第100章 西方諸国の参戦
北境の空に、再び戦いの角笛が響き渡った。
王国解囲軍は、前日の激戦で確保した魔王軍の前衛陣地を足場に、包囲網への攻撃を再開していた。
しかし、魔王軍の抵抗は激しい。
魔導通信によって連携する各部隊は、後退と反撃を巧みに繰り返し、王国軍の前進を阻んでいた。
王国軍騎士「駄目です! 右翼の進撃が止められました!」
王国軍指揮官「敵の重装歩兵か!」
王国軍騎士「はい! 魔術師の援護も厚く、突破できません!」
王国軍指揮官「……学園騎士団を投入しろ!」
その命令が、後方に待機する学園騎士団へ伝えられた。
クラリッサ「やったぁ! ついにあたしの出番ね!」
赤い短髪を揺らし、クラリッサ・バルシュタインが歓声を上げる。
《アーマードクラリッサ》。
マリアベルとリリアーナが開発した、世界にただ一機の試作装備である。
マリアベル「ふふん! ついに私たちの最高傑作が歴史に名を刻む瞬間よ!」
リリアーナ「……楽しみですね。調整した補助回路が、どこまで性能を発揮するのか」
クラリッサ「任せてよぉ! あたしがすっごい戦果を上げてみせるんだから!」
マリアベル「その意気よ!」
リリアーナ「……実戦データもたくさん取れそうです」
三人の目は、期待に輝いていた。
そこへ、セルジュが現れる。
セルジュ「……お前たち」
クラリッサ「はいっ!」
セルジュ「これは戦争だ。突破口を開いたら後続に任せろ。決して深追いするな」
クラリッサ「はーい! 分かってるってば!」
マリアベル「もちろんです! 私たちの発明を信じてください!」
リリアーナ「……性能については、私たちが一番よく理解しています」
セルジュ「……ならばいいが」
リリアーナ「……記録装置も準備できています」
クラリッサ「ね? 大丈夫でしょぉ! あたしに任せて!」
セルジュ「……聞けば聞くほど、なぜ私は余計に不安になるんだ」
どうにも不安が残る。
だが、敵の防御線を破るには、彼女たちの力が必要だった。
セルジュ「……出撃!」
クラリッサ「いっくよぉぉーっ!!」
巨大な鋼鉄の鎧が、地響きを立てて走り出した。
魔王軍西方前衛。
魔族兵士「……何だ、あれ?」
魔族指揮官「大型の重装騎士か! 槍兵、前へ!」
魔族兵士たちが盾を並べ、槍を構える。
だが、迫ってくる鎧は普通の重装騎士とはまるで違った。
巨大な大剣。
赤い光を帯びた魔導回路。
その内部から響く、場違いなほど元気な少女の声。
クラリッサ「どっせえええいっ!!」
轟音。
大剣が防御柵に叩きつけられ、太い木材がまとめて砕け散った。
魔族兵士「うわああっ!」
魔族指揮官「馬鹿な! 一撃で!?」
クラリッサ「まだまだぁ!」
続けて重装歩兵の盾列へ突進する。
魔導鎧の筋力補助を受けた一撃が、敵の盾を押し崩した。
クラリッサ「そんな盾じゃ止められないでしょぉぉ!!」
敵の前衛が乱れる。
その瞬間、後続の王国軍が動いた。
アーヴェル「今だ! 前進!」
セシリア「中央を押さえろ。隊列を崩すな!」
エリシア「援護します!」
ヴィクトリア「敵の魔術師はこちらで抑えますわ!」
カグラ「……左から増援」
学園騎士団と王国軍騎士隊が連携し、敵陣へ食い込んでいく。
クラリッサが開いた突破口は、それまで攻めあぐねていた王国軍にとって大きな意味を持っていた。
王国軍騎士「すごいぞ!」
王国軍兵士「あんな重装剣士が我が軍にいたのか!?」
王国軍騎士「王立学院の生徒だそうだ!」
王国軍兵士「……学院の生徒!?」
一方、魔王軍の兵士たちは恐怖していた。
魔族兵士「何だ、あいつは!?」
魔族兵士「盾が……盾が役に立たねえ!」
魔族指揮官「怯むな! 敵は一人だぞ!」
だが、その一人が陣地を破れば、後ろから王国軍が雪崩れ込んでくる。
