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『キモデブニートだった俺が、剣聖スキル持ちの銀髪美少年に転生したケース』  作者: ぷっぷくクリーナー


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98/109

第98章 白衣の魔王


魔境最深部。


漆黒の山々に囲まれた巨大な魔王城。


その一角には、魔族たちの傷病者を収容する医療施設が設けられていた。


白い寝台が並ぶ部屋。


その一つに、幼い魔族の少女が横たわっていた。


少女「……魔王様」


寝台の傍らには、一人の美しい女性が腰を下ろしている。


人間とほとんど変わらない容姿。


穏やかな表情と、深い憂いを宿した瞳。


女性は少女の額に触れ、呼吸を確かめた。


魔王「……熱は少し下がったわね」


少女「……私、治る?」


魔王「ええ。治るわ。だから、今はゆっくり休みなさい」


少女「……また、お外で遊べる?」


魔王「もちろん。そのためにも、ちゃんと食べて、眠らなきゃね」


少女は弱々しく微笑んだ。


魔王は傍らの治療師へ向き直る。


魔王「水分を少しずつ与えて。呼吸と体温の変化も記録してちょうだい」


魔族治療師「承知しました、陛下」


魔王「寝具は清潔に保って。治癒魔法で症状を抑えるだけでは、病の原因を取り除いたことにはならないわ」


魔族治療師「はい!」


女性は少女の頭を優しく撫でた。


魔王「また明日、診に来るわね」


少女「……ありがとう、先生」


その言葉に、女性は一瞬だけ目を見開いた。


そして、懐かしそうに微笑む。


魔王「……どういたしまして」


先生。


それは、彼女が遠い昔、別の世界で呼ばれていた言葉だった。




かつて、彼女は地球と呼ばれる世界で医師として働いていた。


病院の白い廊下。


消毒薬の匂い。


夜勤明けの疲労。


患者の命を救えた日の安堵と、救えなかった日の後悔。


それらが彼女の日常だった。


しかし、ある日突然、その日常は終わった。


原因不明の現象によって、異世界へ転移してしまったのである。


最初にたどり着いたのは、セレスティア王国だった。


だが、そこに彼女の居場所はなかった。


身元を証明するものはなく、見知らぬ土地の常識も分からない。


医師としての知識を生かそうとしても、未知の治療法を疑われた。


やがて、一部の権力者たちから危険な存在として迫害され、命を狙われるまでになった。


逃亡の果てに、彼女は北方の荒野で倒れた。


身体には傷。


水も食料も尽きていた。


???「……こんなところで、終わるの……?」


その声に答える人間はいなかった。


だが、小さな足音が近づいてきた。


現れたのは、人間たちが恐れる魔物だった。


???「……お願い。殺さないで……」


しかし、魔物は襲ってこなかった。


小さな手が、彼女の傷ついた身体へ伸ばされる。


そして仲間を呼んだ。


魔物たちは力を合わせ、瀕死の彼女を魔境の集落まで運んでくれた。


人間に追われた女性は、魔物たちによって命を救われたのである。




長い療養生活の中で、彼女は魔境の暮らしを知った。


魔物たちも病に苦しむ。


傷つけば痛みを感じ、家族を失えば悲しみ、子供が生まれれば喜ぶ。


人間とは姿が違っても、その営みは何も変わらなかった。


やがて身体が回復した彼女は、自分にできることを始めた。


傷口を洗い、止血を行い、衛生環境を整える。


病人の栄養状態を調べ、感染症の広がりを防ぐ。


現地の治療師たちに教えを請い、人間とは異なる魔族の身体構造を学ぶ。


元の世界で身につけた医学と、この世界の治癒魔法。


その二つを組み合わせ、彼女は少しずつ患者を救っていった。


