第115章 勇者の覚醒
東方聖連邦。
セレスティア王国から遥か東、幾つもの都市国家と聖堂領が結びついた宗教国家。
その中心都市である聖都では、朝から異様な熱気が渦巻いていた。
――ついに勇者が現れる。
数百年にわたり、大神殿に眠り続けた聖剣。
その剣が、新たな持ち主を選ぶというのだ。
中央大神殿には、数百人もの聖職者や騎士が集まっていた。
純白の祭壇。
白銀に輝く聖剣。
そして、その前で盛大に顔を引きつらせている金髪の青年。
フィンレイ「……あの、今からでも帰っていいですか?」
大司教「ならぬ」
フィンレイ「ですよね……」
フィンレイ・アルヴェスト。
十八歳。
聖都郊外の小さな町で育った平民である。
自警団で剣術を少し習った程度の青年が、なぜこんな場所にいるのか。
数日前、町の聖堂で祈っている最中に、突然身体が光り始めたからだ。
その異変が大神殿へ報告され、あれよあれよという間に聖都へ連れてこられた。
本人の意思など、ほとんど確認されていない。
フィンレイ「本当に俺なんですか? もっとこう、筋骨隆々の英雄とか、立派な騎士とか……」
大司教「神々は容姿や身分で勇者を選ばれぬ」
フィンレイ「いや、俺だって自分の見た目は嫌いじゃないですけど!」
すると、参列者の後方から声が飛んだ。
エマ「フィン! いいから早くしなさいよ!」
フィンレイ「エ、エマ!?」
栗色の髪を横で結んだ少女が、大きく手を振っていた。
エマ・リーヴェルト。
幼い頃から一緒に育った幼馴染である。
エマ「あんた、昔から肝心なところでぐずぐずするんだから!」
フィンレイ「お前、少しはこの場の雰囲気を読めよ!」
エマ「読んでるわよ! 早く勇者になりなさいって雰囲気でしょ!」
フィンレイ「雑すぎる!」
厳かな礼拝堂に、二人の口喧嘩が響き渡る。
大司教が静かに咳払いした。
大司教「……そろそろよろしいかな?」
フィンレイ「す、すみません!」
フィンレイは祭壇へ向き直った。
聖剣の柄へ、おそるおそる手を伸ばす。
そして、指先が触れた瞬間。
――ゴォォン!
誰も鳴らしていない鐘が、大神殿全体に響き渡った。
白銀の刀身から、眩い光が噴き上がる。
フィンレイ「うわああっ!?」
光が幾重もの輪となり、青年を包み込んだ。
胸元へ、剣と翼を組み合わせた紋章が浮かび上がる。
大司教「……勇者の聖痕!」
聖職者A「おおっ! 聖剣が目覚めた!」
聖職者B「予言の勇者が現れたのだ!」
人々が一斉に跪く。
歓喜の声が礼拝堂を満たした。
しかし、当のフィンレイだけは呆然としていた。
フィンレイ「……本当に、俺が?」
手の中で輝く聖剣。
その光を見つめた瞬間、遠い記憶が胸をよぎった。
燃える家々。
魔物の咆哮。
父の背中。
父親「フィンレイ! 母さんと逃げろ!」
逃げ道を塞ぐ凶暴化した魔物。
自分を逃がすために立ちはだかった母。
母親「走りなさい、フィンレイ!」
あの日、両親は帰らぬ人となった。
その後、幼いフィンレイを引き取ってくれたのがエマの両親だった。
何度も悪夢にうなされ、泣きながら目覚めた夜。
いつも隣にはエマがいた。
そんな少女が今、誰よりも嬉しそうに笑っている。
エマ「フィン! すごいじゃない!」
フィンレイは、ゆっくり笑った。
フィンレイ「……ああ。俺、勇者になっちゃったみたいだ」
エマ「何よ、その頼りない言い方!」
フィンレイ「実感がないんだって!」
聖剣に選ばれた青年と、変わらず彼を叱る幼馴染。
その光景を見て、大司教は少しだけ困った顔をしていた。
