自覚
「はい。次やりましょう」
アイリスはコアを回収し、私はスライムを探す。
そうやって、
2まで試した。
結果はいずれも成功だ。
「疲れていませんか?」
「全然大丈夫です」
「では次行きましょう」
最後は1だ。
これで倒せれば、
エネルギー消費を一割程度に、
留められる可能性も髙い。
私はスライムを探し、
アイリスに教える。
アイリスは魔法陣を描き、詠唱を唱える。
「火の精霊サラマンドラよ。古の契約により、我に力を与えたまえ。ファイアボール!」
(ぽん)
小さい炎が出て、まっすぐに進んでいく。
そしてスライムに当たり、
スライムはフラフラとしている。
ダメか。
さすがに出力が弱すぎたか。
「アイリス。二発目用意できますか?」
「ちょっと待ってください。あのスライム」
私はスライムを見る。
スライムはフラフラし、
そしてしばらくするとコアに変わった。
「やった」
私とアイリスは満面の笑みを浮かべた。
アイリスは私に抱きつこうとする。
私も腕を広げる。
(すーっ)
(どん)
アイリスは私をすり抜け、
近くの木にぶつかった。
「いてててて」
アイリスは痛がっている。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。もう神様。こんな時くらい、進さんに触れたいです」
アイリスの顔は膨れている。
「もう仕方ないでしょう。
彼の身体をこちらに転移したら、元の世界に戻れなくなるかもしれないですから」
「じゃあ。仕方ないですけど。進さん。こっちの世界に住んではどうですか?」
「研究職ですし、体力に自信もないから」
「私が稼ぎますから」
アイリスはじっと見つめる。
なぜだが、
心臓の鼓動が大きくなる。
話を逸らそう。
「しかし一割の出力でも倒せたという事は、今までの何倍も倒すことが可能になりましたね。これだと旅の資金も楽に貯められそうですね」
「進さんは、旅を早く終わらせたいのですか」
アイリスは強い目で私を見つめた。
私の目的は、
hryutqqだった。
しかし今はどうだ。
アイリスの成長を見守りたいという気持ちが強いのではないか。
「アイリスの成長を見守りたいという気持ちはある」
「親とか先生みたいな気持ちなのですか?」
アイリスは目を伏せた。
親、先生。
そうだろう。
私は教師役だ。
しかし、
この感情は……、
生徒に向ける感情か?
本当に?
「よくわからないのですよ」
「はーっ」
神は溜息をついた。
「自覚がないと話は進まない。
自覚があっても話は進まない。
本当に人というのは、言葉が壁になってますね」
神は言った。
言葉が壁……。
自覚があっても、
どういう事だろうか?
「神様。どういう事なのですか?」
私は尋ねた。
「あなた達は病なのですよ」
「そうか。この動悸も、この思考が不安定なのも、全て病気だったのか」
「私のイライラする気持ちも。なんか心がむずがゆい気持ちも、全て病気なのですか?」
「そうです。そうです。病なのですよ」
神は答えた
「薬はありますか?」
私は尋ねた。
アイリスもじっと神を見ている。
「薬ねぇ。時間が解決してくれますよ。きっと」
神は苦笑いを浮かべた。
「そうですか。自然治癒する病なのですか」
「でも、治癒すると聞いて安心しました」
「進さん。ごめんなさい。私病気みたいで、つい無理な事を言ってしまいました」
「私のほうこそ。なぜか君の事となると、思考が乱れてしまう。これも病気のせいでしょう」
「じゃあ。
これからどうします?
1でやり続けます?」
「制限数が10で、これまでは毎日9匹の討伐でした。
制限数に関係なく、溜まった300匹までは討伐しても良いという事だったので、2の出力で40匹を目標にしてみるのは、いかがでしょうか?」
アイリスは頷いている。
「出力の消費の関係性がわからないので、辛くなれば止めるという事にして。そうですね。
20匹から、5匹ずつ増やし、明日は25匹、明後日は30匹、その次は35匹、その次は40匹。
そして余剰の討伐数がクリアできるまで、やり続ける。これでどうですか?」
「わかりました。それなら安全ですね」
「はい。アイリスを危険な目には合わせたくありませんから」
私がそういうと、アイリスは照れくさそうに笑った。
……
それから順調にスライム討伐は続いた。
そして未消化の討伐枠をすべて消化し、
アイリスは、90G近くの貯えができた。
アイリスと出会ったから、3週間ほど経っていた。
「もうそろそろ、先に進んでも良いのではないでしょうか?」
私は言った。
「そうですね。突然スライムに出くわしても、ファイアボールで撃退できるようになりましたし」
アイリスは答えた。
「神様はどう思いますか?」
「私は、そもそも教授のやり方は、過保護なような気もしているので、全然進むのは問題ないですよ」
「おっしゃってましたよね。それでも可愛いアイリスを危険な事には巻き込むことはできません」
「そんな可愛いだなんて」
アイリスは照れくさそうに頬を抑えている。
「では、ここからは、馬車で行きましょうか?」
「はい。でも塔への直通の馬車はないですよ」
「時刻表とか路線図はありませんか?」
「時刻表?路線図?」
この世界には時刻表も、路線図もないのか。
ではどうやって旅の予定を立てる。
「神様。時刻表も路線図もないのに、どうやって移動するのですか?」
私は尋ねた。
「この世界では、村や町の間を荷馬車が通っています。それを乗り継いでという事になりますね」
「それはわかりますが、その村名と行先を書いた紙のような物はないのですか?」
「ありませんね。不定形ですし、常に通っているわけではないですから、山賊もいますし」
「山賊もいる?
アイリスが危ないじゃないですか」
「それが普通ですよ。この世界の」
「何をおっしゃってるのですか。アイリスは、世界にとってもかけがいのない存在なのですよ」
私がそう言うと、アイリスは恥ずかしそうにうつむいた。
アイリスは、
世界にとってかけがいのない存在だ。
もちろん私にとっても……。
だから、
なんとしても安全にアイリスを、
私はそう誓った。
END
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品は完結していますが、
反響があれば続編を書く可能性があります。
ブックマークしておくと、もし更新された場合に追いやすくなります。
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