魔族の子供「先生! もう歩けるようになったよ!」


???「ふふっ。よかった。でも、今日はまだ走っちゃ駄目よ」


魔族の老人「……どうして、人間のお前さんが我々を助けてくれるんだ?」


???「患者さんだからよ」


彼女は当然のように答えた。


???「人間か魔族かなんて、治療する理由には関係ないわ」


その言葉は、魔境の人々の心に深く刻まれた。


彼女が救った患者は、やがて別の患者を連れてきた。


小さな診療所は大きくなり、治療の知識も周辺の集落へ広まっていった。


そんなある日。


彼女の中に、これまで存在しなかった強大な魔力が目覚めた。


それは長く失われていた魔王の力を継承する者の証だった。


なぜ異世界から来た人間の女性が選ばれたのか。


その理由は、彼女自身にも分からなかった。


だが、魔境の人々は彼女を受け入れた。


強大な力を持っていたからではない。


それまでに多くの命を救い、人々の信頼を得ていたからだ。


こうして、一人の女性医師は魔王となった。


人々を支配するためではなく、守るために。




魔王となって間もない頃。


彼女の診療所へ、一人の傷だらけの魔族の武人が駆け込んできた。


その腕には、血に染まった幼い少女が抱かれていた。


武人はヴァルガス。


そして少女は、彼の娘だった。


ヴァルガス「頼む! 娘を助けてくれ!」


少女は人間たちから受けた傷によって重体に陥っていた。


治療師たちも、助かる見込みは薄いと考えていた。


魔王「……すぐに寝台へ!」


ヴァルガス「陛下……!」


魔王「話はあとよ。今はこの子を助けることが先でしょう!」


彼女は傷の状態を確認し、治療師たちへ指示を出した。


魔王「出血を止めて。傷口を洗浄する準備を!」


魔族治療師「はい!」


魔王「治癒魔法は私の指示に合わせて。損傷した組織を確認しながら治療するわ」


治療は長時間に及んだ。


魔王自身も魔力を消耗し、額には汗が浮かんでいた。


それでも彼女は手を止めなかった。


そして、ようやく。


少女の呼吸が安定した。


魔族治療師「……陛下! 容体が落ち着きました!」


魔王「……よかった」


彼女は深く息を吐いた。


ヴァルガスは、娘の小さな手を握りしめていた。


ヴァルガス「……生きている」


魔王「ええ。まだ予断は許さないけれど、回復できる見込みはあるわ」


ヴァルガス「……陛下」


歴戦の武人は、その場に膝をついた。


ヴァルガス「この御恩は、生涯忘れません」


魔王「そんなことを気にしなくていいのよ」


ヴァルガス「いいえ。娘は、私のすべてです」


彼は深く頭を下げた。


ヴァルガス「この命、陛下のためなら惜しくありません」


魔王は困ったように微笑んだ。


魔王「……あなたの娘さんは、お父さんが生きて帰るのを待っているはずよ」


ヴァルガス「……!」


魔王「だから、命を粗末にしないで。私への恩返しなら、どうか生きて、娘さんを守ってあげて」


ヴァルガスは何も答えられなかった。


だが、その日から彼の忠誠は揺るぎないものとなった。


自分の娘を救ってくれた女性。


魔族である自分たちを、分け隔てなく診てくれた医師。


そして、魔境の民を救うために王となった存在。


ヴァルガスにとって魔王とは、単に仕えるべき君主ではなかった。


命の恩人であり、魔境の希望そのものだったのである。




現在。


魔王城、最上階。


玉座の間には、世界の魔力循環を示す巨大な魔導地図が浮かんでいた。


人間たちが暮らす土地には豊かな魔力が流れ、魔境への流入量は著しく少ない。


古代から続くその偏りによって、魔境は衰退を続けていた。


側近「陛下。また一つ、西方の森林が枯れ始めました」


魔王「……そう」