翌日。
大神官長の前に召し出されたフィンレイは、正式に使命を告げられた。
大神官長「勇者フィンレイよ。そなたは聖剣を携え、魔王を討つのだ」
その言葉に、フィンレイの表情が変わった。
フィンレイ「……魔王、ですか」
大神官長「魔王の存在は、世界に災厄をもたらす。そなたこそ、その脅威を打ち払う希望なのだ」
魔物によって両親を失った記憶が、胸の奥で疼く。
魔物が憎くないはずがない。
しかし、フィンレイには一つ気になることがあった。
フィンレイ「……あの、魔王とセレスティア王国は和平を結んだんですよね?」
周囲の聖職者たちが顔をしかめた。
聖職者A「勇者殿! 魔王との和平など、いつ破られるとも知れぬ!」
フィンレイ「でも、まだ破られていないんですよね?」
聖職者A「そ、それは……!」
フィンレイ「俺、魔王が本当に倒さなきゃいけない相手なのか、自分で確かめたいです」
謁見の間に沈黙が落ちた。
大神官長は、しばらく青年を見つめていた。
大神官長「……よかろう。そなた自身の目で見極めるがよい」
フィンレイ「ありがとうございます!」
大神官長「ただし、忘れるでない。勇者には人々を闇から救う使命がある」
フィンレイは頷いた。
人々を守りたい。
その気持ちだけは揺らいでいなかった。
数日後。
大神殿の中庭に、勇者とともに旅立つ仲間たちが集められた。
最初に現れたのは、白と金の聖職衣をまとった美しい少女だった。
長い金髪に青い瞳。
十九歳の聖女候補、オリヴィア・ルクレール。
オリヴィア「初めまして、勇者フィンレイ様。オリヴィア・ルクレールと申します」
フィンレイ「初めまして! でも、俺のことはフィンレイでいいですよ」
オリヴィア「ふふっ。では、フィンレイ様とお呼びいたしますね」
フィンレイ「……様は取れないんですね」
オリヴィア「はい。私なりの敬意ですから」
柔らかな微笑み。
上品な仕草。
フィンレイは思わず見惚れた。
フィンレイ「……すごく綺麗な人ですね」
オリヴィア「まあ」
オリヴィアの頬が淡く染まる。
その瞬間。
エマ「……フィン?」
背後から、妙に低い声がした。
フィンレイ「……エマ?」
エマ「今、何て言った?」
フィンレイ「いや! 何でもない!」
オリヴィア「ふふっ。お二人は仲がよろしいのですね」
エマ「幼馴染ですから!」
オリヴィア「それは素敵ですね。フィンレイ様の昔のお話も、ぜひ伺いたいです」
エマ「……ええ。いくらでもありますよ」
二人の少女が笑顔で向き合う。
なぜか、フィンレイは背筋に寒気を覚えた。
そこへ、鎧姿の青年が現れた。
ガレス「……お前がフィンレイか」
フィンレイ「はい!」
ガレス「ガレス・ヴァンディール。聖騎士として、お前の護衛と剣術指導を任された」
二十一歳。
大盾と長剣を扱う、実戦経験豊富な若手聖騎士である。
ガレス「先に言っておく。俺は勇者という肩書だけで実力を認めたりしない」
フィンレイ「……はい」
ガレス「明日から徹底的に鍛える。覚悟しておけ」
フィンレイ「……明日から!?」
エマ「ちょうどいいじゃない! フィンは昔から詰めが甘いんだから!」
フィンレイ「お前まで言うのかよ!」
そのとき、元気な声が割り込んできた。
リゼット「はいはい! 堅苦しい挨拶はそのくらいにして!」
赤い髪を二つに結んだ少女が、勢いよく駆け寄ってくる。
リゼット「私はリゼット・アルカディア! 十七歳にして聖連邦屈指の天才魔術師よ!」
ガレス「……自分で天才と言うのか」
リゼット「事実だもの!」
