hryutqq
私には希少価値があるのだろうか?
花崗岩、玄武岩、砂岩。
ありふれた石
ダイヤモンド、サファイア、ルビー。
希少な石
風邪の原因ウイルス、麻疹ウイルス、破傷風菌。
そして、まだ分類されていない未知のウイルス。
私には希少価値があるのだろうか?
ダイヤモンド、サファイア、ルビー、あらゆる希少な石が
人工で作成されるようになった。
果たして人に、
見分けがつくのだろうか?
美青年も、美人も希少だ。
しかし、美容整形が一般化する中、
人工か、天然か、
見分けがつくのだろうか?
私には希少価値があるのだろうか?
人は、
希少価値を求める。
そして、
希少価値が求められるゆえ、
人工物や複製の技術が上がり続け、
希少品には偽物が横行する。
文明において。
人は希少価値を求め続け、
そして希少価値を崩壊させ続けた。
私はウイルス学者、
ウイルスを分類・研究する。
多くの学者は希少価値の最前線で日々研究を進める。
私は希少価値を肯定し、
そして希少価値を否定する。
ただ……、
この気持ちだけは、希少価値があると、信じてみたい。
おそらく、
これを恋と呼ぶのだろう。
個人単一単体の希少価値。
それが恋なのかも……。
……
私の日常は、
退屈なルーティンの連続だ
大学の頃から住んでいるアパート。
見慣れた風景。
緩慢な変化。
学生、肉体労働者、ホステス、色んな人間がアパートには住んでいる。
挨拶程度はするが、
誰の人生にも関与したことはない。
一日のカロリーの大半は学食でまかない、
部屋では、
足りないカロリーをカップ麺で、
微量栄養素をサプリメントで補充する。
部屋にあるのは、
ヤカンと記念品のマグカップ、ステンレスの箸。
布団が一組。
服が少々。
サプリメント、ベビーオイル、ワセリン、ひげ剃り、石鹸。
それぐらいだ。
本は全て大学に置いてある。
部屋は、
最低限の栄養補給と睡眠をとるためだけの場所。
そう先輩の研究者から教わった。
私の日々は、
調査・調査・調査。
まるで味気のない、
まるで驚きのない。
そんなルーティンの連続だ。
そんな私のルーティンに変化があったのは、ある夜の事だった。
私は一人暮らしのアパートに帰り、
眠りについた。
眠りについた途端、
電話が鳴った。
見かけない番号だ。
電話を取る。
政府機関を名乗る自動音声だ。
すぐに電話を切る。
一応電話番号を検索する。
出てこない。
該当する政府機関と部署名を検索すると、
詐欺に注意との政府機関のアナウンスがあった。
私はブロックをした。
そして再び眠りにつく。
……
「もし、もし……」
声が聞こえる。
私は目を覚ます。
気が付くと、
私は真っ白な空間にいた。
そこには一人の女性がいた。
髪の色は亜麻色で長く、肌の色も透けるように白い。
ここは……、
そしてこの女性は……。
私は少し考える。
辺りを見渡す。
そうか……、
夢か。
私は再び目をつぶる。
「あの、もし……もし……」
再び声が聞こえる。
明日も仕事がある。
夢に関わっている時間はない。
「hryutqq」
声がした。
「hryutqqを知ってるのか?」
私は目を開く。
偉大な発見は、実は夢でのお告げ。
そんな話を聞いたことがある。
都市伝説の類だと思っていたが、
ヒントになるかもしれない。
「はい。知ってますよ。どこに存在するかも。座標も」
「教えてくれ」
「それが人に頼む態度ですか?」
「教えてください」
「いいですよ。ただし条件があります」
「条件……、何でしょうか?」
「この娘の力になってあげてください」
目の前に映像が現れる。
これはどんな技術なのだろうか。
ホログラムのようでもあるが……。
プロジェクションマッピングか……、
しかし、やけにリアルだ。
「これはプロジェクションマッピング?」
「そのようなものです」
「なるほど。それでこの女の子は?」
「十五歳になる魔法使いです」
「魔法使い?」
「そう、魔法使い」
私はこの女がなにを言っているのか、わからなかった。
「魔法が存在すると」
「はい。ここはあなたの生きている世界とは違うのです」
「夢の世界では?」
「いえ、あなたにとって夢の世界でも、こちらの世界では現実です」
別の惑星に来ているという事なのだろうか。
意識だけがテレポート……。
「別の惑星に来ているという事なのでしょうか?」
「いや。地球は地球なのですが……、世界線が違う。こう言えば伝わりますか?」
「世界線が違う。量子物理学、並行世界、その辺りの話でしょうか?」
「あなた方の世界の学問では、その辺りの話になります」
「申し訳ない。私はウイルスが専門で、そのカテゴリは専門外だ。しかし知り合いに、そこら辺が詳しい者がいました。彼を紹介するというのではいかがですか?」
「いえ。ちょっと待ってください。そういう話ではないのです。ただこの少女を助けて欲しいのです」
「しかし、魔法という学問は、私の世界ではありません。
いや、あるにはあるのですが、科学の本流ではない。
科学の祖が錬金術であるという見解もあるし、
うん……、
うまく言えませんね」
「いえいえ。上手く言う必要もないのです。
あなたの見識を活用し、この少女を助けて欲しいのです」
「もしかすると、学問の横断的交流、もしくは異業種交流のような形ですか?」
「そうです。そうです。そういう形で助けて欲しいのです」
「それでしたら、大丈夫そうですね。
ただ、hryutqqの現物は見る事ができますか?」
「こちらです」
少女の画像が、見た事のないウイルスの画像に切り替わる。
「おぉ。
これがhryutqqですか。
理論上あると予想はされていたが、本当にあったなんて」
私は画像に魅せられる。
「嘘はつきませんよ」
「それで、これはどう振る舞いますか?」
「はぁ?」
「どのような動きをして、どんな生態なのでしょうか?」
「それは、入手してから、あなたが調べたらいかがですか?」
「そうですね。わかったら面白くないですものね」
もし「続きを読んでみたい」と思っていただけたら、
ブックマークしていただけるととても励みになります。
本作はすべて完結済みで、安心して最後まで読めます。




