと溜め息をつきます。
「結果として魔女に創成依頼を持ってきたわけだ」
「ふーん」
不妊治療大変そうだな~とか考えながら魔女もお茶を飲みます。
「それって人間を攻めるために使うの?」
「もちろんだ」
「人間である私にそういう依頼をするわけだ」
魔女は意地悪そうに口元を吊り上げました。
「するとも。魔女は人間の味方ではないのだろう? 魔族の味方でもない。報酬で動く利益主義者だ。違うか?」
魔王の方も同じように口元を吊り上げました。
魔女の性格を知っているとでも言うように。
「その前に事情を聞きたいな。人間と魔族の事情。そして勇者と魔王の事情も。依頼を受けるかどうかはその話を聞いてからにする。それでどう?」
「いいだろう」
こちらの世界の事情をまだ把握していない魔女にとってはいい退屈しのぎになりそうです。
もちろん話の内容よりも報酬の方が重要ですが。