リゼットはフィンレイの聖剣を見るなり、目を輝かせた。
リゼット「ねえ、勇者君! その剣、ちょっと調べさせて!」
フィンレイ「えっ? いいけど……」
リゼット「やった! あとで二人きりでじっくり調べましょ!」
エマ「……二人きり?」
リゼット「そうよ! 何か問題ある?」
エマ「べ、別に!」
リゼットが悪戯っぽく笑う。
リゼット「ふうん。幼馴染ちゃん、もしかして嫉妬してる?」
エマ「してないわよ!」
フィンレイ「……え? 何の話?」
三人の少女が一斉にフィンレイを見た。
エマ「……鈍感」
リゼット「……本当に鈍いわね」
オリヴィア「ふふっ。フィンレイ様らしいですね」
フィンレイ「……俺、何か悪いこと言った?」
ガレスが真顔で頷いた。
ガレス「俺にも分からん。何かの作戦会議だろう」
エマ「違います!」
リゼット「全然違うわよ!」
こうして、波乱に満ちた勇者パーティが結成された。
翌日。
大神殿の訓練場で、フィンレイとガレスが模擬戦を行っていた。
ガレス「遠慮はしない。来い!」
フィンレイ「はい!」
フィンレイが聖剣を振るう。
しかし、その剣筋はまだ粗かった。
ガレスが盾で受け止め、即座に反撃する。
フィンレイ「うわっ!?」
剣を弾かれ、盛大に尻餅をついた。
ガレス「……基礎がなっていない」
エマ「あーあ。だから言ったのに」
フィンレイ「うるさいな!」
エマが弓を構える。
エマ「じゃあ、私も手伝ってあげる!」
フィンレイ「……嫌な予感しかしないんだけど」
エマ「昔みたいに、私の矢を避けながら動けばいいのよ!」
フィンレイ「待て! 訓練用の矢だよな!?」
エマ「当然でしょ!」
模擬戦が再開される。
ガレスの攻撃を避けながら、フィンレイは必死に動いた。
そこへ、エマの訓練用の矢が飛ぶ。
反射的に身体を捻る。
その瞬間。
フィンレイの胸の聖痕が輝いた。
聖剣が白い光を放つ。
――ギィン!
ガレスの剣が、大きく弾かれた。
ガレス「……っ!?」
フィンレイ「……今の、俺が?」
リゼット「出たあっ! 聖剣の力!」
リゼットが目を輝かせる。
リゼット「フィン! もう一回やって!」
フィンレイ「いや、どうやったのか分からないんだけど!」
リゼット「気合いよ、気合い!」
ガレス「魔術師が気合いで説明するな!」
その直後、聖剣の光が弱まり、フィンレイは膝をついた。
オリヴィア「フィンレイ様!」
オリヴィアが駆け寄り、魔力の消耗を確認する。
フィンレイ「ありがとうございます。でも、怪我はしてませんよ?」
オリヴィア「無理をなさらないでくださいね。勇者様が倒れてしまっては困りますから」
隣でエマが、ほっと息をつく。
エマ「……もう。心配させないでよ、フィン」
フィンレイ「……悪い」
ガレスは剣を鞘へ納めた。
ガレス「素質はある。だが、今のままでは話にならん」
フィンレイ「……ですよね」
ガレス「明日から、さらに鍛えるぞ」
フィンレイ「……さらに!?」
リゼットが笑った。
リゼット「ふふっ。頑張ってね、勇者君!」
それから数日。
ガレスの厳しい剣術訓練。
エマとの野外活動。
リゼットによる魔力の研究。
オリヴィアの治癒と防御魔術の指導。
五人は少しずつ、互いの長所と短所を理解し始めていた。
もっとも、騒動は絶えなかった。
リゼット「フィン! もう一回聖剣を光らせて!」
フィンレイ「だから、やり方が分からないんだって!」
リゼット「じゃあ、私が魔力を流してみる!」
ガレス「待て! 勝手なことをするな!」
次の瞬間。
――ボンッ!