側近「周辺部族からの救援要請も増えております」


魔王は地図へ手を伸ばした。


魔王「……私たちは、人間の魔力をすべて奪いたいわけじゃないの」


彼女は魔境を示す暗い領域を見つめる。


魔王「ただ、こちらにも生きていけるだけの魔力を分けてほしい。それだけなのよ」


その願いを、彼女は何度も王国へ伝えようとしていた。


古代魔力循環網の共同調査。


人間側の生活を損なわない範囲での、魔力配分の見直し。


技術と資源の相互提供。


交渉のため、何度も使者を派遣した。


しかし、王国の上層部から正式な回答が届くことはなかった。


そもそも、王国の一部の権力者にとって、魔境の魔族は対等な交渉相手ではなかったのである。


魔族とは討伐すべき存在。


人間と同等の権利など認める必要はない。


そうした考えが、交渉の門を閉ざしていた。


それでも魔王は諦めなかった。


要求を緩め、共同調査だけでも認めてほしいと申し入れた。


だが、最後には悲劇が起きた。


王国へ派遣した使節団が、国境の門前で入城を拒絶されたのである。


魔族使者「我々は魔王陛下の命を受けた使者です! 戦う意思はありません!」


王国守備隊長「魔族ごときが、我が王国と対等に交渉できると思うな!」


魔族使者「どうか、書簡だけでもお受け取りください!」


王国守備隊長「立ち去れ!」


魔族使者「我々は平和的な解決を望んで――」


言葉が終わる前に、王国兵の剣が振り下ろされた。


使者の一人が斬られ、命を落とした。


残された使節団は追い払われ、国境の門は固く閉ざされた。


交渉を求める者への、あまりにも残酷な回答だった。


その報告を受けた魔王は、長い間、言葉を発することができなかった。


魔王「……どうして?」


ようやく口を開いた彼女の声は、震えていた。


魔王「私たちは、話し合いたかっただけなのに……」


側近「陛下……」


魔王「使者は武器を収めていたのでしょう?」


側近「……はい」


魔王「……それなのに、殺されたのね」


彼女は静かに目を閉じた。


魔王「……そう。これが、王国の答えなのね」


何度も差し伸べた手。


何度も送った書簡。


そして、最後には使者の命まで奪われた。


魔王はようやく理解した。


少なくとも、これまで交渉を受け持ってきた王国上層部は、魔族を対等な存在として認める気がなかったのだ。




玉座の間。


魔王は静かに目を開いた。


魔王「……それでも、人間すべてが同じ考えだとは思いたくないわ」


側近「ですが、陛下。もはや交渉は不可能です」


魔王「……ええ。今のままではね」


魔境の衰退は、待ってくれない。


魔力不足によって病人が増え、森は枯れ、幼い命が失われていく。


魔王「……私は、命を救うために医師になったの」


彼女は苦しそうに微笑んだ。


魔王「なのに今は、戦争を命じる立場になっている……」


ふと、白衣を着て病院の廊下を歩いていた頃の自分が脳裏に浮かんだ。


目の前の命を救うために、懸命に働いていた日々。


魔王「……昔の私が今の私を見たら、きっとひどく叱るでしょうね」


彼女は寂しそうに笑った。


魔王「人の命を救うために医者になったくせに、どうして戦争なんか始めているのって……」


それでも、今の彼女には守らなければならない民がいた。


そのとき、北境から戦況報告が届いた。


側近「陛下。ヴァルガス将軍より報告です。アルセリア辺境伯軍の包囲に成功しました」


魔王「……双方の損害は?」


側近「少なくありません。さらに王国は大規模な解囲軍を編成しております」


魔王はしばらく考え、命令を下した。


魔王「無理な攻勢は控えて。降伏した兵士の生命は保証すること」


側近「承知しました」


魔王「引き続き、民間人への攻撃も禁じます」