前衛部隊はついに後退を始めた。
魔族兵士「……化け物だ」
魔族兵士「違う……あれは死神だ……!」
血と土煙にまみれた戦場を、赤熱した鋼鉄の巨体が進む。
誰かが震える声で呟いた。
魔族兵士「……《血塗られた鋼鉄の死神》……!」
その呼び名は、魔導通信を通じて魔王軍各部隊へ広がっていった。
魔王軍中央本陣。
ヴァルガスは地図を広げ、前線からの報告を聞いていた。
魔族参謀「将軍。西方前衛が突破されました」
ヴァルガス「……例の新型魔導鎧か?」
魔族参謀「はい。兵士たちは《血塗られた鋼鉄の死神》と呼んでおります」
ヴァルガス「……ずいぶん物騒な名前がついたもんだな」
魔族参謀「重装歩兵が押し返され、防御柵も破壊されています」
ヴァルガス「真正面から相手にするな。敵の後続を抑えろ」
魔族参謀「承知しました」
ヴァルガス「あんな大仰な装備が、いつまでも動けるわけねえ。稼働限界まで粘ればいい」
参謀が命令を伝えようとした、そのときだった。
魔族伝令「将軍! 西方方面から緊急報告です!」
ヴァルガス「……何だ?」
魔族伝令「西方諸国の連合軍が、セレスティア王国への侵攻を開始したとのことです!」
ヴァルガスの目が細められた。
ヴァルガス「…………そうか」
魔族参謀「……ついに動きましたか」
ヴァルガス「……サキュバス族の工作が効いたようだな」
西方諸国の宮廷には、以前から魔王軍に協力するサキュバス族が接近していた。
彼女たちが利用したのは、単純な魅了だけではない。
領土への野心。
王国への不満。
王侯貴族同士の権力争い。
そして、他国の窮状を自らの利益に変えようとする者たちの欲望だった。
魔族参謀「各国の利害をうまく動かしたようですな」
ヴァルガス「……ああ。もっとも、全員が操られたわけでもねえだろう」
魔族参謀「自らの利益を考えて参戦を決めた者もいるでしょう」
ヴァルガス「……そういうことだ」
ヴァルガスは戦況図を見つめた。
ヴァルガス「……アルセリア辺境伯みてえな男もいれば、隣国の危機を見て領土欲に目がくらむ連中もいる。人間ってのは面白いもんだな」
魔族参謀「それが人間族の政治というものでしょう」
ヴァルガス「……いや。魔族だって大して変わらねえさ」
彼は小さく息を吐いた。
ヴァルガス「……政略も戦争のうちだ。敵を孤立させ、味方を増やし、戦う前から有利な状況を作る。立派な戦略だぜ」
魔族参謀「まさに、そのとおりです」
ヴァルガス「……分かっちゃいるんだがな」
その表情には、わずかな苦さが浮かんでいた。
ヴァルガス「……どうにも気分のいい話じゃねえ」
正面から剣を交えることだけが、武人の仕事ではない。
それは理解している。
しかし、誇りを懸けて北境を守り抜こうとするアルセリア辺境伯と、欲望に動かされて侵攻する西方の王侯貴族たち。
その落差には、割り切れないものがあった。
ふと、ヴァルガスは別の人物を思い浮かべる。
ヴァルガス「……まあ、こういう話はヴェルセリアの前じゃ大っぴらにはできねえな」
魔族参謀「……あの方ですか」
ヴァルガス「あいつは筋金入りの堅物だからな。政略の必要性くらい理解するだろうが、やり口については一言ありそうだぜ」
魔族参謀「……確かに」
ヴァルガス「……余計な説教を食らうのも面倒だ」
そう言って苦笑したが、彼自身も今回の工作を心から喜んでいるわけではなかった。
それでも、将軍として判断を誤るつもりはない。
ヴァルガス「……さて。ここからが肝心だ」
魔族参謀「西方諸国が参戦した以上、王国は北境への増援だけでなく、西方防衛にも兵を割かねばなりません」
ヴァルガス「……そうなるな」
魔族参謀「王国解囲軍にとっては厳しい状況です」
ヴァルガス「だが、目の前の王国兵が減るわけじゃねえ。油断するなよ」
