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ケ●ビリ魔王がやってきた!

「こんにちは! 魔王だぜ!」

「………………」

 魔女は客人を出迎えた途端、がっくりとうなだれてしまいました。

 つい先日勇者がやってきたばかりだというのに、どうして今度は魔王がやってきたりするのでしょうか。

 もちろん本物とは限りませんが。

 揃いも揃って魔女の元に訪れる理由がさっぱり分かりません。

 魔王の外見は勇者と違って白髪交じりのナイスミドルという感じです。

 思わずおじさま素敵! とか言ってしまいそうなくらいの美中年です。

 ……魔女はオジン趣味ではないので勿論言いませんが。

「えーと、取りあえず本物かどうか分かんないから迎撃魔法で試させて……」

 脱力しながらも勇者と同じパターンで対応しようとします。

「いや。先日遠見水晶で様子を観察していたからな。あれは余でも辛い。前もって封印させて貰ったぞ」

 勝手に封印されていました。

 確かに発動しようとしてもうんともすんとも言いません。

 罠が壊されているのではなく、魔王の魔力で強制的に押さえこまれているようです。この一帯に封印魔法がかけられているのでしょう。

「……人の迎撃罠を勝手に封印しないでよ。それから人の私生活を勝手に覗かないでよ」

「それは済まなかったな。しかし安全策をとるのは悪いことではないと思うのだが」

「そうだね。それは同感だよ」

 魔女はにっこりと笑って足元に仕掛けてあった魔法陣を発動させました。

「っ!?」

 魔王は瞬時に地面を警戒しますが、何も起こりません。

「……?」

 そして、

「ぴぎゃーっ!!」

 いきなり空から雷が落ちてきました。

 ピンポイントで魔王のお尻に直撃しました。

 ……お尻。頭でも胴体でもなくお尻です。

 お尻に雷で穴を開けました。

 つまりケ●ビリです。

 しかもビリ+コゲです。

 魔王はケ……ではなくお尻を押さえながら涙目で蹲りました。

「いたたた……! ひ、酷いじゃないか!」

「おー。確かに魔王だねー。普通の人間ならボロボロに崩れるぐらいに炭化するはずなんだけどね~」

 魔女はさらりと怖いことを言います。

 地面に仕掛けていた迎撃魔法を勝手に封印されたので腹が立ったのです。

 そして腹いせにお空に仕掛けておいた天候操作魔法を発動させたのです。

 本来なら広域殲滅に使用するものですが、今回は広域殲滅用の威力を一点集中して魔王のケ……お尻に直撃させたのでした。

 ……よくもまあお尻が炭化しなかったものです。

 ほんのり赤くなっています。

「あはは~。まるで猿みたいだね~」

「猿って言うなーっ!」

 魔王相手にかなりいい度胸です。

 この魔女、精神レベルでは間違いなく最凶キャラかもしれません。



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