訓練場の地面が小さく爆発した。
リゼット「きゃっ!?」
エマ「ちょっと! 何してるのよ!」
リゼット「……少しだけ、計算が違ったみたい」
ガレス「少しで済むか!」
オリヴィア「皆さん、もう少し安全に訓練できませんか?」
リゼット「……次は大丈夫よ!」
ガレス「その言葉が一番信用できん!」
その夜。
食堂で、五人は夕食を囲んでいた。
フィンレイ「……もう腕が上がらない」
ガレス「明日は足腰を鍛える」
フィンレイ「……明日も!?」
エマ「当然でしょ」
そう言いながら、エマは自分の皿から肉料理を一切れ取り、フィンレイの皿へ移した。
フィンレイ「……いいのか?」
エマ「昔からあんた、訓練のあとはお腹空くでしょ」
フィンレイ「ありがとな、エマ」
エマの頬が赤くなる。
エマ「べ、別に。余っただけだから!」
リゼット「へえ。幼馴染って便利ねえ」
エマ「何よ!」
リゼット「別に?」
すると、オリヴィアも穏やかに口を開いた。
オリヴィア「では、フィンレイ様。私からもどうぞ」
焼きたてのパンが差し出される。
フィンレイ「あ、ありがとうございます!」
オリヴィア「明日も厳しい訓練でしょうから、しっかり召し上がってくださいね」
エマが、じっとオリヴィアを見た。
オリヴィア「……どうかなさいましたか?」
エマ「……いえ、別に」
二人は笑顔を交わした。
リゼット「ふふっ。面白くなってきたわね」
ガレスだけが真面目な顔で食事を続けていた。
ガレス「……食事中に争うな。明日は早いぞ」
三人の少女が、同時にため息をついた。
旅立ちを翌日に控えた夜。
フィンレイは大神殿の書庫で、古い記録を読んでいた。
数十年、あるいは数百年前に書かれた、魔物の襲撃に関する記録。
村々を襲った魔物。
失われた命。
そして、人々を守ろうとした者たちの歴史。
その中には、聖連邦の支配地域から遠く西方へ逃れた人々についての記述もあった。
彼らの一部は、魔境へ渡ったという。
フィンレイ「……どうして、魔王の国へ逃げるんだ?」
魔物に両親を殺されたフィンレイにとって、魔境は恐ろしい場所という印象が強かった。
しかし、古い記録には、その地を目指した人々の存在が確かに記されている。
彼らは、なぜそこへ向かったのだろう。
魔物の脅威と、魔境で暮らす者たち。
そのすべてを同じものとして考えてよいのだろうか。
エマ「……やっぱり、ここにいた」
背後から声がした。
エマが温かな飲み物を二つ持って立っている。
フィンレイ「……エマ」
エマ「昔からそうよね。悩み事があると、すぐ一人になるんだから」
フィンレイ「……よく分かったな」
エマ「何年一緒にいると思ってるの?」
エマは隣へ座った。
しばらく、二人は黙っていた。
やがて、フィンレイが口を開く。
フィンレイ「……なあ、エマ」
エマ「何?」
フィンレイ「俺、本当に魔王を倒していいのかな」
エマは驚かなかった。
ただ、静かに彼を見つめた。
フィンレイ「父さんと母さんを殺した魔物を、俺は今でも憎いと思ってる」
エマ「……うん」
フィンレイ「でも、あいつらが魔王の命令で襲ってきたのかは分からない」
フィンレイは古い書物を閉じた。
フィンレイ「……何が正しいのか、俺にはまだ分からない」
エマは少し考えたあと、微笑んだ。
エマ「だったら、自分で確かめればいいじゃない」
フィンレイ「……え?」
エマ「フィンは勇者になったけど、何でも知ってるわけじゃないでしょ?」
フィンレイ「……まあ、そうだけど」
エマ「だったら、ちゃんと見て、聞いて、自分で決めればいいのよ」
