3.マリーン
今話はとても短いです
約900字くらい
「あらまあ! あんた、どこからそんな綺麗なお嬢さんを拾ってきたの?」
母のマリーンは、いつも以上に大きな音を立てて開いたドアを振り返り、お帰りと言おうとして口を開けたまま、アゲートが背負ってきた娘を見て木の匙を鍋の中に取り落とした。
「幻かなんかじゃないわよね?」
「この子のどこが幻に見えるっていうのさ」
「だってね、最近、町の方では魔法を使った詐欺が横行しているって話よ。旅人から聞いたの。お金を受け取ったと思ったら、いつのまにやらただの石に変わっていたり、綺麗な人について行ったら、煙のように消えてしまったり、買った商品が見せかけだけの役立たずですぐに分解してしまったり、リンゴが爆発したりエトセトラ」
「リンゴが爆発?!」
「そういうことが最近増えているらしいのよ。魔物も増えているらしいし、都会は恐ろしいわね。田舎は不便だけど、そういうのが少ないからまだましだわ」
「同じ国なんだから、他人事じゃないよ。それより、早くこの子を」
「あら! そうだわね。しゃべっている場合じゃなかったわ。さあ、私のベッドに寝かせてちょうだい。呼吸はできているけれど、苦しそうね」
マリーンは運び込まれた意識のない少女の額や頬に手を当てて本物の人間だと判断したようで、今までのどこか呑気な雰囲気が嘘のようにてきぱきと動きだした。
その様子にアゲートはいつの間にか詰めていた息をふっと吐き出した。母がやる気を出したときは、未来がどんなに見えなかろうが、きっと大丈夫だという感覚になる。それでこれまで全てが上手く行ったわけではないが、そう酷い結末にはなったことがない。だから今この時も、母に任せておけばなんとか助かるのではと思えた。
詳しい事情は後で話すことにして、怪我の状況だけを知らせる。
「岩に背中を打ち付けたんだ」
「まあ、酷い。骨が折れていたりしたら大変よ。私じゃ手に負えないわ、ラベンダーさんを呼んで来てくれる?」
「わかった、すぐに呼んでくるよ」
「よろしくね。その間に、出来ることはするわ」
アゲートは、村で唯一の治癒魔法使いの元へ走った。
短くて申し訳ありません
更新はのんびりペースで不定期です
急ぐと息切れをしたり、高山病になったりするかもしれませんので、一歩一歩ゆっくり登って行きます
行く手には魔法の霧がかかっています
ここまでお読みくださりありがとうございました