魔族参謀「承知しております」
ヴァルガスは地図の北境と西方国境を交互に指した。
ヴァルガス「北境では包囲を維持する。西方からも圧力がかかる。王国は、そのうちどちらを優先するか選ばなきゃならねえ」
魔族参謀「……包囲突破を諦めさせるのですな」
ヴァルガス「ああ。だが、そこで王国を滅ぼす必要はねえ」
魔族参謀「……和平交渉ですか」
ヴァルガス「そうだ」
参謀は机の上に、一通の文書を広げた。
それは、戦争以前から魔王軍が求めてきた交渉内容だった。
魔族参謀「古代遺跡の共同調査。そして、世界の魔力配分についての協議」
ヴァルガス「……陛下が求めてこられたものだ」
魔族参謀「戦争賠償は?」
ヴァルガス「求めねえ」
魔族参謀「領土の割譲も?」
ヴァルガス「必要ねえ」
魔族参謀「王国の臣従や、軍の武装解除については?」
ヴァルガス「そんなもんも要らねえよ」
参謀は改めて文書を見つめた。
魔族参謀「……つまり、戦争前とまったく同じ条件ですな」
ヴァルガス「……ああ」
魔境は、長年にわたって魔力不足に苦しめられてきた。
土地は衰え、人々の暮らしも厳しくなっている。
魔王が求めているのは、その状況を変えることだった。
ヴァルガス「……俺たちが欲しいのは、王国の土地でも宝でもねえ」
魔族参謀「それでも、王国は交渉を拒んできました」
ヴァルガス「……だから、拒み続けられない状況を作る」
その言葉は静かだった。
魔族参謀「北境の解囲が困難になり、西方からも侵攻を受ける。王国が継戦の限界を悟ったところで、和平を申し入れるわけですな」
ヴァルガス「そういうことだ」
魔族参謀「しかし将軍。こちらにも多大な損害が出ています。何の賠償も求めないのでは、兵たちが納得しない可能性もあります」
ヴァルガス「……分かってる」
ヴァルガスはしばらく黙った。
ヴァルガス「だがな。賠償金を取るために、うちの兵が死んだわけじゃねえ」
参謀は答えなかった。
ヴァルガス「……陛下の願いは、魔境の民が安心して暮らせる土地を取り戻すことだ。そこを忘れちゃいけねえ」
魔族参謀「……はい」
ヴァルガス「王国が追い詰められたところで、以前と同じ条件を出す。相手を辱める必要もねえ」
魔族参謀「……それでも、王国の為政者には屈辱かもしれませんな」
ヴァルガス「……そうだろうな」
彼は苦笑した。
ヴァルガス「大勢の兵が死んだ後で、結局、戦争前と同じ話し合いに戻るんだ。自分たちの判断を問われることになる」
魔族参謀「……王国の面目にも関わります」
ヴァルガス「だからこそ、余計な侮辱はするな。追い詰められた相手から逃げ道まで奪えば、最後まで戦うしかなくなる」
参謀は深く頷いた。
魔族参謀「承知しました」
ヴァルガス「……ただし、和平を申し入れるまでは気を抜くなよ。俺たちが先に崩れりゃ、交渉どころじゃねえ」
彼は北境の戦況図へ視線を戻した。
ヴァルガス「……何より、まだあの銀髪の剣聖が残ってるからな」
その頃、王国軍西方戦線。
クラリッサはなおも敵陣へ進撃していた。
クラリッサ「やったぁ! また突破したよぉ!」
マリアベル「素晴らしいわ! 想定以上の性能よ!」
リリアーナ「……右脚部の負荷がかなり上昇していますね」
クラリッサ「まだまだいけるってばぁ!」
しかし、次の瞬間。
ギギッ。
クラリッサ「……えっ?」
鎧の右脚が引っかかった。
巨大な鋼鉄の身体が前のめりになる。
クラリッサ「きゃあああっ!?」
彼女は反射的に大剣を地面へ突き立てた。
轟音。
その衝撃で、近くにあった損傷した防御柵が崩れ落ちる。
魔族兵士「ひいいっ! 地面まで叩き割ったぞ!」
王国軍騎士「何という威力だ!」
クラリッサ(……えええっ!? 今の完全に転びかけただけなのにぃ!?)