彼女は静かに続けた。


魔王「戦争を始めたからといって、命を軽んじてよい理由にはならないわ」




北境、魔王軍中央本陣。


ヴァルガスは魔王から届いた命令書を読み終えた。


ヴァルガス「……陛下らしい御命令だ」


魔族副官「降伏勧告を優先するとのことです」


ヴァルガス「うむ。無益な攻撃は控えよ。こちらも兵を失いすぎている」


そこへ、ヴェルセリア・ドラグレインが訪れた。


ヴェルセリア「ヴァルガス将軍。西方軍の配置を完了いたしました」


ヴァルガス「ご苦労だった、ヴェルセリア」


ヴェルセリア「王国軍は、なお頑強に抵抗しております」


ヴァルガス「分かっている。包囲したからといって油断はできん」


軍議が終わり、二人だけになる。


ヴァルガスは命令書を卓上へ置くと、ふっと肩の力を抜いた。


ヴァルガス「……ったく。陛下もお前も、敵に甘いところは変わらねえな」


ヴェルセリア「あら、何かご不満でも?」


ヴァルガス「不満ってほどじゃねえさ。ただ、こっちは敵兵を一人でも減らしたい立場なんだがな」


ヴェルセリア「降伏した兵や、戦えなくなった負傷者まで討つ必要はありませんわ」


ヴァルガス「分かってるよ。陛下にもお前にも止められてるからな。敵兵まで助けるなんざ、武人としては少々複雑だが……仕方ねえ」


ヴェルセリア「ふふっ。そうおっしゃいながら、きちんと救護を命じてくださるところが、あなたのよいところですわ」


ヴァルガス「おだてても何も出ねえぞ」


ヴェルセリア「あら、お世辞ではありませんのに」


ヴァルガスは苦笑した。


ヴァルガス「まあ、降伏した連中を斬ったところで、戦況がよくなるわけでもねえ。捕虜の扱い一つで、次の敵が死に物狂いになるかどうかも変わる」


ヴェルセリア「ええ。私もそう思います」


ヴァルガス「だが、まだ剣を握って向かってくる奴らには容赦しねえぞ」


ヴェルセリア「もちろんですわ。私も魔王軍の将軍ですもの」


ヴァルガスは満足そうに頷いた。


そして、卓上の命令書へ視線を戻す。


魔王の筆跡を見つめたとき、ふと昔の光景が脳裏をよぎった。


血に染まった幼い娘。


絶望の中で駆け込んだ診療所。


そして、娘を救うために、長時間にわたって治療を続けてくれた一人の女性。


あの方がいなければ、娘は今ここに生きていなかっただろう。


それだけではない。


魔王は、魔族であるという理由で誰かを見捨てたことなど、一度もなかった。


人間たちに迫害されながらも、魔境の民を救い続けてくれた。


あの方が望む未来を実現できるのなら、自分の命など惜しくはない。


ヴァルガスは、心の中でそう思っていた。


もっとも、命を粗末にするなと叱られることも、よく分かっている。


娘を救ったあの日、魔王から言われた言葉は、今も忘れていなかった。


彼は小さく息を吐き、地図へ視線を戻した。


ヴァルガス「……さて、包囲の内側にはアルセリア辺境伯軍。外側からは解囲軍か。なかなか骨の折れる戦になりそうだ」


ヴェルセリア「ええ、王国の解囲軍が迫っておりますもの、ですがこちらにもまだ戦う力は残っています」


ヴァルガス「ああ。お前にも期待してるぜ、竜の姫様」


ヴェルセリア「ふふっ。お任せくださいませ」


ヴァルガスは地図の南側を指差した。


ヴァルガス「よし。王国の解囲軍を迎え撃つ準備を進めるぞ」


ヴェルセリア「承知しました」




一方、王都。


王国解囲軍の先発部隊が、北境へ向けて出陣しようとしていた。


正規軍、諸侯の騎士団、魔術師部隊。


それらに加わるのは、セレスティア学園騎士団だった。


指揮官はセルジュ・ヴァレンタイン。


セレフィア・ルナリエが魔術部隊を統括し、保健医ミレイユが救護班を率いる。


セルジュ「諸君! これより北境へ向かう! 独断行動は厳禁だ!」


