魔王陛下のロリ自慢
お尻の破けたズボンを魔力で修復してから、魔王はようやく魔女の家に入れてもらえました。
「すごいねー。魔力で服も直せるんだ」
魔女は感心したように言いました。
見たところ勇者に施したような時間魔法を使った形跡はありません。純粋魔力による修復です。
「まあな。この服は布製ではなく魔力で編まれたものだ。同じように魔力で修復可能なのだよ」
「バリ●ジャケットみたいなもの?」
「……なんだそれは」
「いや。こっちの話」
地球世界の某アニメネタを話したところで魔王に伝わるわけがありません。世代的問題で勇者にも通じないでしょう。
魔女はお茶を出してあげてから魔王と同じテーブルにつきます。
にゃんこは奥の部屋で待機させています。
敵か味方か判断出来ない相手ににゃんこの存在を知られるのはよろしくありません。
「……毒入りじゃないだろうな?」
先ほど酷い目にあった所為か、疑わしい目でお茶を見つめる魔王です。
「失礼な。食べ物飲み物に細工なんてしないよ。もったいないじゃんか。それに毒薬だってただじゃないんだからね」
「……節約だけが理由なのか」
魔王はその立場上、暗殺などの危険に見舞われた回数も決して少なくありません。
そんな魔王にとって、節約程度の理由で毒殺すら考慮してもらえない自分の価値について、喜んでいいのか、がっかりしていいのか、果たしてどちらなのだろうというのが微妙な悩みどころでした。
「あ、でも魔王なら毒薬とかに強そうだよねぇ。実験対象としては悪くないのかな?」
腕を組んで真面目にそんなことを考え始めた魔女を見て、魔王は本気で背筋が寒くなりました。
「耐性はあるが断固として断るぞ! そんなモノの実験台にされてたまるかっ!」
「やだなー。冗談だよ冗談。……半分くらい」
「……頼むから残りの半分も冗談にしてくれ」
つまり半分は本気というわけですね。
魔王は念のため、毒消し魔法をこっそりかけてからお茶を飲みました。
「で、天下の魔王陛下が一介の魔女如きに何の用なのかな?」
「天下の魔王陛下が一介の魔女の元に世間話にやってきた、というのはどうだ?」
「お尻に雷を受けに来たっていう方がより事実に近いね~」
「うぅ……」
またあの痛みを思い出したのか、魔王は嫌そうな顔をしてお尻を押さえました。まだ微妙にひりひりしています。
「我が軍門に下れ、とか言う話ならお断りだよ。戦争とか興味ないし。魔族も人間も好き勝手にやっちゃって。私はここで魔女ライフを満喫するから」
「そんな事を言うつもりはない。そもそもこんな危険人物を仲間に出来るか」
「……危険人物?」
魔女はギラリと目を据わらせますが、魔王の方も負けてはいません。
「いきなり現れた客人のケツ……じゃなくて尻に雷撃をぶちかますヤツを安全だなんて言うヤツがいたら天然記念物級の平和ボケだろうが!」
「失礼な。魔王に弓を引くのは人間として当然の行動でしょ」
「……勇者にも攻撃していなかったか?」
「魔女だから人間の味方とも限らないしね~」
「……モノは言い様だな」
確かに魔女は人間の味方ではありません。
古来よりそういうキャラ設定なのです。
現代魔女もその設定に忠実……という訳ではありませんが自分の都合で色々とねじ曲げたり利用したりしているようです。
「大体魔王って大きな城の玉座でふんぞり返って命令したり傍観したりしてるもんなんじゃないの? 左右に美女を従えてうちわで扇がせたり」
「……随分と偏った魔王イメージだな。ちなみに余の好みは美女ではなくロリだ」
「……あんたその外見でロリ好みって犯罪にも程があるでしょうが」
「そうでもないぞ。魔族は外見的に歳を取らない種族が多いからな。数百歳のロリ美少女などかなりの割合で存在するぞ」
「へー、そうなんだー……」
結局用件を聞き出せないまま、随分とがっかりな世間話をしている魔女と魔王なのでした。