しかし、周囲は新たな必殺技だと思い込んでいた。
マリアベル「……これよ!」
クラリッサ「……何がぁ!?」
マリアベル「転倒の衝撃を攻撃へ転用するの! 新しい機構が作れるわ!」
リリアーナ「……なるほど。衝撃を一方向に集中させる構造ですね」
マリアベル「そう! さすがリリアーナ!」
リリアーナ「……面白そうです。試作してみたいですね」
クラリッサ「ええっ!? それ絶対すっごいじゃん!」
三人は新しい発明の可能性に目を輝かせた。
だが、鎧の脚部は本当に損傷している。
セルジュ「クラリッサ! 十分だ! 後退しろ!」
クラリッサ「はぁい!」
こうして《アーマードクラリッサ》は後退した。
突破口は後続の王国軍が引き継ぐ。
しかし、魔王軍の兵士たちは、その撤退理由を知らなかった。
《血塗られた鋼鉄の死神》が、いつ再び姿を現すのか。
それを思うだけで、背筋が冷たくなった。
王国軍後方陣地。
魔導鎧を脱いだクラリッサは、疲れきった様子で地面に座り込んでいた。
クラリッサ「……つっかれたぁ!」
マリアベル「でも、大成功だったわ!」
リリアーナ「……次の改良点もたくさん見つかりましたね」
クラリッサ「えへへ! あたし、すっごく頑張ったでしょぉ!」
そこへ、一人の王国軍騎士が現れた。
王国軍騎士「失礼! 先ほどの重装剣士殿は、こちらにいらっしゃいますか?」
クラリッサ「あたしだよぉ!」
王国軍騎士「…………え?」
目の前にいるのは、赤い短髪の明るい少女だった。
王国軍騎士「あ……あなたが、あの巨大な鎧を……?」
クラリッサ「そうだよぉ! びっくりしたでしょぉ!」
王国軍騎士「……まさか、こんなにお若い女性だったとは……!」
マリアベル「ふふん! 私たちの最高傑作なのよ!」
リリアーナ「……まだ改良の余地はありますけれど」
クラリッサ「次はもっとすっごくなるんだから!」
三人は楽しそうに笑った。
だが、少し離れた場所では、負傷した兵士たちが治療を受けていた。
担架が運ばれ、治療師たちが忙しく動いている。
クラリッサはその光景を見つめ、笑顔を少しだけ引っ込めた。
クラリッサ「……ねえ、先輩」
マリアベル「どうしたの?」
クラリッサ「……あたしたち、もっと強くならなくちゃいけないね」
マリアベルも、負傷者たちへ目を向ける。
マリアベル「……ええ。もちろんよ」
リリアーナ「……次は、もっと多くの人を守れる装備にしたいですね」
クラリッサ「……うん!」
クラリッサは小さく頷いた。
戦場で得たのは、勝利の喜びだけではなかった。
北境第二防衛線。
包囲下のアルセリア辺境伯軍にも、解囲軍の攻勢について報告が届いていた。
王国軍騎士「閣下! 解囲軍が敵の外側防御線へ食い込んだ模様です!」
アルセリア辺境伯「……そうか」
レオン「父上。俺たちも動きますか?」
アルセリア辺境伯「……まだだ」
父上は地図を見つめた。
アルセリア辺境伯「敵の包囲は健在だ。配置が変化するのを待つ」
レオン「……はい!」
フィオナ「レオン。今は焦らずに待とう」