アーヴェル「分かってますよ、先生!」


セルジュ「特にお前とクラリッサだ!」


クラリッサ「ええっ!? またあたし!?」


カグラ「……当然」


ヴィクトリア「日頃の行いですわね」


クラリッサ「なんでよ!」


セレフィア「ふふっ。元気なのはよいことですが、戦場では落ち着いてくださいね」


ミレイユ「怪我を隠したら駄目だからねー」


ソフィア「救護用品の確認も終わっています」


その傍らには、完成した《アーマードクラリッサ》を載せた輸送車両があった。


マリアベル「いい? 実戦だからって無理な連続稼働は禁止よ!」


リリアーナ「予備部品は限られています。消耗に注意してください」


クラリッサ「分かってるって!」


セシリア「……出発準備は整った」


エリシアは北の空を見つめた。


エリシア「……レオン様。必ず助けに参ります」


やがて進軍の角笛が響いた。


セルジュ「学園騎士団、出発!」


王国解囲軍は北へ向かって動き始めた。




北境第二防衛線。


魔王軍の包囲下にある王国軍陣地。


俺――レオン・アルセリアは、フィオナやルミナとともに負傷兵の救護を手伝っていた。


レオン「……まだ、持ちこたえられそうか?」


フィオナ「大丈夫って言いたいけど、食料も薬も減ってるね」


ルミナ「備蓄の管理を継続しています。ただし、長期間の包囲には限界があります」


レオン「……厳しいな」


フィオナ「あんた、そんな顔しないの。まだ終わったわけじゃないでしょ?」


レオン「……そうだな」


そのとき、ルミナが何かに気付いた様に顔を上げた。


暫くすると伝令兵が息を切らせて走り込んできた。


伝令兵「レオン様。王都からの知らせが届きました」


レオン「……何だって?」


伝令兵「王国解囲軍の先発部隊が、北境へ向けて出発したとのことです」


レオン「……本当か!?」


フィオナ「やった! 救援が来るんだね!」


伝令兵「はい。ただし、到着時期は不明です」


俺は静かに剣の柄を握った。


レオン(……みんなが来るまで、絶対に持ちこたえないとな)




王都地下。


古代の封印を守るシオン・アルトゥスは、魔力観測装置を見つめていた。


シオン「……やはり、循環網が動き始めていますね」


魔境へ向かう魔力の流れ。


北境地下の異常。


そして、王都地下の封印。


シオン「……ただ魔力を移すだけでは、新たな犠牲が生まれてしまう」


過去の時間軸で経験した失敗が、彼の胸をよぎる。


シオン「……今度こそ、第三の道を見つけなければ」




魔王城。


夜。


魔王は一人、玉座の間に残っていた。


魔導地図には、人間側へ偏った魔力の流れが映し出されている。


魔王「……私たちは、そんなに無理なお願いをしたのかしら」


幾度も送った使者。


何度も書いた書簡。


そして、最後には斬られて命を落とした使者。


魔王「……ただ、対等に話し合ってほしかっただけなのに」


彼女は小さく目を伏せた。


魔境の民が生きていくための魔力。


それを分け合うことさえ、王国の上層部は認めようとしなかった。


魔王「……それでも、私は人間すべてを憎みたくないわ」


彼女は静かに顔を上げる。


魔王「いつか、話し合える人が現れると信じたい」


その願いが届く日は来るのだろうか。


王国のほんとんどの人々は、魔王が何を求め、何度交渉を申し入れていたのか知らない。


そして魔境の人々は、長く続いた拒絶と、使者を殺された悲しみを忘れていない。


互いの事情を知らぬまま、戦争は激しさを増していく。


魔王軍と王国解囲軍。


その両軍が、北境で激突しようとしていた。


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