彼女は、フィンレイの手にそっと触れた。
エマ「……大丈夫。私も一緒に行くから」
フィンレイ「……エマ」
エマ「昔から、あんたが無茶するときは、いつも私がついていったでしょ?」
フィンレイ「……確かに」
エマ「今度も同じよ。勇者になったからって、あんたはあんたなんだから」
フィンレイはゆっくり頷いた。
フィンレイ「……ありがとな、エマ」
少女は頬を赤くして、そっぽを向いた。
エマ「べ、別に! 幼馴染なんだから当然でしょ!」
同じ夜。
中央大神殿の奥にある一室では、聖連邦の有力者たちが集まっていた。
卓上には、セレスティア王国東部の地図が広げられている。
その中央に記されているのは、一つの古代遺跡だった。
聖連邦が長年、返還を要求してきた聖地である。
強硬派評議員「……勇者が目覚めた。これほどの吉兆が、ほかにあろうか」
聖連邦軍将軍「王国は北境の戦争で疲弊し、さらに西方諸侯軍への対応にも追われております」
強硬派評議員「今こそ、聖地を取り戻す好機というわけだ」
聖連邦軍将軍「左様です」
別の評議員が、慎重に口を開いた。
慎重派評議員「しかし、勇者の覚醒と聖地の奪還を結びつけるのは、少々強引ではありませんか?」
強硬派評議員「王国は魔王と和平を結んだのだぞ!」
男の声に怒気がこもる。
強硬派評議員「魔と手を結ぶなど、我らの教義では到底認められぬ!」
大神官長は黙って地図を見つめていた。
やがて、静かに口を開く。
大神官長「……勇者の覚醒が、何を意味するのか」
一同が顔を上げる。
大神官長「明日の最高評議会で、改めて議論することになろう」
窓の外では、聖都の鐘が鳴っていた。
その音は、翌朝旅立つ勇者を祝福するようにも、近づく戦争を告げるようにも聞こえた。
翌朝。
聖都の大門には、大勢の人々が集まっていた。
白い外套を羽織り、聖剣を携えたフィンレイ。
弓を背負ったエマ。
聖職衣に旅装を重ねたオリヴィア。
大盾と長剣を装備したガレス。
そして、大きな杖を手にしたリゼット。
五人の勇者パーティが、旅立ちの時を迎えていた。
大神官長「勇者フィンレイ・アルヴェストよ。そなたの旅路に、神々の加護があらんことを」
フィンレイ「はい!」
大神官長「魔王を討ち、世界に平穏を取り戻すのだ」
フィンレイは、少しだけ表情を引き締めた。
フィンレイ「……俺は、自分の目で確かめてきます」
大神官長の眉が、わずかに動いた。
しかし、何も言わなかった。
フィンレイは仲間たちへ振り返る。
フィンレイ「……みんな、よろしくな!」
ガレス「ああ。だが、油断するなよ」
リゼット「任せなさい! 魔術なら私が何とかしてあげる!」
ガレス「……余計なものまで吹き飛ばすなよ」
オリヴィア「ふふっ。皆さん、仲良く参りましょう」
エマ「ほら、フィン! ぼーっとしてないで出発するわよ!」
フィンレイ「分かってるって!」
エマが先に歩き始める。
フィンレイはその背中を追い、残る三人も続いた。
聖都の大門をくぐる五人。
その背中を、大勢の人々が見送っていた。
誰もが、勇者の旅立ちを祝福していた。
しかし、その裏側では、すでに別の思惑が動き始めている。
王国領内にある聖地。
弱体化したセレスティア王国。
そして、魔王との和平を選んだ王国に対する宗教的な敵意。
聖連邦の有力者たちは、勇者の覚醒を神々の御意志と結びつけようとしていた。
その事実を、フィンレイはまだ知らない。
彼はただ、幼馴染や仲間たちとともに、人々を守るための旅を始めたのだった。