ルミナ「レオン様。敵部隊の移動が増加しています」
レオン「……外側の攻撃に対応してるのか?」
ルミナ「その可能性があります。しかし、敵の配置を完全には把握できていません」
父上はしばらく考え込んだ。
アルセリア辺境伯「……レオン」
レオン「はい、父上」
アルセリア辺境伯「明朝、南方包囲線への突破作戦を開始する」
レオン「……はい!」
俺は剣の柄を握り締めた。
包囲の外には、救援に来てくれた人たちがいる。
学院の仲間たちも、きっとその中にいるはずだ。
レオン(……必ず合流する)
その一方で、俺たちはまだ知らなかった。
王国の西方で、別の戦争が始まっていたことを。
夕刻。
王国解囲軍は、魔王軍の外側防御線の一角をさらに押し広げた。
しかし、包囲下のアルセリア辺境伯軍との合流には至らない。
魔王軍も大きな損害を受けながら、包囲網を維持していた。
そして、遠く西方。
西方諸国の軍勢が、セレスティア王国の国境を越え始めていた。
王国にとって、北境の危機だけでも深刻だった。
そこへ、新たな戦争が襲いかかったのである。
魔王軍中央本陣。
ヴァルガスは、西方方面から届いた報告書をもう一度読み返していた。
魔族参謀「将軍。和平の準備はいかがいたしましょう?」
ヴァルガス「……進めろ」
魔族参謀「今すぐ使者を?」
ヴァルガス「……いや。まだ早い」
彼は地図を見つめた。
ヴァルガス「王国はまだ、北境の包囲を破れると思ってる。だから今は戦う」
魔族参謀「……西方諸国の侵攻が王都に伝われば、情勢も変わるでしょう」
ヴァルガス「ああ」
静かな声だった。
ヴァルガス「王国の連中が、これ以上戦い続けることの難しさを悟ったときだ」
魔族参謀「……そのとき、以前と同じ条件を?」
ヴァルガス「そうだ。一つも余計なものを要求するな」
領土も、賠償も、臣従も求めない。
古代遺跡の共同調査。
そして、魔力配分についての交渉。
戦争が始まる前から、魔王軍が望んでいた条件だった。
魔族参謀「……王国が受け入れれば、戦争を終わらせられますな」
ヴァルガス「……ああ。だが、まだ先の話だ」
彼は北境の地図へ視線を戻した。
ヴァルガス「まずは包囲を維持する。王国軍を甘く見るなよ」
魔族参謀「承知しました」
ヴァルガス「……アルセリア辺境伯も、その息子も、簡単に折れるような連中じゃねえからな」
しばらくの沈黙。
そしてヴァルガスは、低く呟いた。
ヴァルガス「……陛下の願いを叶えるためだ。最後まで、俺たちの仕事をやり遂げるぞ」
北境では、《血塗られた鋼鉄の死神》が王国軍に新たな希望をもたらしていた。
しかし、西方からは新たな敵が迫っている。
そして魔王軍は、王国が継戦を断念したときに差し出す、和平の準備を始めていた。
戦争の勝者として莫大な要求を突きつけるのではない。
戦争前と何一つ変わらぬ交渉を、今度こそ受け入れてもらうために。
――だが、その和平が本当に両国の人々を救うものとなるのか。
答えは、まだ誰も知らなかった。




